@新宿 シアターブラッツ
yes-PLANT公演
舞台『反逆のワイドショー 〜テレビでは語れない報道の裏舞台〜』
無事に終演致しました。
局内からもクソワイドショーと揶揄され、低迷する番組「イブニングワイド」に、中東帰りのジャーナリスト、和田浩平がプロデューサーとして赴任するところから物語は始まります。
その番組にバラエティから左遷されてきてオンエアディレクターになる男、
桐谷一二三を演じました。
和田の強引でぶっきらぼうな態度は煙たがられ軋轢を生むがその常識に囚われない報道姿勢に感化され徐々にテレビマンとしてのやり甲斐や誇りを取り戻していくスタッフ達。
チームが1つになりかけた時、東日本大震災が起こります。
今作で演じた桐谷はバラエティ畑の軽薄でノリの軽い男。
テレビは視聴率第1で楽しく無けりゃテレビじゃない!という男。
震災報道の過程でテレビ報道に対する疑問や、テレビの無力さ、不甲斐なさを痛感します。
僕自身、2011年3月11日
東京の自宅でテレビから流される津波の映像を観て愕然とし、何も出来なった。
役者とはなんて無力なんだと打ちのめされました。
実際、6年が過ぎ何も出来ていない現実がありました。
今回のオファーももらったのは1年ほど前。
いま震災をテーマに舞台を創ることに言いようのない不安と、意味があるのかという疑問は最後までついて回りました。
その不安は、本番が始まりお客様の言葉を聞くまで無くなりませんでした。
特に福島の方が多くご来場くださり、
中には涙を流しながら、
遠く離れた東京で震災を忘れないでいてくれる人が居たことで、ぼくらは頑張れると言ってくれたこと。
別の方は、津波の警報や地震速報のアラーム音が劇中で流れ、身体があの時を思い出した。自分自身も忘れていこうとしていた記憶を身体は覚えていた。
震災は終わっていない。
とおっしゃっていました。
この作品を通して、ぼくは初めて日本人として死ぬまで忘れてはいけない未曾有の天災、そして人災である福島第一原発事故と向き合うことが出来ました。
役者としての価値を測られたような気がします。
この作品にはキャストスタッフ皆で覚悟を持って挑みましたが、
ここが始まりのような気がしています。
僕が芝居をする意味、
お金をいただいて表現をするということの覚悟をより一層持ち合わせないといけません。
今作を観て、少しでも今の日常に鮮やかな色が宿った方がいたことが僕の生きる意味なのだと背中を押してもらった気がします。
「テレビなんて無くなっても誰も困らない」
冒頭の、和田の台詞です。本当にそう思います。
しかしエンターテイメントがあり、娯楽を生活の一部に出来る、
もっと平和な日本に、
世界にしなければいけないと思う。
ちょっと大きな風呂敷を広げてこれまでより目線を上げて表現していこうと思っています。
劇場に足を運んでくれたお客様、
この舞台を演り遂げるまでに尽力して下さった全ての方に御礼を申し上げます。
そして、東日本大震災で被害に遭われ、今も必死で戦っている方々に少しでも平穏が訪れますように。
これからも誰かに届く芝居をしていきます。
本当にありがとうございました。
2017年12月26日