朝になれば、少し落ち着いたのか、

それとも薬の効果なのか、

少し熱が下がって気分もよさそうだった。


「さあ、行こうか・・。」

「うん。」

時間を決めて

 

早めに家を出ようと車を玄関先へと移動。


しばし、玄関先から見える自分の部屋。


「すぐに帰ってこれるよ。」

「そうだね。」


そんな会話をして、車へ乗りこみ

病院に向かったんです。

病院に着けば前もって連絡をしていたため、

担当の看護師さんが迎えてくれて

コロナの検査が始まる。

結果が出るまで1時間半近く、

横になりたいだろうけど病棟にも病室へも入れない。

まあ、コロナ禍が収まりかけていた時だったしね、

仕方のない事で、

ましてや熱がでてしまったからね

当然と言えば当然の検査です。


「きついね・・。」

「うん・・。」


小さいクッションを持って来ていたので

それに頭をもたげて小休止中。


「○○さん、お待たせしました。

OKでした、病室へ行きましょうね。」

「はい。」


ようやくだ~~~、

きつかったね・・。

労わることもままならなく

いそいそとエレベーターに乗り込み、

病棟へと向かう。

やはり、あの強化ガラスが

私たちと娘を引き裂くように

で~~~んと構えているように見えた。


「じゃ、ありがとう、行ってくるね。」

「うん、また来るからね。」

「・・・・うん。」


寂しそうな後ろ姿。

私が治せるものならやってあげたいが

そんな知識のかけらもない私が

地団太踏んでもそれはひっくり返らない現実。


「帰ろうか・・。」

「だね・・。」


主人と車に乗って自宅のある町へと帰って行った。

途中、娘から連絡が入り、

コロナの検査の時に採血もしていたので

それの結果の電話。


「あのね、熱は別に何でもなかったみたい。」

「えっ?」

「病気の数値は特別悪くなったとかじゃなくて、

なんか、緊張とか疲労感から来たもんじゃないかだって。」

「そうなの?」


ビックリ・・した~~~!!

なんでも久々に帰れると思ったら嬉しくて

中々寝付けてなかったらしく

少し寝不足気味もあったみたいで、

先生に呆れられたようでした。


人騒がせなやつだ・・・

でも、考えてみれば半年以上

家に帰れていなかったんだものね、

保育園児の遠足前の心境だったのかも・・。


何はともあれ、何事もなかったので

一応は胸をなでおろして

無事に自宅へと帰って行った私達でした。




4クール目が終わり、1週間くらいした頃でした。

着替えをもって、いつも通り

1階の荷物受け渡し場所までいき、

病棟に電話をかけてもらえば

荷物をもって降りてきた娘。


いいのか?

まあ、今日は日曜日で人も少ない時間。

久々の娘の様子はすこぶる元気そうだ。

買い物ついでに降りてきちゃったと

何食わぬ顔で言う子・・。

 

まあ、重装備での装いだが・・・

 

ほんと危機感がないというのか、

 

でも、私の方も会って声が聞きたかったんで

 

嬉しかったんです。

娘の方も

 


「会いたかったし、話しもしたかったから。」

「そっか・・。」

以心伝心?かも


1階のコンビニのそばにある談話が出来る

椅子に腰かけしばしの会話。


「もしかしたら、近々、帰れるかも。」

「ん?」

突然の申し出に

 

治ったのかと錯覚してしまう。

 

だが、

 


「卵子凍結の話があるの。」

「ああ・・」


一日だけ帰ってきたときその話もしたな・・

 

焦ることもないけどいずれにしても

 

関わることもあるかもと聞き流していた事。


「まあ、ここの婦人科の先生が

提案してくれたんだけど、

担当の先生も調べてくれるって。」

「そうなんだ。」


卵子凍結・・・


地元の県ではそれが出来るのは

1軒しかない。

 

いずれと思っても気になって調べていたんです////。

でも、この県では3軒ほどある。

ここの病院も産婦人科はあるが

凍結とか専門の科がある病院ではない。

でも、その病院とは提携しているから

データーなどは送れてできるみたいだ。


「そっか、じゃ、詳しく調べてみないとだね。」

「うん、パンフレットとか読んでみるわ。」


ほんと数十分の時間、楽しかった会話。


この時、娘が前だけを見る姿が報われればと

願わずにいられなかった私でした。