二日目 何か感じる・・・感じるぞ・・・
さて、意気揚々と二日目の朝が来た。
よし、シャツとズボン・・・・
「あんた、それじゃ汚れて使い物にならなくなるよ、何かいらないもの着て行きなさい」
部長(母)に言われ、渋々着替える僕。
何とも格好悪い・・・これが僕の思い描いた社会人だろうか・・・。
いや、最近めっきり元気が無くなってしまった社長(親父)を元気づける為に僕がやらねば。。。
会社にいた社員さんのナスビさん(勿論仮名、雰囲気が暗い、あまり喋らない、真面目で神経質・・・そして・・・)と車で二時間かけて遠くの現場へ・・・。
現場へ赴くとそこは・・・・ラベンダー畑・・・な訳は無く、工場地帯、社会科の授業の写真で見たような風景がそこにはある・・・。
僕も今日から工場勤め・・・・・?今更だけれど違和感。
おかしいな、僕設計で入って来た筈なんだけど・・・・。
パソコンで頑張って図面を書いた初日は一体・・・?
ま、まあ良いや。
初日会った川さんと、ここで最後の社員さん長老さん(なんと七十歳!伝説の職人、腕は鈍らず、しかし高齢の為雇ってくれる所が無く渋々うちの会社へ)と会う。
「おおっお前が息子かっ」
長老さんは高い声を上げ、やたらテンションが高い。これは大歓迎だ。
僕もその方がやりやすい・・・何故なら現場へ向かっている間の二時間。ナスビさんとの会話・・・。
ゼロに等しい・・・。こちらから会話を振るも・・・膨らまず・・・。
エヘヘ、シャイな人だぜっ(^0^)
さあ、作業開始だっ。
僕に割り振られたのは当然の事だが雑用。
黙々と作業をこなす僕・・・。
一時間・・・・二時間・・・・。
あれ・・・?会話が・・・?
全くと言って良いほど会話が無い・・・。
僕が何をすれば?と聞くと指示を出すのみ・・・・。
長老ーーーーーーーーー。
返事が無い。長老は奥でなにやら難しそうな作業をしているようだ。
川さんーーーーーーーーー。
返事が無い。黙って塗装をしているようだ。
なすびさんーーーーーーーーー。
返事が無い。黙って木を切っているようだ。
僕は頭の中でミスターチルドレンの「雨のち晴れ」をかけた。
そして帰りの車内、外はもう薄暗く、工業地帯を抜け、寂しい田舎道へ車が出た時の事。
「これから現場で働くの?」
重い口を開けるなすびさん・・・。
「は、はい、そうですね、多分総合的な仕事をやっていくと思いますっ」
僕はやっと心を開いてくれたと大喜びだった・・・・・・が、十分後・・・・
「社長の考えも分かるけれど現場の声も・・・・」
「社長の息子の君は良いよね・・・」
「正直もう会社続けていく気が・・・・」
得得えええ得え得獲えエエエエ獲得ええ得え得得っっtっtっ。
仕事二日目で重い話・・・
キタ━━━━━━('A`)━━━━━━!!!!!!!
初日~今日から僕は~
さて、遡る事二月の十三日、僕は親が経営している会社へ入社した。
仕事の内容は・・・まあいわゆる木造建築のようなものだ。
家は木材の輸入、設計、建造まで全てこなしている。
従業員は社員さん二人、母親一人、これに僕が加わり四人になる。
入社時期おかしくない?と思われるかもしれないが、タイトルの通り僕は社長の息子で、そして中小。
入社式なんてものは存在しないし、息子といえど細かい説明も無い(@-@)
とりあえず言われた事は、
「現場行って手伝って来い」
だった・・・。
が、しかし結局初日という事もあり、流石にその日は会社内にいろ、みたいな事になり、僕は椅子にもたれかかる。
そこは部長(母)の席であり、僕に椅子や机は当初用意されていなかった・・・。
そんな中、顔を合わせたのが川さん(仮名、楽天家でお調子者・・・今年で花の六十歳)だった。
川さんは二ヤリと笑うと、「おぉ息子さんか、よろしく」と言った。
白髪混じりの髪に自信無さげな表情・・・痩せた体つき、あまり高くない身長。
川さんは中小企業が舞台のドラマに良く出てくる「唯一の良心」みたいな顔をしていた。
僕は気に入られようと精一杯の笑顔と挨拶をした。
さて初日の仕事は・・・何もなし、JWCADという(設計をする為のパソコンのフリーソフト)の勉強をするに留まる。
部長の机で・・・。
この日は川さんも少し見ただけで現場へ行ってしまったので、まるで事務所に居ながら家に居るような錯覚を起こした。