Godius 妄想小説
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Godius AnotherQuest ~第1章 パゴール

昼なお暗い部屋の中に男が一人立っていた。


その部屋はもう何年も使われていないように荒れていた。


男は漆黒のローブを身にまとい、顔をフードで覆い隠している為、その表情をうかがい知る事は出来ない。


部屋には写真が飾られてあり、黒髪の美しい母親と母親そっくりな愛らしい女の子が仲良く寄り添って微笑んでいる。


男はそっと写真を手に取ると、つぶやくように言った。



「・・・もう少しだ」
・・・計画は・・・順調だ
後はアレが手に入れば・・・きっと、お前たちの っ!」



男は言葉を飲み込むようにして黙り込み、静かに部屋をあとにした。


写真の親子がどこか物悲しそうに男の背中を見つめているようだった。












ガラガラガラッ



パゴールの門に1台の馬車が到着した。



「ふーっ!やーっと着いたぁぁ!」



地味な布地の服に似合わない、真っ青なマントを羽織った少年が心底疲れたような顔をしながら大きく背伸びをした。



「ここがパゴールかぁ! すっげぇー!!」





広大なベルク領の中心に存在するベルク最大の都市 首都パゴール


人口はゆうに10万人を超えると言われ、全ての物がこの町で手に入るとまで言われる大都市である。


周囲には肥沃な大地と平原、水と緑に溢れた半島があり、交通の便にも優れている為、観光に訪れる者も多くいる。


街は高く堅固な城壁に守られており、4つある門にはそれぞれ数十名の近衛兵が待機しており、絶えず周囲を警戒している。


街には絢爛豪華なベルク城がそびえ立ち、ベルク王を含むベルクの統治者・有力者達が多く集まっている。


この時期、年に一度のベルク祭が開催される為、祭りに近いこともあってかいつも以上に賑わっているようだった。


門の外までその様子が響いていた。




「それにしても疲れたなぁ・・
 早いとこ宿屋でゆっくりしたいよ・・」




少年がこんなに疲れているのには理由がある。


ここまでの道のりは決して平穏なものではなかったからだ。



キャズウェルを出発して半日が過ぎようとしたころ、突然モンスターに襲われたのだった。


馬たちが騒ぎ出し、馬車がガタガタと揺れだした



「!?」



異変に気づき、あわてて馬車の外に出たところに、茶色い塊が目の前に迫っていた!


一見、泥のように見える物がいきなり人の形となって襲ってくる。

キャズウェル周辺に生息する凶悪なモンスター。「マッドスライム」だ。



「うわーーっ!!」



突然の出来事になす術もなく、ギュッと目を閉じたのだが不思議と衝撃も痛みも感じなかった


おそるおそる目を開けると、目の前で馬車を操縦していたおじさんがマッドスライムのこぶしを捕まえていた。



「危ないから馬車の中に入っていなさい」



力強いが、優しさを感じる言葉でおじさんが注意を促してきた。



「あっ・・はっ・・はい!」



慌ててそう答えたが、すでにおじさんの姿は目の前から消えていた。



グシャッ



いつの間に移動したのだろうか


おじさんはマッドスライムに嵐のごとく連打を浴びせ、襲い掛かってきたマッドスライムを倒していた。


彼の手にはすでに使い古されていたガントレットが装備されていた。



グシャッ!グシャッ!



