詩集【苦しみや】 | リコーダー吹きの休日Recorderist's Holiday

リコーダー吹きの休日Recorderist's Holiday

リコーダー奏者の斎藤夕輝です。
自分の好きな事が誰かの息抜きになったらいいなと思ってやっています。
Hi, I'm Yuuki Saitoo, a recorder player.
I'm doing this hoping this can be a break for someone.

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(電話のみ/Only talk)

闘病中、病状がかなり酷かった時に作った詩を集めた。(本当に酷い時は詩も考えられない。)
とっても暗いから、今元気な人は読まないでね。
辛かった時、同じような思いをしている人たちの話を読んでると励まされた。
似たような境遇にある方たちに寄り添えたらいいなと思って載せます。








〜無〜

何も食べたく無い
何も飲みたく無い

白い天井を見たくも無い
小鳥たちの声を聞きたくも無い
布団の黄ばんだ匂いを嗅ぎたくも無い
痩せ細った体に触りたくも無い

晴れやかな未来を考えたくも無い
透き通った過去を想いたくも無い
荒れ狂う今を見つめたくも無い

喜びに出会いたくも無い
悲しみに伏したくも無い
怒りを生み出しくも無い
楽しさを見出だしたくも無い
寂しさを追いかけたくも無い

道々をゆく人生の友たちを愛したくも無い
温かさと冷ややかさの入り交じるこの世界を愛したくも無い
生にしがみつき踠き苦しむ己を愛したくも無い

一点の希望を信じたくも無い
一塊の勇気を覚えたくも無い
一片の報酬を掴みたくも無い
一筋の誠実を持ちたくも無い
一山の愛情を感じたくも無い

君の笑顔も欲しく無い
己の涙も欲しく無い
何も欲しく無い 

ただ
無になりたい















(〜無題〜)

傷付きたい
致命的に傷付いて
死にたい
そうでも無いと
生きていてしまうから











〜鼓動〜

頭の周りを
残酷なコールが埋め尽くす
行き場の無いこの熱望を
どこへぶつけたらよいのか
いっその事この微々たる鼓動が
私を内から砕いてくれたらいいのに














〜輪の先〜

ドアノブに掛けられた輪
なんて美しいんだろう

僕はその輪を
憧憬の眼差しで見つめ
その先にある空(くう)へ
羨望の心で恋い焦がれる

悲痛と切望とに満ちたこの時間
なんて麗しいんだろう













〜スイッチ〜

皮膚は溶け
異臭を放ち
内臓は歪み
苦痛に乱れ
心は擦り切れ
悲鳴を上げる

ゆこうにも
身動きが取れない
おりるにも
高さが足りない
のもうにも
手を伸ばせない

こんな肉片になっても尚
頭の中では混沌と
ありとあらゆる物が
飛び交い
渦巻き
肉片を押し潰す

お願いです
誰か切って下さい
自分では手の届かなくなってしまった
スイッチを
どうか
どうか














〜「小箱」〜

横たわる青年の横で
その母は言いました
全ては過去になる

青年は思いました
「過去や未来はどうでもいい」
「辛いのは今なんです」

横たわる青年の耳元で
何者かが言いました
どうせ死ぬならボロッカスになるまで生きてみればいい
自分がどこまで落ちぶれるか見届けてやればいい

青年は声にならぬ声で答えました
「そんな気力はもう無いんです」

横たわる青年は心の中で
ありったけの力を振り絞って
大きく大きく叫びました

「私を引き裂いてください」
「助けなくていい」
「殺してください」

空気をつんざくその声は
青年の住む小箱の中で
小さく小さく木霊していました













〜急いでください〜

明けない夜は無い
止まない雨は無い
終わりの無いトンネルは無い
人はそう言うけれど
このままじゃ
朝になる前に闇に飲み込まれてしまう
虹を見る前に溺れ死んでしまう
光を浴びる前に歩き疲れてしまう

炎は消え
花は枯れ
死体は腐る
そんな事は分かっている
だけどそんなのはもう待てない
今この瞬間に吹き消し
今この場で踏み躙り
今この有様で風化させてください

笑いも
涙も
喜びも
悲しみも
思い出も
希望も
楽しさも
退屈も
満足も
切なさも
出会いも
別れも
再会も
裏切りも
懺悔も
和解も
労苦も
報酬も
永遠も
儚さも
全て
全て
全て

闇奥に葬り
川底に沈め
道無き道に捨て置き
透けたそよ風だけを残し
踏み躙って乱れた土に痰を吐いて
屑一つ残さないようにしてください

お願いです
急いでください















〜雨垂れ〜

どんなにウタを吐こうが
闇への欲求は排泄される事なく
腹に、心に
残ったまま
無数のモノクロの切望が
青年の頭を、体を
真っ黒に染め上げてゆく

外は雨が降っていて
屋根に落ちる雨垂れが
延々と時を刻む
青年はただ彼方を見上げ
その音に縋(すが)り願う
雫と共に
溶け、消え、果てたいと

しかし
雨垂れよ

どうか止まずに
青年の心を
打ち続けていてください





















おしまい。
打ち続けられた結果ここにいる。
読んで頂きありがとう。
それじゃ、今日という日がどうやって終わるか見届けてやりましょう。


(写真と絵は闘病中に自分で描いたり撮ったりしたもの。最後の一枚だけネットで見つけた、誰かが撮ってくれた写真。自然界の風景はいつだって僕に生きる力をくれる。)









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