第 四 章    コ リ ン ト 人 の 恋  -11-

 

 

無言で抱き合う良介と直樹 。

 

これ、今日、2度目のハグだ 。 さっきは展望台で、お互いに好きだと告ったあとのハグ 。

そして今は・・・、若い直樹に俺が応えて・・・、その見返り(?)のハグ・・・。

いや・・・。 そうだ、もう、・・・ハグするのに理由なんか要らないんだ 。

俺達、 ” 恋人同士 ” なんだから 。

 

その、良介の若い恋人、直樹 。 やんちゃでスケベな、イケメン社長 。

今はやけにおとなしくなって良介に抱かれている 。

 

直樹から、いつもの桐材のような香りがした 。

首の辺りに鼻を近づけて、大きく息を吸う良介 。

くすぐったいのか、直樹が身をよじる 。 かまわず匂いを嗅ぐ良介 。

 

この香り・・・。

桐材と、あと、別の匂いもする・・・ 。 甘く、かすかに汗ばんだ、直樹のからだの匂い 。

くんくん、くんくん・・・。 あれ、俺、ビーグル犬みたいだ 。

アハハ、ちょっと愉快な気分になってきた 。

 

良介にからだを預けている直樹 。

さっきは大胆だったのに、受け身になったら恥ずかしいのか、目を伏せて、頬を紅潮させている 。

 

その頬に触れる 。 ずっと、ず~っと、触りたかった、直樹の頬 。 やわらかい 。

両手を頬に添えて、顔をまっすぐに向けさせる 。 見つめ合う良介と直樹 。

直樹の黒くて大きな瞳 。 今はちょっと虚ろで力がなく、それでも少しは何かを読み取ろうとしているようだ 。

微笑む良介 。

 

若様のきれいな眉や形のいい鼻筋を指でたどる 。

ゆっくり 。

唇をそ~っとなぞる 。

ゆっくり 。

前髪をアップして額に触れてみる 。

ゆっくり 。

耳たぶを摘まむ 。

ゆっくり 。

 

目を閉じてじっとしている、美形の御曹司 。

 

「 ・・・全部、好きだ・・・ 」

そう囁いて耳たぶを軽く嚙んでみた 。

『 良介さん・・・ 』

 

もう一度抱き寄せて、直樹の髪の匂いを嗅ぐ 。

 

ああ、・・・これ、俺にとっては待ちわびてた初エッチ・・・ 。

こんなの地味過ぎて、エッチには入らないだろうな、 普通 。

けど、かわいい直樹を抱いて、いろんな所に触れて、俺・・・、まるで夢を見ているようだ 。

記念すべき俺の初エッチ 。

こんなに胸がときめくなんて、・・・もう最高だ 。

・・・ああ、・・・直樹 、俺の直樹、・・・ありがとう・・・ 。

 

そうっと、やさしく、腕をほどく 。

フ~、っと大きく息をして、タバコに火をつける良介 。

ようやく、息が整ってきた 。

   ・

   ・

   ・

良介を気遣って静かにしていた直樹が、控え目に口を開く 。

『 良介さんって・・・ 』

「 ・・・なに ? 」

『 エッチも、ジェントルマンだ・・・ 』

「 そんな・・・、ン、それ、・・・褒めてる ? 」

 

『 はい 。 なんか、僕だけガッツいちゃって、恥ずかしいです 』

「 そんなことないよ 。 ・・・直樹、うんと若いんだからさ 」

 

『 僕も良介さんのトシになったら、良介さんみたいに落ち着けるのかなあ・・・ 』

「 俺、落ち着いてる ? 」

『 はい 。 今だって、す~っごくやさしくって、大事に大事に扱われて、僕、なんだか、フワ~っと包まれてるみたいで、もう、降参ですって感じでした 。 良介さん、やっぱり余裕だなって・・・ 』

「 余裕なんてないよ、全然 。 俺、・・・その、・・・不安だし 」

 

『 ・・・エッチが不安なんですか ? 』

「 ン~、エッチそのものじゃなくって、なんて言うか、やり方わかんないし、いいトシをして、リード出来なくてゴメン、みたいな・・・ 」

『 リード・・・ 』

「 うん 。 さっきだって、俺、目をつぶって、ただ横たわっててさ、・・・自分がまるでバージンの花嫁で、初夜のシーンみたいだなって・・・ 。 情けないけど 」

『 情けなくないですって、全然 。 僕、大満足でした 』

「 大満足 ? 」

 

 

『 はい !! 良介さん、僕にちゃんと触らせてくれたし 。 今夜は僕、スペシャルオナニーですね 。 2 ラウンドかも 』

『 えっ、・・・オナ・・・ 』

「 はい、オナニーです 。 ・・・あら、良介さん、・・・オナニーとかしないんですか ? 」

『 ・・・いや、するけどさ・・・ 』

 

徐々に、いつもの直樹ワールドに引き込まれていく良介 。

・・・お手上げ、・・・タジタジ。 想定外の連続技には、なす術もない 。

 

「 一週間に何回くらいするんですか ? 」

『 ワッ !! そんなこと聞くんだ・・・2回・・・かな 』

「 勝った !!  僕、4~5回、ですね、へへへ 」

『 そ、・・・そう・・・。 ・・・負けた、・・・うん 』

 

「 ちなみに良介さんのオナニーって、オカズは僕ですか ? 」

『 えっ、オカズ !?  ・・・うん、 まあ・・・ 』

「 どんな、どんな ? 」

『 ・・・どんなって・・・ 。 今みたいに直樹をハグして、からだをピッタシくっつけて・・・ 』

「 それでそれで、そのあとは ? 」

『 わ~、またドキドキしてきた 。 これくらいで勘弁してよ、・・・ってか、直樹はどうなの ? 』

「 僕ですか ? えーっと、僕もハグ好きなんで、そんな感じで始まって・・・。 あと、特には、脚です、脚 」

 

『 ・・・ア、シ・・・ ?』

「 はい !! 僕、脚フェチなんで 」

『 直樹、脚フェチ・・・なの ? 』

「 良介さんの、長い脚 。 筋肉が発達してる太腿とか、ふくらはぎとか、それにカッコいいお尻からのライン・・・、もう、・・・ド・ストライク、です 。 毛深かったりしたら最高なんですけど・・・良介さんって・・・ 」

『 ・・・間違いなく、・・・その、毛深い 』

「 ワオ !!  やったー、ラッキー !! ・・・あと、エへへ、足の指だってべっちょべちょに、その、舐めたいなって、匂いとかにも弱いかも 」

『 ・・・お~・・・ 』

「 あ、すみません、良介さん、・・・引きました ? 」

『 ・・・いや、でも、・・・ちょっと驚いたかも・・・ 』

「 エヘへ 」

 

『 ・・・.じゃあ俺、筋肉落とさないようにして、足の爪とかも手入れしないと 』

「 ダメです、ダメです 。 それ、・・・爪の手入れは、僕がやりますから 」

『 あ、直樹がやってくれるんだ・・・ 』

「 はい、任せてください 。 勿論、その・・・、基本ワザのフェラとかも、僕、上達するように頑張りますから 。 良介さんをうんと喜ばせたいんです 」

 

 

” フェラ ”  !!

・・・若様が、俺のを、フェラ・・・、わ~ !!

 

参ったなあ・・・。

直樹、なんか、スポーツ感覚で、トレーナーっぽい 。

 

それに、すごい過激だし・・・。

 

 

俺を ” 喜ばせたい ” ってのは、嬉しいけど、・・・そうか、やっぱり基本、

俺のポジションは、・・・花嫁なんだ・・・。