仏様やお経の名前を唱える時、その名前の上に南無と付ける。南無はサンスクリット語のnamasを音写した言葉であり、「敬う」という意味である。サンスクリット語においては日常的な言葉であり、インドやネパールなどで挨拶に使われる「ナマステ」はnamasに「あなたに」という意味のteを付けた言葉である。
 namasを漢語に翻訳した際に「帰命」という言葉が当てられると、その漢字の字義から命をかけて救いを求める、全てを任せるという意味が生まれた。それに伴って、南無は元のnamasよりも宗教的な言葉となった。
 本来仏教において仏様の位置付けは、私達が目指す目標であり、人間とかけ離れた存在ではない。しかし、時代を経るにつれて、人間とは別格の超越的な存在へと変わった。そうした変化が南無とnamasの意味合いの違いに表れているのかもしれない。