一撃一撃がクリティカルヒットのような強力な攻撃で、マッドスライムは次々に倒されていった。


ほんの数分で全てのマッドスライムを倒し、軽く泥を払いながら馬車へと戻ってきた。



「・・(す・・すげーーっ!)」



その後も体長1メートルもあるような巨大サソリや、巨大なヘビが襲ってきたが


おじさんの活躍により、全てのモンスターを倒していった。





「わたしはねー。若い頃は君と同じように冒険者をしていたんだ

 『 狂乱の武者 』 なんて異名を取っててね。それなりに名前が知られていたんだよ」



途中の村で休憩を挟んでいるときにおじさんが語ってくれた。



「昔はね。今と違って冒険者が優遇されるようなこともなくてね、収入の不規則な冒険者なんぞは嫌われていたものさ・・・

それでも、自分のしている冒険や、凶悪なモンスターを倒すことが、きっとみんなのためになっているんだと信じて

つらく、厳しい生活ながらも充実した毎日を送っていたんだよ。」



遠い目をしながら話していたおじさんの顔が急に悲しげになった。



「あんなことさえなければ・・・今ではもっと・・・いや。やめておこう・・」



こんなに強い人がなぜ冒険者を辞めてしまったんだろう・・?


冒険者を目指す少年にとっては、とても気になることだったが、


悲しい目をしているおじさんにこれ以上何も聞くわけにもいかず、ただ黙ってうつむいていた。











「ええっ!? 1,000ランス!?」



「はい。当宿はつい先日リニューアルオープンしたばかりですので、外装・内装ともに他の宿よりも優れております。
 長い旅や冒険でお疲れになったお客様へ、快適なくつろぎの空間をご提供できる自信がございます。」


「また、お料理のほうもラムパス産直送の有機野菜をふんだんに使用した季節の野菜と、
 カリブリアーの湖から今朝あがったばかりの新鮮な魚介類が自慢となっております。」


「さらにですね・・・」



「・・・」



とにかく1秒でも早くゆっくりと休みたかった少年は、パゴールの門をくぐるとすぐに宿屋を探しに行った。


各種の装備品や雑貨品のお店が並び、賑わいをみせている町の中心に向かったのだが、なかなか宿屋らしき建物が見つからない。


街の人に有名な宿屋を紹介され、ようやく見つけた宿屋に入ってみると一泊1,000ランスと言われてしまい愕然としてしまった。



「(キャズウェルじゃ、一番高い宿屋でもいいとこ100ランスだってのに・・)」



宿屋の主人はまだ一生懸命説明をしていたが、少年はがっくりと肩を落としてトボトボと宿屋をあとにした。



「宿屋をお探しかい?」



しわがれた声が聞こえてふと振り返ると、腰の曲がった老婆が立っていた。



「こんな高いとこじゃ、坊やみたいなもんには止まれないじゃろ?」
安くて快適な宿屋を知ってるからついといで」



みすぼらしい服とボサボサの頭をしていて、見るからに怪しい老婆だったが


他の宿屋を探しに行く気力も体力も残っていなかった少年は、素直にあとをついていった。


老婆は街の南に向かって歩き出した。


次第に人の行き来も少なくなり、さきほどまで賑やかだった街の音も静かになっていった。



「ほら。ここじゃよ」



不安を感じながら、危ないようならそろそろ逃げようかなどと考えていたときに老婆が話しかけた。



「ここ?」



辺りを見渡しても、宿屋のような建物が見当たらない。


老婆は少年の問いには答えず、一軒の建物に向かっていった。


それは宿屋とはお世辞にも言えないような廃墟のような建物だった。




『宿屋 お伽の国』




腐りかけている看板が風に揺られてギシギシと音を立てていた。




Godius AnotherQuest ~プロローグ


「・・ふぁ~ぁ」



春光が窓から一筋射し込み、寝ぼすけな彼を優しく起こした。



「げー・・ まーだ6時じゃん・・

 そっか。夕べカーテン閉めるの忘れてたんだな。」



階下からは小気味の良いトントンという音と、外からは何やら重い物を
ビュンビュン振り回す音が聞こえてくる。



「・・・しゃーねーな。起きるか。」



いつもなら睡魔に勝てず、このまま寝てしまうところなのだが、
今朝は興奮が彼を支配していたようだった。






「おはよう。今朝はずいぶん早いのね」



ぼさぼさの頭を掻きながら降りてくる息子に母が優しくあいさつをした。



「もうすぐ出来るからちょっと待っててね」



「ん。」




台所に立つ母の後ろ姿をぼーっと眺めていると、バタンッと玄関のドアを開ける音がした。




ツルッツルの頭に汗を光らせ、上半身裸の男が入ってきた。


春とはいえ、まだ外の空気は冷たい。


筋肉が隆々としたその体からは、湯気が立ちのぼっている。


男は不機嫌そうな顔をして言った。




「あんだ?朝から辛気くせーツラしやがって!

