6月29日 15時頃
この日も、母と一緒に陽橙の病院へ向かいました。
病院に到着し、ICUに入ります。
陽橙の部屋へ向かう途中、ICUの看護師さんが声をかけてくださいました。
「陽橙くん、本日で新生児期が終わりですね!」
そう言われて、私ははっとしました。
全く気付いていなかったのです。
今日で新生児卒業なんだ。
そんなことすら忘れてしまうほど、それどころではありませんでした。
「そうなんですね。私、完全に忘れていました……。覚えていてくださったんですね。ありがとうございます」
ただでさえ多忙なICUの看護師さん。
そんな中で、陽橙の新生児期がいつまでなのかをしっかり覚えていてくださったことが、とても嬉しく感じました。
陽橙のことを、ちゃんと見てくれているんだ。そう思えました。
さらに看護師さんは、
「勝手ながら身体測定をさせていただきました!これ、よかったら!」
そう言って、陽橙の身体測定の結果を、かわいく書いてくださった画用紙を渡してくださいました。
その心遣いがとても温かく、心から感謝の気持ちでいっぱいになりました。
新生児期最後の記念撮影
陽橙の部屋に着き、陽橙のお腹の上にその画用紙を置いて、記念撮影をしました。
「陽橙、新生児期最後の日なんだって。
全然一緒にいられてないね、ごめんね。
こんな大切な時期に一緒に過ごせなくて、ごめんね」
写真を撮りながら、そんなことを思いました。
普通の赤ちゃんなら、家で温かい布団にくるまれて、家族と幸せに過ごしているはずなのに。
陽橙は、ずっと病院の冷たいベッドの上で、管や点滴につながれたまま。
このままずっと続くのだろうか。
そう思うと、胸が締め付けられ、悲しくなりました。
少しずつ見せてくれた反応
陽橙の様子は、見た目では昨日と大きく変わっていませんでした。
母は病室に入り、陽橙の姿を見た瞬間、涙を流していました。
初めて目の当たりにする陽橙の姿に、ショックを隠しきれない様子でした。
「陽橙、おばあちゃん来てくれたよ」
そう伝えながら、そっと手を握りました。
すると、陽橙が動きました。
昨日よりも、確実に動いていました。
まるで“もぐもぐ”と何かを食べているかのように、口元を動かしています。
口には管が入っているので、とてもぎこちない動きでしたが、それでも一生懸命に口をパクパクさせてくれました。
もっと動いてほしくて、ほっぺたに触れます。
「陽橙、動いているところ見せて」
そう声をかけながら、ほっぺをつんつんしたり、頭を撫でたりしました。
すると、腕を少し持ち上げたり、あくびのような動きを見せてくれました。
とてもぎこちない動きですが、それでも動いてくれることが、私にとっては何よりも嬉しく、感動で心が満たされました。
小さな希望を胸に
母は私にこう言いました。
「これは……動いている方なの?」
全く動かず、管と点滴だらけで、ただ眠ったままの姿を見ていない母には、あまり動いていないように見えたのだと思います。
それでも、少しずつ増えていく陽橙の動き。
これ以上、悪くなることはない。
明日には、もっといいことが待っている。
そう思える希望がありました。
がんばれ、陽橙。
そんな気持ちを胸に、病院を後にしました。
