上京男、ストーカーになる 後編(最終回) | 風間観察日記 2

風間観察日記 2

精神安定剤日記

前回のあらすじ

→路上ライブやってたらモテた

→俺は8人目の男になる

 

 

 

事件が起きたのは

12月に入ってからのことだった

 

 

18歳の冬、

総勢100人位が暮らす男子学生寮に住んでいた

 

 

友達というには遠いけれど

話せるくらいの人が何人かいた

 

今の自分には想像もつかないけれど

この時、周りにはウェーイするやつしかいなかった

 

 

 

その中に鈴木という黒い男がいた

 

大学デビュー決めたなみたいな男

陰口が好きで

体と心が黒い元気な子というイメージだった

 

 

鈴木含め俺の周りの学生寮の人たちと

俺の彼女が仲良くなっていった

 

 

それは何だかモヤモヤした

 

不安と嫉妬が入り混じるような

初めて感じる感情だった

 

 

 

ある日、駅で歌っていたら

そこに彼女と鈴木が一緒にやってきた

 

 

どうしたのと聞くと

 

原宿で偶然出会って一緒に帰ってきたという

 

 

 

そんなわけあるかい!

 

いくら俺が田舎者でも原宿の人の多さくらい知ってるわ

そんなわけあるかい!

 

 

 

とは言わなかった

 

 

どっちでもいいことだ

たとえ2人で遊んでいたとしても

 

きっと悪いことなどしてないし

何か言うなんて自分に自信がないと言うみたいで

何より彼女を信じてないと言うみたいで

 

何も言わなかった

何も言えなかった

 

 

 

3人の人間が関わっていたけど

事件として扱っているのは自分だけだった

 

 

心がモヤモヤした

 

 

 

 

12月、

彼女と会う回数がなぜか減っていった

 

12/25クリスマス。

恵比寿ガーデンプレイスという場所へ遊びにいく

 

何かプレゼントをしたけれど

大したものはあげれていないと思う

 

もっとちゃんとしたものをあげれていたら

何か変わっていたのかもしれない。

 

 

 

 

1月。

1/13、自分の誕生日直前。

 

彼女と一切の連絡が取れなくなる。

 

 

 

何かあったのかと心配になる

 

 

なんて そんなのは建前で

本当は気づいていた

 

 

これはもう終わりなんだって

別れようって言わないだけの話

わかれよって話

 

 

ただ

理由もわからないし

何よりこっちはまだ好きでいたんだと思った

 

いろんなところが痛んだ

 

 

ストーキングをする人って

好意が一方通行なんだろう

 

気持ちの進入禁止が読めないから

事故を起こしやすい人間なんだろう

 

人間関係において。

 

 

 

 

どうしても会って話したいと思って

彼女の住む駅へとバイクで向かった

 

時間は19時頃

 

こんな時に限って

東京には雪が降ってきた

 

 

東京で見た初雪だった

 

 

駅の改札で彼女を待った

「張った」と言った方がお似合いだ

 

 

ただひたすらに張り込みを続けた

 

 

田舎の駅に比べると

乗り降りする人の数がとても多くて

 

電車がつく度に彼女のニット帽を必死で探した

 

 

もしかしたら見過ごしてしまったかもしれない

 

彼女の家に電話をするとお兄さんが出た。

お兄さんとシェアしていた。

 

 

帰ってきていないと言う

 

 

家にも行ってみる。

そしてまた駅へと戻る。

 

 

 

時間は22時を回る。

 

 電話をかける



もう5回目になる電話に

お兄さんは受話器を取らなくなった

 

 

もう何をすればいいかわからないし

どこに行けばいいのかわからなかったし

会っても話せることなんて何もなかった

 

それでも会いたかった

 

 

 

深夜1時。

 

ニット帽は電車から降りてくることなく

駅のシャッターが下りてくる。

 

 

雪の中、バイクを押しながら帰った

 

 

 

 

深夜2時。

公衆電話からかけると彼女は電話に出た

 

携帯からかけていたからダメだったんだなと気づいた

 

 

友達と過ごしているんだろう

笑い声のBGMの中、

 

別れようと言われた

わかったと言った

 

 

1日限りのストーキングは終わった

 

 

恋愛は怖いと思った

それ以上に自分はこんなに怖い人間なんだと思い知った

 

 

雪は翌朝には溶けて消えた

 

 

1ヶ月の恋人も消えて

1人で19歳になった

 

1つ、大人になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PS

 

3markets(株)にセブンスターという曲があって

シングルとアルバムで録音が違っていて

 

シングルの方の間奏で

「メンバー全員で死ねと思った女の名前を全力で叫ぶ」

と言うアイデアがあってこの子の名前を叫んだ

 

 

 

3人同時に叫んだ上に音を加工してあるから多分わかんないけれど

こういうの本当好きだな

 

今のメンバーやってくれなそう

 

 

 

意味のないことこそ本当に好きだなと思う

 

意味がないのにやりたいんだから

すごいことなんだと思う

 

 

付き合うとかどうでもいい昔話に

付き合ってくれた人たちありがとう

 

 

 

 

気持ち悪いとか感想欲しい

 

自分でも気持ち悪いと思う。

 

何より

いまだに覚えてる自分を気持ち悪いと思う。

 

恋愛はなんだかんだすごいエネルギーなんだろう。