変なタイトルになりました。
今日は、独り言の昔話です。


もう30年も前の話。反抗期真っ只中の私は、あるおばさんに出会いました。
友達の家の向かいの家で、一人暮らししているおばさんでした。小学生の私からしたら、おばあさんと言ってもいいかな?くらいの年齢に見えてました。

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おばさんの家には、児童文学の本が、棚いっぱいに並んでいて、本好きだった私は、友達と一緒に頻繁に通って、居座って、本を読ましてもらってました。

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いつも訪ねると、穏やかな物腰で迎えてくださって、本棚に囲まれた部屋の真ん中のテーブルで、一人一人に果物やお菓子、ジュースをのせたお盆を置いてくださって、食べながら読む。帰るまで読む。と、ただそれだけの幸せな時間をプレゼントしてくださってました。

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おばさんは、心臓が悪くて、子どもを産むことができないから結婚はしなかったとのこと。当時の私は、思春期ど真ん中、大人なんて嘘ばっかりの汚い生き物…なんて、思ってた時。「おばさんが子どもの頃、女学校に上がるには、髪を伸ばしてお下げ髪にしなきゃいけないって決まりだったの。それがなんだかとっても嫌でね、進学前に自分でバッサリ髪を切っちゃったの。それは怒られてね、入学するときは全然届かない髪を無理やりお下げにして行かなきゃならなかった」と笑いながら穏やかに話してくださったのが今でも残ってる。大嫌いな大人の中で、特別な大人だった。星の王子さまが大人になったら、きっとこんな人なんじゃないかって思ってた。

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私が漫画も好きだって言ったら、次に行った時、「小さな恋のものがたり」っていう漫画がずらーっと並んでた。恋に憧れる小学生は夢中で読んでた。

小学校を卒業するとき、おばさんは手紙をくれた。ちゃんと覚えてないけど、乙女の時間は短いから、精一杯楽しんで…というような事を書いてくださってた。

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中学生になった私は、部活も始めて、新生活の楽しさで、すっかりおばさんの所には行かなくなった。しっかりさよならを言った訳でも、ありがとうを言った訳でもなかったと思う。子どもって、そんなもんだよね。

子どもを産んでから、よくおばさんを思い出すようになった。どうされてるんだろう。もう一度会ってお礼が言いたい。あなたは特別な大人だったと伝えたい。実家に帰った時、子どもを連れて、おばさんの家の前を通ってみた。表札は、苗字は同じだったけど、下の名前が男性のものに変わっていて、家もリフォームされてるようだった。私には、チャイムを鳴らしてみる勇気が無かった。

そして、時々思い出しながらも、時はどんどん過ぎていった。

先日、突然おばさんのその後の情報を急に耳にすることになった。家族のいなかったおばさんは、数年前に近所の人たちにお世話されながら天国に逝かれてた。お葬式も近所の人たちで行なったと。そして、家には本当にたくさんの児童本が残されていて、今、◯◯(おばさんの名前)文庫として町の子どもたちに残そうという話が出ているとのこと。

心臓が悪かったけど、おそらく80歳くらいまで生きておられたんだな。近所の方にも愛されておられたんだろうな。あれから、また違う子どもたちが通ったりしてたのかな。私は、お礼を言い忘れたままだ…


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小さな恋のものがたりは、今でも私の愛読書で、おばさんの家で読みおわった続きの巻から買い足していってた。高校時代はお小遣いから。大学時代はバイト代から。就職してからも結婚してからも出産してからも、ずっと楽しみに読んでた。おばさんの訃報を知る、ちょうど1ヶ月程前、この漫画も最終巻となった。私にとっては、偶然過ぎる偶然の穴ボコだ。


もしおばさん文庫ができたなら、私が読んでいた本を探しに行こう。小さな恋のものがたりの初めを探しに行こう。そして、届かないけどありがとうを言おう。


読んでくださった方ありがとう




Saho