高校に入って2年が過ぎた。
めまぐるしく去っていく四季は、現在春を指している。春といっても、北海道は未だ寒い。溶けきっていない雪の塊がごろごろ転がっていて、桜の開花なんてほど遠い。
まだかな、まだかな、私は春を待っている。
出会いの春を、待っている。
雛森舞子の朝は5時に始まる。
ジリジリと煩い目覚まし時計を片手で乱暴に止めた。
眠気眼を擦りながら、ゆっくりとした動作で起き上がる。母はそんな私をよくナマケモノそっくりだと笑う。
ぼんやりとした思考回路のまま洗面所に向かうと、鏡に映る自分の寝癖にげんなりする。女子力、という単語が頭の中に浮かんできて、ああもう、さらにげんなり。
女の子は可愛くなくちゃいけない。
誰が言ったか、この言葉。可愛いを手にするというのはどうにもこうにも努力と忍耐と根性が必要だ。周りの女の子はそれを妥協しない。純粋に凄いと、思う。
中学までは手を抜いていた。まだ皆、化粧なんかより遊ぶ方が楽しかった。美を追求し出す子なんかがちらほらでてきたけれど、その方が浮いていた。
しかし、高校に入ってそれは逆転する。
手を抜く、それは価値が低い――女子とは常に他人を評価し合うもの。この2年で、十分に思い知った。
ヘアアイロンを温める。
熱が上昇するまでに時間がかかるので、この間に朝食を口に運ぶのだ。
母の作る卵焼きは、天下一品。これを食べなきゃ始まらない。口の中に広がるあまーいそれを、舌の上で存分に転がした。満たされる食欲に、右肩下がりだったテンションも回復していく。
「今日も美味しかった。ごちそうさま」
「お粗末さま。急いで支度しなさいよー」
「はーい」
そうして温まったヘアアイロンで、綺麗を手にすると同時に髪を傷めつける。真っ黒けだった天然パーマは、今じゃ傷んだおかげでかすかに茶色くなったストレートヘアへと変貌した。
顔を洗って、眉毛を書いて。
女子高生スイッチをオンにする。
鏡に映る自分は、確かに元の私より可愛いはずなのに。
どうしてこんなに、虚しいんだろう。
