ここのところ、私と彼の関係はどんどんギクシャクしているように感じていた。

彼のメールは相変わらず冷たく、彼とよくメールをしているというSさんとは、どんどん仲良くなっていた。

それを目の当たりにするたびに、どうしようもない嫉妬にかられた。
Sさんのことは大好きなのに、彼とのことはどうしても寛大になれなかった。
二人とも、そんな気持ちが全くないのはわかってる。
でも、わかってるからって、平気かって言われたらそんなわけない。

でもしょうがない。

Sさんは頭が良くて仕事もできるし、キレイだし、彼のボケにいいツッコミを入れることができる人だ。
私と話すよりそりゃ面白いだろう。

私はどんどん卑屈になっていた。

仕事も出来ない、彼に好きになってもらえる魅力もない、話もつまんない。
いいとこないじゃん。。。



彼を好きになってから、私は自分が大嫌いになっていた。


もうそんな状態は限界だった。

彼の気持ちがわからなくて、苦しくて苦しくて。

それに追い打ちをかけるように、彼の態度は日に日に冷たくなっていく。

私と話す時は機嫌が悪そうなのに、その直後、Sさんと楽しそうに笑顔で話す彼を見て、本当に腹が立った。
私が何をしたっていうんだろう。

それなのに、週に一度は会館に誘われる。

その時だけは態度が柔らかくなる彼。


やりたい時だけ優しくするわけ?ふざけないでよ。

でもそれを拒否できない私がいる。情けない。


好かれてるかどうかもわからないまま抱かれるのは、もうこれ以上無理だった。


もう本当に諦めよう。

彼の冷たい態度に振り回されるのはもうごめんだ。

彼の気持ちが私にないなら、これ以上私だけが想うのは辛すぎる。

今までは、彼に好きになってもらえるように頑張ろう、って思ってた。
でもこれからは、諦めるように頑張ろう。

時間はかかるかもしれないけど、少しずつ、彼を薄めていこう。



そんなある日、私も彼も残業でかなり遅くまで会社に残っていた。

夜中の2時頃、

「帰らへん?」

とメールが来た。

ちょっと迷ったけれど、結局「帰ります」と返信し、いつものコンビニで待ち合わせて一緒に歩き出す。


「メシどうする?」

彼が聞く。

こう聞くってことは、彼が食べていこうかどうか迷っている時。

「んー、もうこんな時間だし、しんどそうだからいいですよ。帰りましょ」

「もうハラ減ってんのかどうかもわかれへん…」

かなり体調も悪そうだった。


コンビニに寄って、彼はおにぎりとサンドイッチを買う。
私と食べて帰らない日は、タクシーの中で食べることが多い。

私と彼はタクシー乗り場に向かって歩き出す。


途中、私は彼の手を握る。

彼がちゃんと握り返してくれる。


やっぱり私はまだこの人が好きだ。

諦められる日なんて来るんだろうか。

タクシー乗り場が近づき、彼が「先乗ったら?」と言う。


ちょっと寂しいけど、疲れてるんだししょうがない…。
私はバイバイのつもりでキスをしようとした。

すると、彼が耳にキスをしてきた。


おや??

その気だとは思わなかったから、私もちょっと戸惑った。

でも、結局のところ、彼に触れたくて仕方なかった。


タクシーから少し離れて、私と彼は抱き合ってキスをする。

彼がまた耳にキスをする。

久しぶりのキスに、私はすっかりとろけていた。


私と彼は、前にも一度行ったことのある物陰に向かった。


夜にHするのは久しぶりだ。
だからか、いつもよりも興奮した。
ここ数日のわだかまりがどうでも良くなった。


こうしている時だけは、彼は私のもの。


終わったあと、私はどうしても彼と少し話をしたかった。


彼に抱きついて言う。

「今度こそ本当に諦めようと思ったのに」

すると、彼は「ごめん」と言った。


「なんで謝るの」

謝られたことがむしろショックだった。



私は、もう何百回と彼に問いかけたくて、ずっと言えなかったことを聞いた。

「私のことどう思ってるんですか?」

わざと明るく言った。

前に聞いた時は「わからない」といわれた。

あれから3ヶ月。
今回はなんて言うだろう。


「うーん。。。」

彼は、何も言おうとしない。

彼がこういう会話を嫌っているのはわかっている。
けど、このままにしておくには私の精神状態はとっくに限界を超えていた。

「お願い。聞くのこれで最後にするから」

彼は私を見る。

その言葉の意味は、彼もわかっていただろう。


ここで、彼の本音を聞けなかったら。
私への気持ちがやっぱりなかったら。

私はもう諦めるしかない。

それがわかった上で、彼はなんていうんだろう。

またわからない、って言うのかな。


彼の返事は、意外といえば意外だった。

「いいと思ってる」

「え?」

いいと思ってる???なんだそれ???

ほんとにこういう時は曖昧に言葉を濁すんだから…。

「どういう意味?」

「いいと思う」

また繰り返す。

なんとなくのニュアンスとして、言いたいことはわかるんだけど、私が聞きたいのはそんなことじゃない。
彼だって私が聞きたい言葉はわかってるはずなのに、言わない。

やっぱりダメなのかな。

「好きですか?嫌いですか?」

「嫌いじゃないよ」

そんなのわかってる。

「じゃあ好きですか?」

「うん…、好きやね」

え!!!!
好きって言ったよ今!!!!!


「それは、ちゃんと女の子として、ですか?」

「うん」


私がこの1年間、ずっと聞きたかった言葉。


「もっかい言ってください」

「なんでやねん!嫌や」
彼は笑っていう。

「お願い、もっかいだけ!」

「あかんあかん、帰ろ帰ろ」

彼は笑うだけで言ってくれなかった。

私はしつこくもう一度言う。

「…好きですか?」

「うん」

それだけで十分だった。

もちろん、あんな聞き方をすれば「好き」としかいえないだろう。

でも、家族をものすごく大事にしている彼にとって、奥さん以外の女に「好き」だなんて言葉を口にするのはものすごく勇気がいっただろう。


現に、今まで何度聞いても言ってくれなかった。

きっと彼も、ここで言わなかったら私が離れて行くのがわかったんだろう。

それだけで、私は十分だった。


「私も大好きです。やっぱり、諦めるの止めます。」

あーぁ、言っちゃった。

結局元の木阿弥。


でも、この日の私は幸せだった。
やっと聞けた、彼の「好き」っていう言葉。

苦しくて、辛くて、何度泣いたかわからない。
それでも、やっと報われた気がした。

簡単に「好き」だなんて言葉を口にする人じゃないのは私が一番良くわかってる。
だからこそ、その言葉の重みは意味がある。

まあ、あの態度は好きな女に取るもんじゃないだろう、とは思うけれど。。。

少なくとも、この1年が報われた気がした。


どこまでいけるかなんてわからない。

明日にはやっぱりまた辛くなってるのかもしれない。

それでも、とことん行ってやる。
一生懸命、彼を好きでいる。

報われる恋じゃないのはわかってる。

でも、好きなんだからしょうがないや。