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【社説】07年南北会談にいたのは韓国の大統領だったのか


6月25日(火)10時32分配信


 国家情報院(以下、国情院)は24日、2007年に行われた故・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領と故・金正日(キム・ジョンイル)総書記との南北首脳会談当時の対話録を与党セヌリ党所属の国会情報委員らに提供したが、野党・民主党は受け取りを拒否した。この首脳会談で西海(黄海)上の南北の境界線、いわゆる北方限界線(NLL)について、盧元大統領がこれを放棄する趣旨の発言を行ったとする疑惑が、昨年の大統領選挙以来、今なお大きな問題としてくすぶり続けている。今月17日に民主党が「NLL放棄の発言は与党と国情院が共謀してでっち上げたもの」と主張すると、セヌリ党は国情院を通じて対話録の内容を確認したとして、民主党の主張に反論した。しかし最近になってあるメディアが「盧元大統領はNLLを領土線と発言した」と報じたことを受け、国情院は対話録の全文を与野党に提供する決定を下した。

 この文書はこれまで2級機密とされてきたが、国情院は最近になって一般文書に再指定したため、野党の反発に加えて法的にも争いの火種として浮上した。大統領の言動はいかなるものでも国民に公表されるのが原則だ。ただし世界の多くの国は首脳会談の記録に関しては、20-30年ほど過ぎてから公表する。これは直後に公表された場合、国家間の最高レベルの外交である首脳会談の機能そのものに問題が生じ、またその外交的な影響が国益にマイナスになるとの判断に基づくものだ。しかしそれは「首脳会談での大統領の発言は国益を守るためのもの」という前提の下で成立する原則だ。また「大統領は国家元首として守るべき品位を当然守っているはず」という信頼があってこそ成立する原則でもある。

 国情院が作成した対話録を見ると、盧元大統領が問題の首脳会談の席で守ろうとした国益とは果たして何だったのか、大韓民国の国家元首として最低限の品位を守っていたのか、これらの点を深刻に疑わざるを得ない。盧元大統領の発言のうち、会談前からあらかじめ準備していたもの以外は、国益や品位などどこからもうかがい知ることができないものばかりだったのだ。

 首脳会談で金総書記はNLLについて「われわれ(北朝鮮)が主張する軍事境界線、あるいは南側(韓国)が主張する北方限界線、これらの間にある海域を共同漁労区域、あるいは平和水域として設定してはどうか」とする北朝鮮側の一貫した戦略目標を主張していた。北朝鮮が主張する軍事境界線はNLLよりもはるかに南側だ。そのため金総書記の言葉通りにすれば、「平和水域」などというものは、今も北朝鮮が主張する海域をそのままにして、百パーセントNLLの南側にのみ設定するものとなる。また西海5島(西海沖のNLL近くにある五つの島)は南北共同管理区域上に浮き上がってしまうのだ。

 金総書記の提案はまさに国境線を譲歩するよう求めるものだったのだが、これに対して盧元大統領は「同じような考えを持っている。金総書記様と認識が一致した。NLLは見直さねばならない」と述べただけでなく「私が非常に核心的かつ最も大きな目標として考えていた問題を、金総書記様が今認めてくださった」とまで言ってのけた。盧元大統領はさらに「金総書記様がご提案された西海共同漁労平和の海。私も(現状に)息が詰まりそうだが、(金総書記の提案を)南側がそのまま受け入れて解決してしまえばよいのだが」とも言っていた。韓国戦争(朝鮮戦争)を引き起こした敵側の前で、韓国国民の血で守られてきた国境線を韓国の大統領自ら「南側がそのまま(北朝鮮の要求をそのまま)受け入れて…」と発言していたとは、到底信じられないことだ。


 その一方で「南側でも軍部は何もしようとしないが、今回軍部が改変され彼らの考え方が変わり、平和協力について前向きな態度を示している」とも述べ、韓国軍をも自らが思い通りにしたと言っていた。これもまさに韓国の国軍に対する完全な冒涜(ぼうとく)だ。

 世界のどこの国の大統領が、目の前の現実的な脅威となっている敵の勢力の前で、自国の国境線を「おかしな形で出来上がった怪物」などとおとしめ「国際法的な根拠もなく、論理的な根拠も明確でない」などと言えるのだろうか。盧元大統領は「(NLLの見直しは)絶対に憲法の問題ではない」とも述べた上で「いくらでも自分が進めることができる」と金総書記に断言していた。金総書記が「双方が(NLL関連の)法律を全て放棄すると発表してもよいのではないか」と提案すると、盧元大統領は「いい考えだ」「次の大統領に誰がなるかは分からないので、後戻りしないようくぎを刺しておこう」とも言っていた。

