魔法の杖を振る者の物語 77話
月野原綵映
ぼくたちは再びセンメルヴェイス邸に向かう険しい森の道を進んでいた。
昼間でも濃い霧に覆われて視界の取れないこの森だったが、もう既に日は落ち暗闇がぼくたちの歩みを遅らせる。
4月とはいえ、御殿場の夜は冷えこむ。
ガチガチと凍てつく手で掴む魔法の杖の光が海中電灯の役割を担ってくれている。
片手で杖をかざし、昼間同様はぐれないよう残された手で互いの上衣を掴み足を滑らせないように慎重に歩を進めていく。
ちょっと気を緩めれば湿った土に足を取られる。
急坂に差し掛かると、一旦それぞれの上着から手を離して木の枝を頼りに、急な坂を這うように進む。
暗い中、見分けがつかず、折れた枝を掴んで危うく道から滑り落ちそうにもなる。
「うわぁ」
「ひかるくん、大丈夫?」
昼間同様いやそれ以上に、ぼくはもう既に幾度となく前を歩く優日と心音ちゃんに助けられている。
完全に出来杉くんキャラから、のび太くんキャラに路線を変更しつつある。
それもそうだ、そもそも、『なんでも良くできるひかるくん』なんて必死の努力の賜物だったのだからね。
優日の部屋から、ここねちゃんがいつのまにやらゲットしていたメルくんの電話番号とLINEを使って、メルくんと連絡を取ろうと試みた。
が、それはただより不安を増長させただけだった。
全く返信がない。
「まだ連絡ないよね?」
心音ちゃんがiPhoneを取り出して確認する。
「ない」
「才川先生は、天才なんだから大丈夫だよ」と優日。
「それに、片山先生がついていてくれているし、まあちょっと頼りない感じではあるけど」と心音ちゃん。
「それにほらここには魔女学長も桑名先生もいるしさ」
優日が言葉を重ねる。
「ねえ、それはそうと、俺たち迷ってないよね?」
3人が同時に立ち止まる。
「ほんと、それ!」
つづく