Psychedelic Garden

Psychedelic Garden

この色をなんと表そう。このにおいをなんと伝えよう。この感情を、この景色を、この感触を、この音を、さあ、どんな言葉にしよう。

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初稿:2017年9月、完結:同年11月。改稿に着手:2021年7月、リリース:同年12月。

このかけた月日の違いこそが、勢いで書ききれた無謀なころと、少し考えて書くようになった今との差なのだろう。

 

というわけで、本作をどんなふうに変えたのか、ビフォーアフターしてみようと思います。

 

大きく変えた点は以下です。

 

・文体をケータイ小説っぽいものから文芸仕様へ

・セリフでしていた処理を、言動や地の文で表現する

・回想や伝聞で処理していた箇所を、主人公が体感覚で経験する

 

 

ケータイ小説→文芸

これはわかりやすい欠点でした。体言止めや思考そのままの羅列が多かったのです。『勢い』は感じられるのですが、これじゃいけない。

 

 

『主人公たちの言いたいことを、そのままセリフで処理していることが多いですが、それをエピソードやちょっとした行動で表すことが出来ると、より説得力が出ると思います』

 

この選評をいただいた当時、ぶっちゃけよくわかってなかったです。でも二年ほど前に選評と作品をふと読み返して、もう目からウロコ。アハ体験。なんてもんを出してしまったんだ自分は、と自己嫌悪しました。

たとえば以下。

 

「……何?考えちゃって」

「いや。どうだった?」

「うーんと……私に足りないって言われたもの全部見せてくれたような……」

「ほう。具体的に」

自分はいつも曖昧なくせに、と一瞬睨むも運転中の目には入っていないようで

仕方なくどう言おうかと頭を巡らせる。

「……縛られる前から支配されたみたいに逆らえなくて、最初から最後まで安心感でいっぱいだった。縄解かれる時でさえもっとこのままでいたいって思ったくらい」

「へーぇ……そうか」

瑛二さんはそう言うとくつくつと笑い、信号で車を停めてこちらを向いた。

「土曜に会った時、あいつをどう思った?」

「雰囲気も見た目も女王様っぽくないなぁ……って」

「じゃあ昨日は?」

「なんていうか……完全に振り回されっ放しっていうか……」

「緊縛の時だよ」

「さっき言った通りで――」

「奉仕の女王だっただろ。ユイは」

 

はいきもちわるいー、はいむりー、はいだめー。

それが、こう変わりました。

 

 記された通りの肩書きを名乗ってやわらかく笑む彼女の姿は、私が思い描く『女王様』のイメージからはかけ離れていた。

~中略~

「私とやっていることはそんなに変わらないはずなのに、なにもかもが違うんだよ。空気感から縄の手繰り方から全部がさ。それに瑛二さんのとも全然違うのね。瑛二さんの緊縛はこう、自分が広がるような、ありのままのーって感じなんだけど、結衣子さんのは陽だまりの中に溶けてくみたいで。なんていうか――」

 気づけば私は手振りも交え早口で一気にしゃべっていて、恥ずかしくなって口を噤む。だけど瑛二さんは、そんな私を訳知り顔で眺めていた。

「勝手な奴だが、ユイは奉仕の女王様だっただろ」

 

やったことはというと、

・地の文とセリフのバランスを注意し、分散させて補強する。

・一人称で語ることと発言にほんの少しメリハリをつける。

・態度や顔でどんな雰囲気なのかを示す。

 

 

『ヒロインが直接体験する部分は非常に良いのですが他の人物の描写は回想の伝聞が多く「今、目の前で物語がうねっている」という迫力にやや欠けた感はありました』

これはわかりやすかったのだけど、多すぎたのもあって直すのに苦労した点でした。

たとえばこちら。

 

「これから会わせるそいつは奉仕型の女王。しかも元々マゾだった」

「マゾでも女王様出来るの?」

「サドとマゾは表裏一体なんだよ。そいつはなって店も繁盛してる。マゾ経験を全部活かして緊縛も鞭も色んな責めも覚えたよ」

「はぁぁ……なんか、えー?混乱しそう……」

「何が問題なんだよ。全部ただの現実だ。向き合うんだろ?」

 

はい他人ががっつり説明してるー、はいもうばかー。

それが、このとおり。

 

「今日はお前に紹介したい女がいる」

「今度は女の人?」

「ああ。俺の十年来の知り合いなんだが、フェティッシュバーのオーナーでミストレス――つまり、女王様だ」

 

シンプルにスパッと。その後8 Knot訪れたルカたちを迎えた結衣子は、ルカに自身をこう語ります。

 

「私もね、瑛二くんに緊縛を教えてもらったのよ」

 結衣子さんがふいに私を覗き込む。「ミストレスになる前だから、もう七年経つかしら」

「七年?」

 驚きのあまり私は繰り返す。彼女はにこにこ笑ってうなずいた。

「それまでは丸の内でOLしてて、ちょっとしたきっかけでこの世界に飛び込んだの。ここでの私はミストレスだけど、本質はマゾヒストなのよ」

 そう言って彼女が、少し照れくさそうにはにかんだ。

 

その人に会ってその人の口から話を聞く。それだけで臨場感が違うのですよね。

……とまあこんな感じで変えていきました。

さて、配信から三日目ですか。早い方は読み終えていたりしますでしょうか。

差し支えなければ、お声をいただけると本当にうれしいです。ひと言でも構いません。励みになりますのでよろしくお願いいたします!

 

 

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