【大江戸こむらがえり】廃棒令
「たしかに。でも前から憑いてたぞ?その後ろの人」
「うん。それ背後霊な。しかも彼、同じクラスメートの仙次郎君ね。なまら生きてるよ」
「なんだ仙次郎かぁー。じゃあ修学旅行の写真とかに写ってたのも心霊写真じゃなくて仙次郎だったのかぁー。残念。」
「ぉいおい。仙次郎君、何を謝っているのだい?君は何も悪くないし、これからも全力で生きてくだざいな」
「そんなことよりさ。なんなのさ廃棒令って。」
「あー。なんていうか・・・ってか廃刀令おぼえてる?去年の夏ごろのさ」
「うっすらね。確か刀ってか、刃物全般持ち歩きできなくなった法律でしょ?
あれで全国の不良達が一斉に捕まったらしいね。まぁほとんどがナイフとか木刀とかが理由だったらしいけど、中には眼光の鋭さだけで捕まった人もいたらしいよ。鋭いだけに。」
「確かに。理不尽極まりないよね。家の向かいの助平先輩も心がナイフのように的な理由で通報されたらしいからね。まぁ通報したのは助平先輩の両親なんだけどさ。」
「いやな出来事だったね。」
「あぁ。でもさ、今回もまたあるんだよ。廃棒令ってのがさ。今度は棒がダメなんだ。スティック系ね」
「おい。それは生態系のバランスが崩れるのではないか?この下腹部のナニも立派な棒だろうよ。まずいよそれ。」
「まぁ冥土の先まで持ち歩く代物だからね。ようするに見せなきゃいいんだよ。公共の場とかでさ。」
「あぁーつまりその辺はうまくやれと。たしかに公共の場で見せびらかしたら廃棒令がなくても捕まるわな。」
「そういうこと。あと重大なのが電柱が無くなることかな。これもかなりまずいよ。電気が使えなくなるからね」
「それはキツイなぁ。幕府は代わりの対策を用意しているわけ?」
「一応用意しているけど、確か自家発電が有力だってさ。自転車使う感じさ。相当疲れるけどね。あと日常生活で発する静電気でどうにかしろとか。」
「静電気は無理だろ。まぁ最悪ペットショップで「ぴかちゅう」を買ってくるしかないな。なんか10万ボルトぐらい出せるらしいし。」
「あぁ「ぴかちゅう」ね。でもネズミだからね。抵抗ある人もいるんじゃないかなぁ?しかも前見たけど結構でかかったし。普通にリアルな動物だったし。」
「んー。」
続く
『今日の語り部』 1-B
※キャラクター
・横田 輝彦(よこた てるひこ) :*:・( ̄∀ ̄)・:*:
16歳 クラスは1-B組。身長175cm、体重58kg
語り部の創設者であり部長でもある。友人S君曰く「すべての根源はこの男にある」とのこと。
第1印象は派手な不良。サイドのツーブロックのカラーはピンク色。過剰妄想症候群という病を抱えてる。
・笹島 藤也(ささじま とうや) (´□`。)
16歳 クラスは1-B。身長169cm、体重54kg
語り部の部員であり副部長の座を気がついたら射止めてた災難者。
横田とは小学校からの仲であり彼の問題児的な行動にいつも連れ回されていた。
第1印象は少し地味な黒髪色白な普通の男子。
特技はムーンウォーク。友人Y君によると階段でも出来るらしいとの事。
・眞宮 優希奈(まみや ゆきな) о(ж>▽<)y ☆
16歳 クラスは1-A組。 身長159cm、体重★kg
天性の天然ぶりは生きた人間国宝級。
しかしその容姿は抜群で一部の男子からは1級品のアイドルとして「MAMI★YUKIを守る会」という
親衛隊なのかファンクラブなのかよくわからない方向性の団体が結成されいるという話も。
語り部員も例外ではなく副部長の笹島も彼女に好意を持つ一人である。
第1印象は森の妖精、女神、絶対神、など様々らしい。
髪型は黒髪ツインテール。学校指定のニーソックスを愛用している。←マニア曰くここが重要らしい。
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前半↓
http://ameblo.jp/sa2-tree-key-unit/entry-10139637980.html
『今日の語り部』 1-B
「・・・。眞宮さん?いい加減泣くのやめないかなぁ・・・? なんか第三者的な目でみると非常にまずい光景っぽいという・・・。」
