闘技場に剣戟の音が響く。
たった一つの願いを叶える”聖杯”を巡って、オリスマメンバーはここに召喚されたのだった。
「どうしたアイク!食べ過ぎで速さが鈍ったか?」
「いってろ、聖夜!パワーでゴリ推してやるぜ!」
背中を預けあった仲間であり、戦士同士の熱い戦い。
闘技場はすでに燃え上がるような熱気に包まれており、
さらに剣を合わせるごとに天井知らずに熱を増していく。
攻めるアイクにそれを受ける聖夜という図式は開幕から変わらないものの、
その実力は完全に拮抗していた。
「くっそ、攻めづれえ!」
聖夜の盾技によってアイクの通常攻撃はほぼ完全に防がれ、
シールドスキルによってコンボへの基点すら作らせてもらえない。
よって、アイクは大技に頼らざるをえない。
「蒼炎よ・・・我が剣にやどれ!」
アイクの周囲が陽炎のように揺らめく。
幾多の戦場を越えた蒼炎の戦士の名は伊達ではなく―――
「大・噴・火!!!」
大地が裂け、圧倒的な熱の衝撃波が聖夜を襲う。
「ぐっ・・・!」
闘技場の壁に叩きつけられる聖夜。
すぐに身を翻して、アイクへと剣を向ける―ー―が、
「うおおおおおおおっ!! 大・天・空ッ!!!」
烈火のごとき追撃。
アイクが聖夜を切り上げ、空中で連続攻撃を叩き込む。
数多の敵を葬り去ったアイクの奥義、「大天空」である。
「光よ集え、聖光の盾よ、ここに具現せよ」
しかし、聖夜の盾技「パーフェクトガード」はAランク以下の物理攻撃を無効化し、
さらに、衝撃の一部を相手に跳ね返す。
最後に相手を叩きつける一撃以外はほぼ防がれるだろう。
「ちっ、相変わらず恐ろしいほどの防御力だな。」
叩きつけた剣を構え直し、アイクが賞賛の言葉を送る。
「さすがに完全には防げなかったか」
聖夜の盾はひび割れていた。魔力で紡いだ盾とはいえ戻すのには多少の時間を要した。
さらに腕にダメージを負ったため、今までのように攻撃を防ぐのは難しいだろう。
「やるしかないか・・・」
さらなる追撃を迫るアイクに、聖夜も奥義を開放する。
「契約に従い、我に従え、光の鳳凰。光輝の炎をもって我が敵を打ち滅ぼさん。」
ひざまずいた聖夜の足元から溢れる光。
それはまたたく間に広がり、闘技場全体を包み込んだ。
「くっ!?」
アイクが全力で防御の姿勢をとる。
それほどまでに聖夜が解き放った魔力は膨大だった。
そして―――
「ブレイブ――ハートォオオオオオオオ!!!!!」
聖夜の最大の奥義が解き放たれる。
自身を巨大な光の鳥に変えて、敵に突進する大技である。
「ぐ、ぐおおおおおおおおおおっ!!!」
アイクが地面に倒れ伏す。
すさまじいまでの力の余波は衝撃波となって、天地を大きく揺らがせた。
聖夜が得たのは仲間を護るための力。
兄として後に続くものたちのために道を切り開く。
そんな聖夜の清廉な思いが込められていた。
しかし、魔力を極限まで使い果たしたことで聖夜も地に倒れる。
「負けるわけにはいかない・・・!」
聖夜が立ち上がろうと力を振り絞る。
奥義の打ち合いは聖夜に軍配があがったが、まだ勝敗の天秤は揺れている。
剣を支えに立ち上がる聖夜。
その姿を心配そうに見守る影があった。
「―ー―」
ぽつりと聖夜が誰かの名前を呟く。
胸に去来するのは、光の剣を守護する騎士の軍勢。
そして――それらを指揮する巫女の存在。
聖夜のはじまりの光はそこにあった。