美味しくて楽しい酒―熟成古酒 212
酒造家を悩ませた酒類醸造検査の実態
⑧ 酒類醸造検査の実態その3
酒造税則取り扱い心得は、酒造業者、酒造検査員双方に以下の項目の作成を義務付けています。
① 営業免許鑑札番号 ② 営業人住所、姓名 ③ 本宅を含むすべての倉庫、麹室、別宅 ④ 桶、ビン類 ⑤ 酒造用諸機器 ⑥ 製酒類目 ⑦ 桶灌並びに造酒保存用焼酎 ⑧ 古酒検査 ⑨ 買い入れ酒検査 ⑩ 清酒見込み検査 ⑪ 清酒醸造法
⑫ 酒もと検査 ⑬ もろみ検査 ⑭ 清酒検査
【解説}】
③ 本宅を含むすべての倉庫などは、多少なりとも酒造りに関係はありますが、別宅まで記入させているのは、原料米や酒の隠蔽を警戒
するものです。
⑥ 製酒類目この場合は清酒となります。
⑦ 桶灌の意味は分かりかねますが、酒造保存用焼酎は「柱焼酎」と思われます。
⑧ 古酒検査の古酒は、年度が替わって在庫している酒と思われます。
⑨ このころすでに「桶買い」の酒があったのですね。
いずれにしてもその狙いは、性悪説による「一滴の不正も見逃さないぞ」という強い意志の表れです。
これに対し、酒造家が提出した「酒税軽減請願書」には「酒税が高いので苦しむのではない。この酒造税則の運用の仕方に大いに苦しんでいるのだ。」という旨が書かれており、国の威厳をバックにする、収税官吏の常識を超えた厳しい運用が酒造家を大いに悩ませたことが判ります。