子供の頃、父方の祖父が見事な螺鈿の大正琴をくれた。

とても気に入って、たまに弾いていた。

でも、父方の祖父は亡くなってしまったので、それが形見になった。


ある日、母に言われた。


『おばあちゃん(母方の祖母)が大正琴が欲しいって言うから、あげたわよ。』


何故、事後報告で許されると思ったのだろう。


だいたい、祖母がそんなものを弾いているところなど、見たことが無い。


流石に返せと言ったが…

母は、何処に行ったかわからないなどと言って返さない。

ふざけるな。あれは、私がもらった形見だ!


せめて父方の誰かにあげるならわかるけれど、何で縁もゆかりもない母方の祖母にやったのか。

これも、一生、恨むだろう。



かつて、私が上京して一人暮らしをしていた時にも、似たようなことがあった。


母が実家にあった私の電子ピアノを、勝手に母方の祖父にあげたのだ。

母方の祖父は、指が動かない。

ピアノなど、弾ける筈がない。


それでも、流石に上京先には持って行けないし、母が代わりにキーボードをくれると言うので我慢した。


母から送られてきたのは、鍵盤ハーモニカくらいしか鍵盤が無い、子供の玩具だった。

何がキーボードか。これで何が弾けると言うのだろう。


仕方がないので、自腹で数万円のマトモなキーボードを購入した。


後に、母方の祖父が死んだので、ピアノは返すと母が言った。

明らかに何かを零したような跡があり、幾つかの鍵盤が鳴らなくなったピアノが返された。


ただの粗大ゴミじゃん。

何も弾けないし、何なら処分代の方がかかった。


そしてある日、母が

『あんたのキーボード、マンガ倉庫に売ったわよ。』

と、千円札を一枚、手渡してきた。


あの人は、頭がおかしいのだろうか。

本気で理解できない。


こんなにも私を蔑ろにしてまで、自分の両親(母方の祖父母)を優先してきた母だが、祖母の認知症が酷くなった今は、祖母の愚痴ばかりを延々と私に聴かせようとしてくる。


なるべく、自分の部屋に閉じこもるようにしているが…

大概にしろ。私は母のサンドバッグではない。