名前のことでは、養母とは、こんな思い出がある。
二男が生まれたときのことだ。養母は、
「『星彦』なんていいんじゃない」
と僕に告げた。それをたまたま横で聞いていた祖母が、小さな声で、
「『彦』はもういいよ」
とつぶやいた。僕には聞こえたが、養母にもきっと聞こえたことだろう。
(僕の父親は「彦」が付いている。)
ひどく暗い一言だったが、養母は聞こえなかったふりをした。
「星彦がいい、星彦がいい」
とはしゃいでいたが、僕は、もともと、自分の名前の一部を息子達に繋げるという発想をしていたなかったので、
「いや、『輝』の文字が好きだから、長男と同じように『輝』を付ける。……星にも通じるよ」
と伝えた。
「まあ、あんた達の子供なんだから、あんたたちが好きな名前を付けなさい」
と母は少しだけすねた振りで、その話を終わった。