今から1年ほど前、私がまだかろうじて歩けてた時のほろ苦い体験の話です。
既に駅の階段の上り下りが難しくなり、歩くスピードも健康時の20%ぐらいまで落ちていました。
電車のつり革まで腕が上がらず、また手すりに掴まったとしても車両が揺れたときに体を支えるだけの握力もありません。
なので電車で移動の際は、いつも時間に余裕を持ち、優先席に座るようにしていました。
ある日、隣りに座っていた初老の男性から突然、
「おたくはどこか体が悪いんですか」と訊かれました。驚きましたが、
「はぁ、それが何か。。。」と答えると、
その男性は黙って彼の斜め前に立っている男性のかばんをアゴでで指しました。そのかばんにはヘルプマークが掛けてあり、私に話しかけた男性の表情には
“お前元気なくせにナニ優先席に座ってるんだ、早くあの人に席譲れよ”と言いたげな様子がありありとしていました。
「私も両手両足が不自由なもので。。。」と答えながらこの男性の手元に目をやると杖が見えました。
「そうですか、それは失礼。」と彼は言いました。
その後、しばらく何となく気まずい時間が流れ、私が下車する駅に着きました。
私は隣りに座る男性の熱い視線を感じながら、実際以上に足が不自由そうな歩き方で混雑した列車を後にしました。
ALSに罹患して初期だったこともあり、
「自分はまだ歩ける。まだ元気だ。」という意地みたいなものからヘルプマークを作っていませんでしたが、あの日ヘルプマークを身に着けていたら、あのようにお互い気まずい思いをせずに済んだのになぁ、と思った出来事でした。
(写真はイメージです)