まるで僕が二人を泣かせているように見える・・・鬼畜者を見る周りの目が、既に僕に対しての鬼畜的表現になるんじゃないかと、意味不明な解釈をして、さらに頭の中を混沌とさせていた。
「う、うっ、うぇーーーん、笹島君の嘘つき!我輩は魚類である。って前いってくれたのにぃ!うえーん;」
へなへなと座り込んで、泣き喚く彼女の言動が、さらなるカオスに突入した。
「んなこと言ってねぇぇぇぇぇ。我輩は魚類である。・・・・えぇえ!?なんのカミングアウトだよ!もっと大事な告白あるだろ俺!ってか、んなこと言ってねぇぇぇぇぇ!!」
吼えた・・・懇親の勢いで吼えた・・・直感的に口に出した。この間、たぶん2秒くらいだと思う。
そして、このタイミングを待ち望んでたという笑みで横田が僕の肩を、「ポンッ」と叩いた。
「嘘はいけないね。笹島よ、お前は根っからの魚類だ。
なぜなら俺がそう感じたからだ。俺とお前は魚類。しかし魚類は喋ることは出来ない。相手に伝えたくてもそれが出来ない。そんな歯がゆいお前の感情を俺が彼女に伝えてやったのさ。なに、礼はいい。困ったときはお互い様だろ?」
その時の、横田の無理やりウィンクをしたような顔が僕の堪忍袋の緒を一瞬にして、ぶち切った。
「ォ・・・オマエカァー!!!そんでブゥルァァァァ!!!」
そう叫び、横田の左耳たぶとアゴの間に、強烈な僕の掌底が入った。
「グゥホアッ!!!ブワッ!・・・ズデンゴロン、ズザザザザ ー。チーン。」
3メールは吹っ飛んだか。二~三回転がり、そのまま横田は二度目の昏睡に入った。
「ハァ・・ハァ・・・。眞、眞宮さん?良く聞いてくれ・・・俺は魚類なんかじゃないんだ。そう・・・俺は、いや我輩は・・人gyぶへぇ!!!!???」
息を飲み込みながら僕は彼女に植え付けられた真相を、晴らさねばならなかった。
しかし、気づいたら彼女の姿が逆さまになっていた。
「へ?・・・人gy?」
・・・くそ!。と、まだ伝わりきっていない現象と、右ほほの痛烈なダメージに、思わず声を漏らした。
「・・・どうだい俺のドルフィンキックの味は?魚類の力!恐るべし!ハーッハハッハハ!」
どうやら彼は、超人的な回復力で昏睡状態から目覚め、僕に飛ばされた3メートルの助走を使い、僕の
顔面を目掛けてドロップキックみたいなのをしたらしい。
「ぅぐぐぐ・・・・横田・・・・イ、イルカは・・・哺乳類だぜ?・・・・ゲッホ・・・クハッ・・・」
脳震盪気味の頭からは、いつもの冴えない突込みが出てきた。
「な、なんですとぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?・・・・・つまり今までの俺の行動は全て偽りと化す・・・?!う、ぐはっ・・・無念・・・・ドサリ・・・。」
そう言って横田は、そのまま直立しながら後ろに倒れた。
まさか、こんな突込みが効くとはな・・・と僕は唇から滴る血をぬぐって、苦し紛れに微笑した。
「笹島くん・・・・あのね・・・ユキずっと勘違いしてた・・・笹島君の本当の気持ち伝わったよ・・・」
朦朧とする頭に、信じられない展開が流れ込んできた。
「え・・・ほ、ほんとうに!?伝わったのか!おれの本当の気持ちが!!!???」
意識を集中させ、確信を改めて認識するように僕は問うた。
「うん・・・さっき笹島君が教えてくれたじゃない?」
・・・伝わったのだ。僕は、生まれて初めて奇跡という現象を目の当たりにした。
「うん・・・そうなんだ。俺は魚類じゃない。そう・・・我輩は人げ」
改めて彼女うに植えつけられた、妄言的観念を撤回した・・・・いや、したかった。
「人魚なんだよね♪」
僕には見えた。彼女の背景には、ばら色の花畑が爛々と咲き誇っているのを。
同時に、その場に倒れこんでいる横田の不適な笑みも一緒に。
「そう・・・俺は魚類でも人間でもない・・・B組みのマーメイドとは俺のこと・・・ってえぇーーーーーーーーーーー!!!?????」
ここからは、無心―――
「だってさっき言ったじゃない?ふふ。我輩は人魚って★
なるほど!だからエラ呼吸できないのか!アハッ♪ユキの早とちりん坊♪
あれ?もうこんな時間!それじゃあバイトあるからまたね!
