今回は、宿泊なしです。

朝6時に出発、夕方6時に帰宅しました。

松江市の島根県立美術館

「松本俊介・回顧展」へ行ってきました。

ツレと二人で、「ゆっくりプラン」をたてていたんですが、ツレの友人が毎週月曜日にしか

お休みを取れないご夫婦、是非観たい、ツレの解説も聞きたい、一緒に行きたい。

ということでで、あっさり、じゃあ4人で行きましょう。

日帰りです。

まあ、ワタシは絵を鑑賞して、美術館の近くの「おおはか屋」という鰻屋さんで鰻を

食べること、和菓子を買ってかえることが目的ですから、それさえ出来れば観光は

地図を見なくても行けるほど何回も行きましたので、強行ですが後ろ座席で爆睡です。

 松江は京都、金沢と並ぶ菓子どころで、茶の湯文化が市民の中に根付いた所です。

子供の頃から、お茶を習っていたし、家でもおばあちゃんがいつもお稽古を見てくれて

いたので、自然とそんなに窮屈に考えないで、今でもお茶とお菓子をいただく習慣が

ありますが、当時は自分の中の三大嫌なことのトップでして、どんなに美味しいお菓子を

いただいても、「この子は手が大きいから品がない」と毎回言われたことが、嫌な言葉

ですが、トラウマになって、人前で手を広げることができません。

 大好きな「路芝」「若草」「瑞雲」など色々買ってきました。そこの和菓子やさんの

包装紙の絵はあの有名な東北のゴッホと呼ばれた画家「棟方 志功」です。

だから、ここの包装紙は本のカバーに使っています。

 さて、俊介の絵画のことですが、これは以前に記事に書いたので、詳しくは書きません。

でも、俊介の若い若い芸術への情熱が、観るワタシ達の心を動かさずにはおきません。

戦争という激動の時代の中、夭折した芸術家は数しれません、俊介は聴覚を失っていた

ので、戦争へは行ってませんが、妻と子供を疎開させても、あの東京で一人、戦火の中

失われた都市を絵に残しています。何度も何度も同じ建物や橋を描いています。

 そして、俊介は自画像も沢山描いています。

会場へ入るとすぐに、最初に描いた自画像が一枚、幼さの残る学生姿の自画像です、

その前に、地元の小学生が何か、書いています。

子供がいると、声をかけずにいられないワタシです。

のぞいて見ると、「一番好きな絵はどれですか?」と言う質問に

その子は「自画像」と書き込んでいます。課外授業の宿題でしょうね。

「これが一番好きなん」

「ふん」うなずきます。

「全部観たの?」

「ふん、2階も皆観たけど、これが好き」。。。2階は常設展です。

「そう、自画像だね」

「作者は誰と書いたらいいんですか?」と行きずりのおばさんに質問

  ☆ 一番好きな絵はどれですか?

  ☆ その作者はだれですか?

  ☆ なぜ、その絵が好きなんですか?

 あー彼は自画像の意味がわかってない。

「自分で自分の顔を描いたのが自画像っていうんやで」

「じゃあ、本人と書いたらいいんですか?」と彼

「うん、そうやな」

「ありがとうございました」

ほんとに、あの自画像が好きだったんでしょうか?なぜ好きになったのか聞けばよかった。

その自画像から始まって、よくもこんなに集めたと感心するほど絵が展覧してありました。

ご一緒したご夫婦は、ゆっくりと回ってらっしゃいます。

 ツレはいつも、ゆっくり観ません、うますぎて嫌になるんですって。

そりゃしょうがありません。ワタシも言うわりには早く回るほうです。

俊介の妻や子供に宛てた手紙を読んだり、彼の残した言葉を読んだり、彼は文章もうまく

かなりの読書家で、アトリエの写真の後ろの本棚には、ニーチェや宮沢賢治などが見え

ました。妻と二人で同人誌などを作ったりもしています。

1階の俊介展を観て、ワタシ達は2階の常設展へ。。。

立派な県立の美術館ですので、かなりの絵を持っています。

三岸 節子や藤田 嗣治、西洋画家も有名どころが揃っています。

どれも、見慣れたそれぞれの画家独特のタッチにうなづきながら、回ってましたら、ふと

足が止まりました。岸田 劉生の自画像です。

たぶん、亡くなる前の若くない頃の自画像です。

さんざん、俊介の自画像を、20点は見たすぐ後です。

「やっぱり、参りました」

そんな感想が本心です。

首刈りと呼ばれるほど、劉生は人を見れば顔を描いていたそうです、そして誰もいない

時は自分の顔を描くほど、自画像が好きだった?好きだったのかな?

自分の絵は鏡を見ながら描くのでしょうか、たぶん。

だからじっと目を見つめています。じっと見つめています。

そこには画家の魂が映し出されていると思うのです。

画家は必ず自画像を描きますが、抽象であれ具象であれ、画家の全てがそこに

現れているのでは?自身を表現しているのではないでしょうか?

そんな感想をいだきながらも、お腹は空きます。どんな時でも、このお腹は。

 絵が好きなご夫婦は鰻が嫌いです。ワタシ達は数年ぶり振りの「おおはか屋」まで

送っていただき、値段が倍になった鰻重を、絵のことをすっかり忘れ堪能いたしました。

さすがに2段重(鰻5切れ入り)はちょっと無理、3切れ入りの上鰻重をいただきました。

すごく上品なお味ではないんですが、炭焼きの香ばしい香とふっくら油が落ちた鰻が懐かしい

味なんです、肝吸いの肝も新鮮で抵抗ありません。

 夕方、宍道湖の夕日を見ることなく、2組の夫婦は帰路につかねばなりません。

後ろ座席の嫁二人は普段の睡眠不足を解消するかのごとく、行き帰り爆睡です。

気の毒なのは運転手二人、何度もトイレ休憩と言っては、コーヒーを飲んでいました。

このご夫婦の旦那さんの方はいわゆるトバシヤでして、リュック・ベッソンの「TAXI」の

スピード狂のタクシードライバー・ダニエルと、ツレはちょっとマヌケ(左右もわからない)

な刑事エミリアンのコンビといった感じです。30年のお付き合いです。

それにしても、ご苦労様でした。

 帰り路、三次の「一福」で3時に、4人は新蕎麦を一枚つづぺロリでした。

ちょっと出かけると、普段よりお腹が空くんですよね。

心もお腹もいっぱいになった、秋深い一日。

ご馳走様でした。

やっと記事に書けました。写真もいっぱい撮ったんですが、記事が長いので載せません

でした。美味しい鰻の写真なんて毒でしょう。

でわ、おやすみなさい。