 NLLは休戦協定締結以来、20年以上にわたり北朝鮮も何ら異議を挟まないまま認められてきた領土線だったが、北朝鮮はこれを突然紛争化しようとした。これに対して韓国の大統領が首脳会談で自らNLLの根拠を否定し、海上の境界線を南側に引き下ろそうとする北朝鮮の戦略を受け入れていた。この首脳会談の席で大韓民国は、誰も守ってくれない孤立無援の状況に等しかったわけだ。その席には本当の「大韓民国大統領」や「大韓民国国軍統帥権者」はいなかったと言わざるを得ないのだ。

 盧元大統領は金総書記の前で、韓国の国民について「NLLという言葉が出るだけでハチの群れのように騒ぎ出す」「詳しい内容も知らない人間たちが神経質になって本当にうるさい」「いくら説明しても話にならない」と侮辱した。金総書記がNLLの見直しに対する韓国側の反応について尋ねると「反対すればネット上でばか者扱いされるでしょう」と答えた。首脳会談で自国民をここまで下品な言葉を使って侮辱する国家元首が他にいるという話は聞いたことがない。

 盧元大統領は2007年、任期満了を5カ月後に控えた時期に南北首脳会談を強行した。当時は誰もが「それでも北朝鮮に行くのなら、核問題についてはぜひとも話し合ってほしい」と願っていた。しかし盧元大統領は金総書記に「南側では今回、核問題について確実に話をするよう求める声が多い。しかしそれは状況の変化を願う人間たちの主張だ」と言った。北朝鮮に圧力を加えるために米国が行っていたバンコ・デルタ・アジア(BDA)銀行の口座凍結については「米国の過ちであり、不当であることは分かっている」「一番の問題は米国だ。自分も帝国主義の歴史が世界の人民の前で反省されることがなく、今日もなお覇権的な野望を露骨に示しているとの認識を持っている」という趣旨の発言をしていた。


 2007年は北朝鮮がすでに最初の核実験を行った後だった。その後も北朝鮮は何ら態度を改めることなく、大韓民国を火の海にすると脅迫している。米国はその脅威を阻止してくれている国の一つだ。その米国に対して「南側の国民を対象にした世論調査で、最も憎い国として米国を挙げた人がかなり多かった。また東北アジアで平和を破壊する可能性のある国として米国は1番に挙げられていた」と述べた人物が、他でもない大韓民国の大統領だった。盧元大統領は金総書記に「(北朝鮮の核問題で)北側の立場で米国と戦ってきたし、国際舞台に出て北朝鮮の立場を擁護してきた」「米国との関係を完全に断ち切り、米国に『あなた方(米国)は間違っている』とはっきり言えなかったのは、米国側が会談の会場を後にして出ていってしまうと思ったため」と述べた。北朝鮮での急変に備えた「作戦計画5029」についても「自分が破棄した」と金総書記に自慢した。ここまで来ればもう言うべき言葉も見当たらない。

 盧元大統領は「金総書記様と金大中(キム・デジュン)大統領は1回握手をしたが、(それだけで)南側経済は数十兆ウォン(現在のレートで10兆ウォン=約8400億円)を稼ぎ、今回自分が境界線を越えると、その写真だけで南側はおそらく数兆ウォン(1兆ウォン=約840億円)を稼いだ」「任期が終わってから金総書記様にぜひ(南側に)来てもらって会いましょうとは言えないが、平壌には行きたい時に行けるように(してほしい)。特別な歓迎はなくても(よい)」などとも発言していたようだが、これは盧元大統領自身だけでなく、大韓民国全体を侮辱する言動だ。

 盧元大統領は日本人拉致問題についても「日本側の主張を聞いてみたが、何を言っているのかよく分からなかった。オーストラリアの人間がうまく分析した本によると、日本は言い掛かりをつけている(と書いてあった)」と発言した。どこの国でも自国民が拉致されれば、それはその国にとって最大の人権問題になるのは当然のことだ。第三国の懸案になぜ横やりを入れるのか、また拉致した側をなぜ擁護できるのか到底理解に苦しむ。

 この対話録の内容は「外交文書の公表」という重みを超えるほど衝撃的なものだ。今回の問題は、今後、誰が大統領になっても、またどのような政権が成立しても、首脳会談で大韓民国を侮辱するイデオロギー的な偏向や、自らの精神的なレベルによって国益と国民のプライドを勝手に傷つけることができないようにする一種の規範としなければならない。誰であってもこの規範から外れた言動を取った場合、歴史の影に隠れることは絶対にできないという国家的な教訓とすべきだろう。

 民主党は国情院が作成した対話録ではなく、大統領の記録物として登録されている対話録を公表するよう提案した。大統領記録物が、国情院の作成したものと内容や文脈などが一致するのかどうか、この点も確認する必要がある。今回、かつての韓国の大統領がもたらした国内の混乱は、与野党という次元にとどまらず、また一切の疑惑を払拭(ふっしょく)し、全てを白日の下にさらして決着をつけねばならない。