あ!クラスの皆には笹島君が人魚だってこと内緒にしとくから安心してね♪
じゃあ バイバーイ♪タッタッタッタ・・・・・(軽快な足音)」
はっ、と気づくと呆然と立ち尽くす僕の横で、横田が気持ちよさそうに寝ていた。
僕は、そんな安堵な笑みを浮かべている彼が羨ましくもあり、それ以上に湧き上がる殺意を押さえ込みながら、彼の顔に、二度目の掌低を食らわした。
人を殴ったときの、自分への、コブシのダメージを減らすための掌低が、
逆に痛みを倍増させた。
身ではなく、心に向かって。
『今日の語り部』 1-A
『今日の語り部』 1-A
帰りのHRが終わり、教室の掃除当番も下校に向かう足音を聞きながら、
僕らは廊下の端でスラムダンクのイラストの入った敷物に座り込んでいた。
そして徐に僕の隣にいる横田がYの字になって思い切り立ち上がった。
「それでは語り部を始めたいとおもいます。・・・起ィー立ッ!」
横田の一声はこの渡り廊下の、端から端まで均等に響き渡った。
それと同時に周りの生徒が下校に向かう足を止めた。
「おいおい;いきなりデカイ声を出すなよ・・・ほら皆見とるぞ。しかもキーリツって何だよ。キリーツだろう普通。」
その光景と空気に耐え切れず僕は平常心を装って、横田につまらない突っ込みをしてみた。
「ぃやぁ~ホントお前は細かいな。まるで片栗粉の様なキメ細かさだよ。水でも飲んであんかけにでもなったらどーだ?」
相変わらず絡みにくい発言をしてくる友人である。
「横田よ。そんな話しを本気で語るお前の頭が既にあんかけ状じゃないか?いい具合にとろけてそうだぜ全く。」
しかしその絡みに平然と対応している僕も周りから見たら、十分絡みにくい人物ではないかと自分で解釈し、鼻で笑うようにため息をついた。
「ぅるせーなぁ。語り部なんだから当たり前だろ!しかも俺は部長
だぜ?一応お前も副部長としての自覚をもっと持って欲しいところだよ。」
僕の平然とした対応に少し不機嫌になった横田が、数回うなずきながら全く予想だにしていなかった妄言とも言える言葉を口にした。
「・・・ちょっと待て。いつ俺がこの部活に入ると言った?しかも副部長とはどういうことだよ?!俺はただお前に放課後に用事があるから一緒に待ってろと言われたからいるだけだぞ!」
横田と自分に言い聞かせるように僕は事の有様を説明した。
「ったく、お前こそいきなりデカイ声だすなよ・・・ほら皆見とるぞ。お!しかもあそこにお前の初恋の君というヤツがなぁ。」
そんな僕の言葉を被せる様に、そして何かを見つけると同時に、非常に反感を買うだろうな不敵な笑みを浮かべながら階段付近に指をさした。
「ちょ、ちょ馬鹿!何言ってんだよ聞こえるが・・・って、い、いやぁ・・・ってやばい・・・こっちに来てるぞ!!」
その指の先には、中学校の頃から密かに想っていた女性が笑いながらこちらに不器用そうに走ってきた。
「うろたえるな友よ。なにも恥じることはない。我らはただ教室の前の廊下で敷物を敷いて部活動をしているだけではないか?健全なるこの姿に彼女もさぞかしときめくことよのう。」
僕の心中をよそに、横田はまるで悟りを開いた老子のような口調で語りだした。
「そ、そうか・・・部活やってる男子はモテるっていうし・・・
ってアホかぁ!何処の世界に廊下に敷物を敷いている生徒がいるんだよ!校内ピクニックとかありえんだろ! って・・・」
場の流れとか関係なく、こんなにも素な気持ちで、ノリ突っ込みをしたのは生まれて初めてだと、感動する刹那に、お洒落な雑貨店から香る飴のような匂いと共に、彼女のそれまた甘く全身をくすぐる様な声に僕は美術のモデルになったかのように静止してしまった。
「やほ♪・・・クスッ 二人して仲良くなにしてるのぉ~?
