本日の読書感想文



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木の上の軍隊

井上ひさし


あらすじ 

沖縄県伊江島で終戦を知らないまま2年間、ガジュマルの木の上で生き延びた2人の日本兵の実話に着想を得て書かれた作品です。  太平洋戦争末期の沖縄・伊江島。激しい戦闘で島は壊滅的な打撃を受け、多くの日本兵が命を落とします。宮崎から派兵された上官の山下少尉と、地元沖縄出身の新兵・安慶名セイジュンは、敵の銃撃から逃れるために、一本の大きなガジュマルの木の上に身を隠します。
彼らは、援軍が来るまで木の上で耐え忍ぶことを決意しますが、やがて日本は敗戦を迎えます。しかし、外部との連絡手段を絶たれた2人はその事実を知ることができず、木の上で“孤独な戦争”を続けることになります。
極限状態での樹上生活は、飢えや恐怖、そして故郷や家族への思いと向き合う日々です。立場や考え方の異なる2人の間で、徐々に葛藤や対立が生まれていきます。それでも彼らは、互いに支え合いながら、必死に生き抜こうとします。
この物語は、戦争という過酷な状況下で人間の尊厳や価値観がどのように揺れ動くのか、そして戦後も続く人々の心の傷を深く問いかける作品です。



グッときたポイント

 戦争の不条理と滑稽さ
戦争の悲惨さを描きつつも、ガジュマルの木の上という閉鎖的な空間で繰り広げられる、上官と新兵のやりとりにはどこかユーモラスな要素があります。戦局が悪化し、絶望的な状況下でも、人間は食べ物や故郷の話で笑い、ささいなことで言い争う。この悲劇の中にある日常的な滑稽さが、かえって戦争の不条理を際立たせています。
人間の尊厳
終戦後も木の上で“戦い”を続ける2人は、外部から見れば滑稽で哀れに見えるかもしれません。しかし、彼らは日本兵としての誇りや、故郷に生きて帰るという希望を捨てずに生きています。食料を分け合い、互いを励まし、そして時には故郷の思い出を語り合う。極限状態の中で、人間としての尊厳を保とうとする彼らの姿は、観る人の心を揺さぶります。
時代の証言
この物語は、単なる戦争の悲劇を描くだけでなく、沖縄という場所がたどってきた歴史、そしてそこに生きる人々の記憶を深く掘り下げています。本土から来た兵士と、沖縄出身の兵士が、それぞれ異なる立場で戦争を体験し、戦後を生きる。その葛藤と和解を通して、現代にも通じる大切なメッセージを伝えている点も、この作品の大きな魅力です。
このように、シリアスなテーマを扱いながらも、人間味あふれる描写と独特のユーモアで観客を引き込む点が、多くの人の心を打つのではと思います。



こんな人におすすめ 

歴史や社会問題に関心がある方
沖縄戦や日本の戦争史に関心がある方には、特に響く作品です。戦争の悲惨さを描きつつも、沖縄という場所の特殊な歴史的背景や、そこに生きた人々の感情を深く掘り下げています。単なる歴史の記録ではなく、人間の葛藤や尊厳を問いかける物語として、新たな視点を与えてくれます。
人間ドラマやユーモアが好き方
戦争という極限状態に置かれた二人の兵士のやり取りは、時に滑稽で、時に胸を締め付けられるほど切ないものです。立場や性格が異なる二人が、木の上という閉鎖的な空間で互いにぶつかり合い、支え合っていく姿は、普遍的な人間ドラマとして多くの観客の心を打ちます。シリアスなテーマの中にもユーモアを見出す井上ひさしさんの作風が好きな方には特におすすめです。
演劇や舞台鑑賞が好きな方
「木の上の軍隊」はもともと舞台作品として書かれており、限られた空間での登場人物たちの心情の機微を巧みに描き出しています。俳優たちの演技のぶつかり合い、セリフの一つ一つに込められた意味を読み解くのが好きな方には、深く楽しめる作品です。戯曲として読むだけでも、その巧みな構成に感銘を受けるのだと思います。