先週雨の週末に読んだ桐野夏生『ポリティコン』と『優しいおとな』。


桐野夏生さんはずっと読んでいるけれど、『ポリティコン』は冗長な

感じが否めず中だるみしたのが残念。


作品に共通するのは社会の大きな事件を題材に小説に仕立て上げ

たまるでノンフィクションのような小説。

1ページ目から引き込まれというより捉えられてしまう感覚で、いつも

ドキドキしながら一気に読んでしまうのだけれど今回は入り込めず。


ヒッピー時代に祖父が作り出したユートピアを引き継いでにっちもさっ

ちもいかなくなる男と、脱北にかかわった母が行方不明になり一人に

なってしまった美少女の話。


過疎化が進むかつてユートピアだった村には癖のある人物がたくさん

いて、それぞれを際立たせているのはさすが。

群像劇はこの方の得意とするところ。

アルトマンの映画と共通している


どちらもハッピーエンドでは終わらない。人間のエゴ、心の底にある醜

い部分を描いて読んでいると落ち着かない気持ちになってしまう。

けれど、ラストではいつもこのどうしようもな主人公たちが愛おしくなる。


今回もそれは同じ。生き抜くためには何でもやる救いがたい男だけれど、

最後にはなぜか優しい気持ちで応援すらしたくなってしまってる。

桐野さんて方はものすごく愛情深い方なのでしょうね。


次回作にまた期待します。


『優しいおとな』はポリティコンのあとに読むと清涼剤の様な本。

近未来東京で生きる男の子のサバイバル小説。

こんなのもありなのね。時間があるときにはいいかな。