ふふ。もしかしてピクニックとかぁ~?」
正直この時は、完全に思考回路が停止していたので、彼女の甘い声は全く僕の耳には届かなかった。しかし横田が顔の全パーツを中心に集めるような表情をしたとき、僕は一瞬にして我に返った。
「あぁん?お前この神聖なる部活動がピクニ、!。モゴ!モゴ?」
僕は横田の首を腕でクロスさせ、口元にある右手で顔の中心部を覆った。
「? いきなりどうしたの?横田君が息できなくて苦しそうだよ?」
彼女は心配そうに両手を胸にあてながら言った。僕は彼女のそんな顔が耐え切れず酷くがむしゃらな気持ちになっていた。
「大、大丈夫!こいつ何ていうか・・・そうそうエラ呼吸できるんだよ!エラ呼吸・・・わかる?あの・・・金魚とかがやる・・・ははは。」
なんとか彼女を安心させないと、という気持ち一心で放たれた言葉がこの様である。どっからこんな発想が出たかは全く検討がつかない。
「へぇ~♪すごいなぁ、横田君はエラ呼吸できるなんて何かカッコイイなぁ★笹島君も出来るの?エラ呼吸?みてみたいなぁ~」
そんな僕の意味不明な言葉を彼女は本気で納得してしまった。しかも自然と矛先が僕にシフトしたことは、改めて予想だにしていないことであった。
「へぇ?!俺?・・・俺はエラ呼吸はちょっと・・・。」
まともな返答が見つからなかった。だって、そもそもまともな質問ではないからだ。
「え~・・・;出来ないんだぁ・・・笹島君なら出来ると前から思っていたのに・・・残念だなぁ・・・ユキちょっと悲しぃ;」
どっから湧き出てきた期待なんだと思いながら、しかしその期待を裏切るという行為は、彼女の想いを裏切るということと等しいと直感的に解釈した僕は、解決策を見出すべく、助けを呼ぶことにした。横田!
「ぅお!ちょ、ちょまて!泣くなよ・・・:ぅえぇ??おい!横田ぁ!起きろって!伸びてる場合じゃないぞぉお!」
横で御丁寧に春巻きのように敷物に包まりながら、のびている横田を馬乗りして、数回頬をグーとパーで殴った。
「・・・ゥグ。お前よくも人を魚類扱いしてくれたな。それと同時にエラ呼吸している自分を想像していたら何か胸に熱くなる衝動をだな・・・。」
ぼんやりとした目だが、その奥に何か輝かしいものを発見したと言わんばかりの瞳で、横田は目覚めた。
「うるせえ!それより大変なんだよ!、ま。眞宮さんが泣いちまって俺どうしたらいいか・・・;」
そんな夢見がちな横田の胸倉を掴みながら、必死に現状の解決策を縋った。
「お前まで泣きそうでどうするんだよ。この光景みられたら何か勘違いされそうだぜ。まるで俺が戦地から無事帰還したみたいな感じだぜ。・・・俺は帰ってきた。ただいま。おふくろ!おやじ!うぉー!」
横田は途中から涙ぐみ、最後には、廊下の窓ガラスからこぼれる夕日に向かって、敬礼しながら号泣しだした。
「・・・お前も泣いてどうするんだよ。なんで廊下で敷物の上で
生徒が三人号泣しなきゃいかねえんだよ!」
僕は客観的な現状を把握し、改めて極めて不味い状況だと気づいた。
「うぉーん!・・・む。確かにお前の話は一理あるな。さてはお前は頭脳派プレイ好きか?たまんねーぜ相棒!これからもよろしくワトソンくん」
途中まで泣いていて、その後は自身満々な笑みを浮かべる友人をみて、僕は久しく感動していた。同時にこんな男に小学校から付き合ってきた自分にも、賞したくなるくらい感動した。
※後半に続く
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