なんだか、「いいね」や「リツイ」が初めて結構伸びてきたので、ツイッターに書いてことをそのまま転載します。
ある農家さんから、「みかん栽培って水分ストレスに固執しすぎじゃないか?」という意見があり、そこから甘みと旨さって何だろうか?って話になりました。
糖度って「可溶性固形物質の割合」を表しています。 つまりは、果汁に水分以外の物質がどれだけ入っているかの割合を光の屈折を使って数字を出しているんです。ということは、別に糖分じゃなくても数字は出てくるわけです。
実際に塩のように糖分がなさそうな物でも糖度が出てきます。だから糖度の意味がないと言いたいんじゃなくて、糖度って指標でしかなくて、甘さと旨さは本質的に違うんじゃなかってことです。
また、表示された糖度が同じでも個体によって旨さが違うのは糖分だけの数字じゃない可能性が高いと思います。
でも、指標であることは大切なことです。糖度という指標があり、光センサーや選果レーンの工夫によってみかん一個の糖度を計ることができるようになって一箱に味のバラツキの多かったものにある程度の統一感を出せるようになりました。
また数字があることは消費者や流通に大まかな基準を持たせて味の想像をしてもらえるようになりました。その反面、糖度至上主義になってしまって、生産者と消費者、特に流通がそれに振り回せれていないかと思うわけです。
多くの産地で水分ストレスで糖度を上げる栽培をしていますが、それだけでは食味(旨さ)ではマイナスになっていないかと。
具体的な声として、夏場の大干ばつで総じて美味しいと言われていたH30産のみかんで「甘いだけで旨味がなく、酸味とのバランスも崩れて総じて美味しくない」と評している方もいました。
梨農家さんが「糖度は11→12→11のように上下しながら上がっていくが、12度ではなく二度目の11度が美味しい」と言っていました。
じゃ、おいしさって何なのか?人は甘みだけじゃなくて、酸味、旨味、香り、口に入れた時の食感やジョウノウの様見て、つまり五感全部を使ってそのみかんの味を評価しているんじゃないでしょうか? となると、糖度だけじゃくて糖酸比が昔から使われますが、それも指標であり絶対じゃないと思います。
香りについては、香りの強い中晩柑例えば不知火は剥いている時に弾ける香りが食欲を上げ、食べた時の期待感を上げてくれます。
私が極早生を直販しない理由は絶滅危惧種みたいな古い品種を栽培しているために、それ以降の品種よりもどうしても糖度が低いのですが、スーパーの担当者から「決して甘さが高いわけじゃないけど、香りと食感が非常に良い」と言われたことがあります。
この人はみかんの味が何たるかを知ってると思い、それ以来その担当者の方のことを完全に信用しています。
また個人的に嫌いな香りとして貯蔵臭があります。
一般的に晩生みかんは年内に収穫した物を3月まで出荷する物があります。 貯蔵環境が悪いと貯蔵臭が加わります。これが嫌いなのですが、貯蔵みかんで有名な静岡の三ヶ日や和歌山の下津で食べたことがある3月出荷の青島は全くそういうことがなく、収穫直後かのような様相でした。
さすがの技術だと感服したものです。
「糖」と一言に言ってもそれにも種類があります。 植物で糖と言えば光合成で最初に作られる「ブドウ糖」ですが、ブドウ糖は甘いけど美味しさはありません。 最終的に果糖とショ糖が加えられてみかんの甘さになります。
この3つは同じように甘いのではなく、「果糖>ショ糖>ブドウ糖」と果糖が一番甘く感じます。 ですが、果糖は時間の経過と薄まり、ショ糖、ブドウ糖の方が甘く感じます。こういうことが後味に影響してるのかもしれません。
結論として、旨さは指標でしかない糖度だけで表現できるものではありません。 しかし、糖度が高いとまずは食べてもらうための入口としては大きな役割を持ってます。 生産がやらなければいけないのは、高糖度の物が作れたならば、それだけじゃなくて旨味や酸味、香りをそれまでよりも高いレベルで求めないと、前述のような評価をされる可能性があります。
逆に糖度が低いからと言って卑屈になることもありません。
糖が低いのならば、自信を持ち続けながら上げる努力をすれば良いんだと自分に言い聞かせてます。
そんなみかんを作るためには、外部から必要な物を与えれば必ずできます。 農産物は「卵が先か鶏が先か」と言われることが多いですが、旨いみかんを作らないと価格が安定しないのは間違いありません。そのための勉強や投資を常に忘れてはいけないと思いました。
またうちの栽培方法尋ねられれば、いつでも全てを公開します。