 お前も男なんだから素振りくらいしたらどうだ!?」



「朝っぱらから、んな むさ苦しいことすっかよ!」



「ばっかもーん!いいか?鍛冶屋はな。腕力が命なんだよ!

 お前だって今から鍛えておかないと、立派な鍛冶屋にはなれんぞ!!」



「だぁら!いつ俺が鍛冶屋になるなんて言ったんだよ!!

 勝手に決めんなハゲおやじ!」



「お前は生まれたときから鍛冶屋になるって、お天道様が決めてあるんだよ!」



「っざけんな!俺は今日から冒険者になるんだぜ!

 こんな田舎の鍛冶屋なんか誰がなるかよ!!」



「!!??」



おやじの顔が真っ赤になったところに、タイミング良く母が朝食を運んできた。



「はいはい。続きはご飯の後にしてちょうだいね。」












ここはガディウス大陸。


ベルク領の田舎町。キャズウェル。


大陸の南に位置するキャズウェルにも、いつもの爽やかな春が訪れていた。


人口、およそ1万人のこの町は、決して大きいほうではない。


だが小高い丘の上には良質の鱗や角が採取でき、鍛冶や裁縫で栄えていた。


ここ何十年も争いごと一つ無く、キャズウェルの人々には笑顔が溢れていた。







そんな平和な春のキャズウェルに、あれほどの悲劇が起きようとは、

誰も予想だにしなかったのである。










焼きたてのパンと、香ばしい珈琲の香りが部屋を包んでいる。


さっきまでの喧騒とした空気はどこへやら。


家族3人が食卓を囲んでいた。



勢い良くパンとスープを貪っている息子に母が聞いた。



「それで?今日は何時に出発するの?」



「ん~ぁ?あふぉいちぢかんくらぁぃふぁな?」



パンを咥えながら言葉にならない言葉で息子が答えた。



「準備はもうできてるのね?」



「ん。」



珈琲を啜っていたおやじも独り言のように口を出してきた。



「今は、いちいち認められなきゃ冒険者になれねーってんだから

 めんどくせー話だな。ったく。」



息子が一人、冒険者カードの支給を受けにパゴールまで行くのが
心配なのだろう。


チラチラと息子の様子を見ながらも、そっけない素振りをしていた。

母が微笑ましくその様子を伺っていた。



「まーね。近頃は冒険者っていっても、悪いことをしてる連中が

 多いって聞くからね。誰でも冒険者になれるってわけじゃないんだよ。

 やっぱ、俺みたいに才能がある奴がなるべき職種だよな」



まだ冒険者の資格も取っていないのに自信満々に息子が言った。
ケッとおやじが悪態を付いている。



「乗合馬車で行くっていっても、途中にはモンスターも出るんだからね。
 十分に気をつけていくんだよ。」



おやじが心配しているの察してか、母が変わりに息子を案じた。






およそ1時間後


ベルク首都パゴール行きの乗合馬車がキャズウェルの入り口に到着した。


両親に見送られ、期待と興奮で胸がいっぱいになりながら馬車へと乗り込む。



「じゃーっ、ちょっくら行ってくるよー」



緊張を誤魔化すように、あえて元気いっぱいに出立の挨拶をする息子。

そんな家族の光景を友達や近所の老夫婦が微笑んで見守っていた。











これが永遠の別れの挨拶とも知らずに…






「ヒヒィーン」



馬だけが何かを察したように悲しくいななき、

冷たい春の風がそっと駆け抜けて行った。