なんとも切ない

 

Youtubeで消息不明の歌手を紹介する動画がお勧めに出てきた。歌手の名は錦城薫。沖縄出身で南山王の末裔とのこと。活動期間は1988年から1990年のわずか2年間。その後は一切の消息を絶つ。彼女が脚光を浴びたのはテレビ朝日・木曜ドラマ「避暑地の猫」(1988)のエンディング曲「紅い華」(1stシングル)だった。このドラマは宮本輝原作で軽井沢の別荘が舞台。毎年、避暑で別荘に訪れる財閥一家とその別荘番の家族の物語。もう37年前のドラマになるがあらすじを読むうちに自分もリアルタイムでドラマを観ていたことを思い出す。ドラマの仔細は忘れたが別荘の主人の妻役が淡路恵子であり貧しい別荘番の一家を執拗にいじめ抜くところは強烈に覚えていた。このドラマのせいで自分のなかで淡路恵子の印象がすこぶる悪くなった。後年、映画「父子草」(1967)を観た時もおでん屋台「小笹」の女将が淡路恵子だったので「うわ、あのいけずなおばはんや!」と先入観をもって観てしまうほど。ドラマ「避暑地の猫」をもう一度観たくなりネットを漁るも一切見つけることができず。このドラマはDVD化もされていなかった。仕方なく原作を読んでみた。宮本輝の小説は「泥の河」以来これで二作目。TVドラマはほぼ小説をなぞらえていたが小説のほうが人物描写に違和感をおぼえた。別荘番の父や息子の修平(主人公)の言動が粗野で共感できない。せめて父親は無学でも朴訥で寡黙であってほしかった。小説後半になるとどいつもこいつも自分勝手で各々の結末をみても自業自得。感情移入できなかった。寧ろドラマでは一番忌み嫌っていた別荘一家の妻(淡路恵子)に同情してしまいそうになる。何より小説では説明が諄(くど)い。長々と心理描写が書かれていて蛇足気味。この小説では行間を読む余韻は皆無。この作家の小説プロットは映画やドラマのテーマに大いなる刺激を与えるが作品としての完成には脚本家・監督のセンスによる昇華の手助けが必要となる。物語の最後に小説では修平が恋していた実姉は大金を掴み海外に高飛びしてしまう。TVドラマでは姉は修平と二人だけで暮らそうと持ち掛けるも修平は無言のまま姉から去る。そしてTVドラマがこれほどまでに切なく印象に残ったのは印象的なエンディングテーマ。この曲がドラマの半部を担っていると言っても過言ではない。ドラマの再鑑賞はできないがせめてもの慰みにと錦城薫の1stアルバムを入手した。エンディング曲「紅い華」に歌詞にある"GONSHAN"とは北原白秋「曼珠沙華」(詩集「思ひ出」より)からの引用であり白秋の出身である福岡県柳川の方言で「良家のお嬢さん」という意味。

 

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