兄ピートの他に、ルイスを更生させた英雄が、もう一人います。ルイスの妻シンシアです。戦後、ルイスは「過去の栄光」を忘れられず、第二の人生をスタートさせることができずに苦しみました。アルコールに溺れ、仕事に就かず、妻と赤ん坊に暴力を振うようになります。その時に妻シンシアが、ルイスを伝道集会に連れていき「改心」「更生」させることに成功しました。しかし、2011年にシンシアが亡くなると、また、ルイスの悪い癖が出てきます。1956年の自伝と同じタイトルで、2003年に「作り話」をさらに組み込んだ新しい自伝を出版します。その後は、小説化、映画化へと進んでいきます。最終的に「英雄」(実際はロクデナシ)として祀り上げられ、一生を終わります。ルイスの実像を知るシンシアが生きていれば、ここまでのデタラメは許さなかったのではないかと思われ、残念でなりません。
ルイスの「作り話」によれば、日本人看守が、毎日「首を掻き切る」ジェスチャーをして「ルイスが斬首される」と脅してきたといいます。写真は、ルイスがTVインタビューで、日本人看守が行ったジェスチャーを示しながら、話をしている瞬間です。2003年版の自伝の中では「親指で首を掻き切る」仕草を行ったと書いています。この話もルイスによる「幼稚な作り話」です。「手刀、もしくは親指で首を掻き切るジェスチャー」というのは、完全に「米国式」です。当時の日本人の「斬首」のジャスチャーは「手刀で首の後ろをトンと叩く」形です。「あからさまな嘘を、得意になって展開」するルイスザンペリーニ。彼は、本当に深刻な虚言癖の持ち主なのです。
ルイスは、2003年に出版した自伝の中で、次のような内容を書いています。「日本軍が、9人の米海兵隊員を斬首で処刑した事実を、ある原住民が教えてくれた。その原住民は日本軍に仕えており、ルイスを知っているスポーツファンで、英語を喋れた」。見事に全て「デタラメ」です。まず、日本軍は原住民を安全な島へ移動させているので、原住民が日本軍に使われているなど、あり得ない話です。次に、原住民が英語を喋れるというのも疑問です。また、ラジオも新聞もない島で「スポーツファン」「ルイスを知っている」など、あり得ない話です。百歩譲って、ルイスを知っていたとしても、漂流で体重が半分に落ちてガリガリの姿を見て、ランナーとして活躍していたルイスを連想するなど、不可能なことです。ルイスの作り話というのは「幼稚すぎる」のです。嘘をつくにしても、もう少し「リアリティのある嘘」を期待したいものです。
ルイスは、漂流中、日本軍に救助され救われた後、クェゼリン島に収容されます。ルイスは、そのクェゼリン島が「処刑島」だったという「作り話」をしています。実際には、日本軍は「捕虜の処刑」など行っていません。クェゼリン島が「処刑島」などではなかった「生き証人」こそ、ルイスとフィリップです。彼らはクェゼリン島に送られても「処刑されていない」のです。彼らは身をもって、クェゼリン島が「処刑島ではなかった」事実を証明しているのです。アンブロークンでは「ルイスが有名人だったために処刑されなかった」という「作り話」がされていますが、それが事実であれば、有名人ではなかったフィリップは処刑されているはずです。また、ルイスもフィリップも、日本軍による「捕虜処刑」など、一回も目にしていないのです。にも関わらず「処刑島だった」「日本刀で斬首していた」という「作り話」を、自伝、アンブロークン、TVインタビューの中で繰り返しているのです。ルイスの虚言癖は完全に病気なのです。
1989年に米CBSで放映された番組の中で、ルイスは直江津捕虜収容所跡地を訪れました。そして、こう語っています。「直江津捕虜収容所で起こったことは、悲惨すぎて、今まで思い起こすことができなかった。でも信じてほしい。今日、ここを去る時から、決して忘れはしない」と。ここも笑える所です。「思い起こすことができず」に、どうやって「虐待者を許した」のでしょうか?。また「思い起こすことができず」に、どうやって、1956年に自伝で直江津捕虜収容所での出来事を書くことができたのでしょうか?次のサイトの最期のほうで、その映像が確認できます。https://www.youtube.com/watch?v=aEGL-wyz1yk