     (Yahoo!ニュース より 朝鮮日報 配信)



【社説】NLLは実質的な領海線だ=韓国

6月26日(水)14時31分配信

 2007年、盧武鉉(ノ・ムヒョン)-金正日(キム・ジョンイル)の南北首脳会談の対話録全文が公開されるにつれ、西海(ソヘ、黄海)の北方限界線(NLL)論議が再熱している。昨年の大統領選挙期間中も最も熱いイシューであった。セヌリ党側はずっと盧武鉉元大統領がNLLを放棄したと攻撃したし、李明博(イ・ミョンバク)政権の関係者の一部もこれに同調した。民主党側は対話録全文を見ればセヌリ党の主張が事実でないということが分かると対応してきた。

 対話録によれば、色々な部分で、NLLを放棄する意志があることで表れるような余地のある節々がある。一方、盧元大統領がNLLを放棄したと決めつけるのも難しくする一節もある。とにかく国民的なコンセンサスとかけ離れるように、事実上、領海線として固まっているNLLの性格を変化させようとする意図を持っていたことは適切ではなかった。

 対話録によれば、盧元大統領は会談中ずっとNLLを領海線として守ろうとする意志を明らかにしなかった。むしろNLLについて否定的な認識を何度も示した。南北軍事会談で「NLL問題を議題に入れろ…妥協しなければならないことではないのか…それは国際法的な根拠もなく論理的根拠も明らかではないことなのに」という表現が代表的だ。また「NLLというものが変にできてしまい、何か怪物のようにむやみに触れないようなものになっていますね」といった表現もある。首脳会談前にも韓国内でNLLについて「領土線というのは国民を誤った方向に導くもの」と話したことの延長線だ。大多数の国民の考えと距離が離れた不適切な表現だ。

 一方、対話録には盧元大統領が金正日の前でNLLを放棄したり譲歩したりするという意志を直接的に明らかにした一節は表れていない。むしろ「NLLをもってこれを変えるとかどうするかではなくて…それは昔の基本合意の延長線で今後協議していくことにして」と話した一節もある。西海境界線をめぐって南北が葛藤する問題を解決するために「共同の繁栄のための、そのような海の利用計画をたてることによって敏感な問題を未来指向的に解決していくことができないか…」という説明がまさにつながる。結局、盧元大統領は“西海平和協力地帯”を建設することによって間接的にNLLをめぐる南北の葛藤を解消しようという提案をする考えであったものとみられる。

 しかし対話録に表れた盧元大統領のNLLについての認識自体は問題がある。NLLは1953年の停戦以降これまで、西海上の韓国、北朝鮮の境界線として作用している。半世紀近く韓国国民はNLLの南側の海を生活の根拠地であり領海として認識してきた。そうしたことが10年余り前から北朝鮮が問題提起をして1、2次延坪(ヨンピョン)海戦や韓国哨戒艦「天安(チョナン)」爆沈、延坪島(ヨンピョンド)砲撃などの挑発を行ってきたのだ。

 このような状況でNLLの性格についての変化の問題を北側と議論するということは、あまりにも性急なことだった。北側がNLLを実質的な境界線だという点を認めるようにして、これを基に問題を解決していく努力が優先されるべきであった。領土主権の保全、西海5島の住民の生存権、首都圏防御体制など大統領が守らなければならない義務を勘案する時、当然そうするべきであった。

 対話録には、NLL以外にも盧元大統領が特有の赤裸々な話法で多くの問題発言をした部分が目につく。米国を帝国主義として認識するといった発言や、自主国防をめぐる発言、日本の拉致問題についてよく理解できないといった発言が代表的だ。基本的に盧元大統領の世界観や価値観が、韓国社会の一般的な水準と違うということは広く知られている。そんなことを勘案しても、問題発言をむやみに吐き出したことは国の品格と国益を傷つけるものだった。

 私たちは、首脳会談の対話録を公開することが国益に有害だという立場を明らかにしたことがある。それにもかかわらず対話録全文が公開された場合、その是非を決めることは避けられない。結論は、盧元大統領の平壌(ピョンヤン)への歩みに多くの問題点があったということだ。しかし同時にこの数カ月間の論議は行き過ぎだった。これ以上消耗的な政争はたたんでしまわなければならない。ただしNLLは実質的な領海線であり、韓国と北朝鮮の間に恒久的な平和が定着する時までは確固として守らなければならないということを、もう一度強調する。与野党がこのような合意とともに論議を終えることを促す。


     (Yahoo!ニュース より 中央日報 配信)




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