TBSドラマ『空飛ぶ広報室』 | さむたいむ2

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今日も元気で

 

2013年TBS「日曜劇場」で全11回放送された『空飛ぶ広報室』を一気に観ました。

実によく出来たドラマです。最近このようなドラマが作れないのは何故でしょうか?

 

原作は有川浩。2010年電子書籍サイト「エブリスタ」で発表。2011年3月11日「東日本大震災」が起きたため「あの日の松島」を最終章とし、2012年幻冬舎より刊行しました。有川浩を調べたら『阪急電車』『フリーター、家を買う』『県庁おもてなし課』など映画やテレビドラマで私も結構はまったものです。さらに浩という名でてっきり男性かと思っていましたが実は女性だったのです。そういえば女性目線でなければ描けない部分が多いのです。

 

『空飛ぶ広報室』をすでにご覧になった方にはわかりますが、航空自衛隊広報室での話です。

正式には「防衛省航空幕僚監部総務部広報室」です。自衛隊というと陸上、海上、航空とありますが、それぞれ広報室がありますが、最近では「ブルーインパルス」が脚光を浴びています。先日新垣結衣の結婚報道でも即座にハートマークの航空写真を祝福メッセージとして贈っていました。

 

原作では広報室の空井大祐2等空尉(綾野剛)が主人公ですが、ドラマでは帝都テレビの情報局ディレクター稲葉リカ(新垣結衣)がヒロインとなっています。たぶんこれは新垣人気もあったでしょうが、自衛隊が主となるといろいろ問題がありという配慮があったので。いち放送局が自衛隊の広報活動を行うのはどうかという批判が起こる恐れがあります。このドラマでも多くの規制ある自衛隊の立場も考えながら、実にバランスよく描いています。

 

自衛隊は「専守防衛」のための集団です。軍隊と同じ装備を持ちながら有事のみ防衛のための行動が許されています。また災害時にあっても人命救助までが許されていて民家への立ち入りは禁止されています。また阪神淡路大震災の時は自衛隊の出動が遅れました。当時まだ自衛隊の救助要請は依頼されなければできない決まりがあり、警察や消防のように自主的には行えなかったのです。これを機に東日本大震災では自主的な救助活動が認められたのだそうです。

 

また自衛隊内における女性の地位ですが、防衛大卒の柚木典子(水野美紀)が千歳基地の高射隊へ初の幹部としてなったのですが部下から見下されています。男社会のなかでの女性の苦悩を描きます。円形脱毛症になるほどのいじめにあうのです。それを見兼ねた鷺坂広報室長(柴田恭平)が彼女を広報室へ招きました。また鷺坂は稲葉のことを「いなぴょん」と命名します。それは勝気なテレビ局員の稲葉の性格を見抜き、個性派揃いの広報室隊員たちに溶け込ませるため「因幡の白うさぎ」をモジって受け入れました。彼の気配りがなかったら空井と稲葉の仲も危うかったのでしょう。

 

稲葉は報道局に憬れて帝都テレビに入社したのですが、強引な取材で問題を起こし情報局へ移動になった経緯があります。空井もブルーインパルスに憬れてパイロットになったのですが、目標手前で交通事故に遭い膝を故障します。そのためパイロットの資格を失います。失意の空井は広報室で稲葉に出会い、新たな夢を追いかけます。

 

空井の愚直なほどの性格が稲葉とのロマンスをかなり困難にしています。稲葉の勝気さが上手く嚙み合わないのです。ここれが一番の見所かもしれません。

 

戦争放棄をうたう憲法で本来に否定されるべき自衛隊が「専守防衛」でその存在を守り抜くという苦慮。車両同士の交通事故ひとつでさえ「記者会見」を必要とします。公的存在だから仕方ありません。ただ不公平さを欠いた報道にも晒されます。稲葉と空井も巻き込まれました。

 

最後のブルーインパルスの飛行がすべてを解決します。この最終章は感動的でした。