恐怖。
それが僕と父との共有事項。
「パラノーマル・アクティビティー」。
観た。
先日実家に帰ったときに父と二人で。
制作費100万円程度でタイタニックに並ぶ興行収入を得た恐怖のホラー。
若いカップルが新居に越して以来、毎晩起こる怪奇現象。
寝室に設置したカメラが夜毎とらえた恐怖の超常現象(パラノーマル・アクティビティー)とは…?
うえーん!
怖いよー!!
深夜の丑三つ時から観始め(なんでこんな時間に見たのか…)、
恐怖の現象が発生する度に親父と静かに顔を見合わせた。
「うん…、分かってる。
今のは怖かったね、怖かったね、怖かったね。」
って感じで。
このときほど親父と気持ちを通い合わせたのは初めてかもしれない。
「恐怖」は偉大だ。
なぜなら、これほど分かりやすく、共有しやすい感情はないぞ!
映画を見たのは実家の一階。
親父の部屋も俺の部屋も二階にある。
映画を見終えた後、親父は先に二階に上がっていった。
「階段上がるとき、あんまり足音を立てるなよ。
それと、二階廊下の電気は点けといてくれ。」
と言い残して…。
ちょっと待て。
一階に取り残された俺はどうなる?!
なんか知らないけど窓の外がやたら気になるんですが!??
俺も寝るか、と階段を上ろうとするが
最初の一歩が踏み出せない。
階段を上りきったところに何かいるんじゃないか
部屋のドアを開けた瞬間に
何かこの世のものじゃないモノと鉢合わせてしまうんじゃないか…!
という意味不明な恐怖が全身を包み身動きがとれん…。
結局、居間に戻り
消えたテレビに映る自分の影に大げさにビビりつつ、
電灯を全開にして、寝た。
朝起きて日光を浴びたときの安堵たるや如何に。
しかし、改めてDVDのパッケージを見て戦慄する。
「『それ』は、それを恐怖する者の周りに集まるのだ。」
やめてくれー!!
映画の「悪役史」に新たな名前が、恐怖と、鳥肌とともに刻まれた。
クエンティン・タランティーノ監督の最新作「イングロリアス・バスターズ」。
第二次世界大戦中のフランスで大量のドイツ兵士を惨殺し、
ナチスを恐怖のどん底に叩き落した特殊秘密部隊
「イングロリアス・バスターズ」の活躍を描いたフィクション映画である。
日本での公開はもうとっくに終わり、僕は昨日DVDで初見。
映画自体はそうでもない。まあ面白いといった感じ。同じ監督の「レザボア・ドッグス」や
「キル・ビル」を見たときのような斬新な感動はなかった。
ただし敵役のナチス将校、ハンス・ランダ大佐は別。
怖い。
とにかく怖い。
この大佐、冒頭のシーンでいきなり登場するのだが
小柄で物腰は柔らか、礼儀も正しく、笑顔を振りまきつつミルクなんか美味しそうに飲んじゃったりして
一見したところ人畜無害。
しかし…
実はフランス国内に潜伏したユダヤ人を見つけ出し、抹殺するのを専門にした残虐な冷血漢なのだ。
しかも、発見し殺した数の多さから「ユダヤ・ハンター」の異名で呼ばれ恐れられている。
あ~~怖かった。何回も鳥肌立ったわ。
カワイイ笑顔とつぶらな瞳。
そんな外見なのに
何なの、その殺気。
10分間くらいのシーンで、パイみたいなお菓子を美味しそうに食べながらひたすら談笑。
目が笑ってないよ、目が笑ってないよ
演じるドイツ人の役者、クリストフ・ヴァルツがとにかく上手い。
物を食べる、タバコを吸う、歩く、呼吸する。
全ての活動に狂気と美しさを込め、観客の目を釘付けにして離さない。
すごかった。ブラピ、完全に食われてます。
このフィルムを支配していた。
タランティーノ監督は役者のアップを多用する。
役者の感情が効果的にダイレクトに伝わる(上手い下手も同時に…(笑)。
その手法が一層ランダ大佐の怖さを引き立てていた。
観終えた後、興奮してネットでいろいろ調べてたら
今年のアカデミー助演男優賞受賞ですと。
まあ、あれだけやりゃあ当然だ。
もう主役といって過言ではないもん。
映画の悪役にはロマンが必要だ。主役以上の。
そいつがどんなに悪い奴か分かっていても
魅了されずにはいられない。
それが「悪役」だ。
ハンス・ランダ大佐にはそれがある。
一見の価値あり。