「御社」と「貴社」の使い方
ビジネスパーソンなら使う機会の多い、「御社」、「貴社」という言葉。どちらも相手の会社を敬う言葉だが、どのように使い分けるべきか知らない人も多いのでは? そこで、その二つの言葉の違いや使い方のポイントを解説する。
ポイントは「書き言葉」か「話し言葉」か
大学講師・作家、就職コンサルタントとして多くの講座や著書を持つ唐沢明氏によると、話し言葉では「御社」、書き言葉では「貴社」と使い分けるのが一般的とのこと。
「会話の中で『貴社』を使うと、『帰社』と聞き違えることがあるので、面接や電話応対など話し言葉では『御社』を使います。手紙やメールの場合、親しい間柄なら『御社』でもいいのですが、一般的なひな型では冒頭に『貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます』という定型文が使われることが多いため、『貴社』を使うことが多いようです」(唐沢氏)
自分の会社を指す言葉には「弊社」、「当社」がある。こちらも一般的には、話すときに「弊社」、書くときに「当社」と使い分けることが多いようだが、唐沢氏によれば「あくまで一般的に、ということで、どちらを使っても差し支えないでしょう」とのこと。
一般企業(会社)ではない場合は、それぞれに適した呼称を
相手、もしくは自分の勤務先が“会社”ではない場合の呼び方について伺うと、「たとえば銀行なら、勤めている人を『社員』ではなく『行員』と呼ぶように、『御行』、『貴行』と呼ぶことが多いようです」と唐沢氏。「ただ、これも『御社・貴社』では絶対にいけないかと言えば、それほど厳密に考えなくてもいいかもしれませんね」とのこと。
ほかにも、省庁などは「御省・貴省」や「御庁・貴庁」、学校は「御校・貴校」、お店は「御店・貴店」、社団法人や協会などの各種団体は、それぞれ頭に「御」や「貴」を付けて「貴法人」、「御協会」、「貴団体」など、それぞれに適切な呼称があるので、マナーの一つとしてそのことも心に留めておくといいだろう。
あまり形式にとらわれすぎると相手と「壁」を作ってしまうことも
ビジネスパーソンとしてきちんと敬語が使えること、相手を敬う気持ちやマナーを忘れないことはもちろん大切なことである。ただ、「あまり敬語というものにとらわれすぎても、かえって相手との間に壁を作ってしまうこともあるかもしれません」と唐沢氏。「たとえば会話の中で、あまり『御社』、『御社』と繰り返すと堅苦しい雰囲気になりますし、それによって反対に仕事がやりにくくなってしまう可能性も」(唐沢氏)。そういう場合は「御社」の代わりに「○○社さん」、「弊社」の代わりに「私ども」など、別の言い方をしてもいいとのこと。
あくまでも相手への礼儀は忘れずに、相手との親密度や場の雰囲気、状況に応じた呼称の使い分けができる臨機応変さが大切ということなのだ。
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「御中」と「各位」の違い説明できる?
仕事上の手紙やメールに使う「御中」は広く使われているが、「正しい使い方を説明しろ」と言われたら、怪しい人も多いのではないだろうか。「御中」のほかにも、「様」、「宛」、「行」、「各位」など、ビジネス文書を作成する上で必要な敬称はたくさんある。そんな敬称の常識について専門家に詳しく聞いてみた。
手紙の宛名の下などに付ける「皆さま」という意味の言葉
今回お話を伺ったのは、大学講師・作家、就職コンサルタントとして多くの講座や著書を持つ唐沢明氏。「『御中』は、手紙の宛名の下に付ける単語で、グループ名や会社名の下に付け、個人名の下には付けません。『皆さま』という意味で、『人事部御中』なら『人事部の皆さま』という意味になります」(唐沢氏)。「様」と「殿」は相手を敬う敬称で、唐沢氏によると昔は「殿」のほうが格式の高いものと考えられていたが、近年では反対に「様」のほうを目上の人に使うケースが増えていると言う。「行」、「宛」は、返信用封筒に記す自分の名前の下に付ける言葉で、返信する人はそれを消して「様」と書き直すのがマナー。「行」は個人あて、「宛」は団体あてに使うものである。また、「各位」は宛名ではなく文書の冒頭に使う言葉で、複数の人に同時にあてる場合の敬称であり、「気付」は住所の下に付ける“その場所にいる人宛て”という意味の言葉。「御内」は、やや目上の人に対して“あなた”と呼ぶときの敬称とのこと。連名にする場合は、「地位の高い人を先に、二人の名前を書いてそれぞれに『様』を付けます」(唐沢氏)。
うっかりミスに注意! 手紙や文書は必ず読み直しを
敬称の間違いでよく見られるのが、「部長殿」、「各位様」、「○○社御中○○様」などの使い方。「部長」などの役職名はそれだけで敬語表現と考えられるため、「部長殿」では二重敬語になってしまう。「その場合は『○○部長』もしくは『部長の○○様』としましょう」と唐沢氏。「各位殿」、「御中様」も同様で、「各位」、「御中」だけで複数の人への敬称であるため、さらに「様」や「殿」を付ける必要はないそうだ。自分では分かっているつもりでも、うっかりミスをしやすいのがビジネス文書。「文書を作成したら必ず読み直しを。たとえばマエカブとアトカブや相手の名前の表記など、間違いがないかチェックしましょう」(唐沢氏)。
言葉は時代とともに変化するもの。ただし基本マナーは忘れずに
近年、手紙からメールへとビジネス文書の主流が様変わりしているように、「日本語も時代とともに変化しつつあるものだと思います。ですから敬語も、数学の公式のように絶対的なものではないし、相手や状況に応じて臨機応変に使い分けることが必要なケースもあるはず」と唐沢氏は言う。ただ、「日本人として日本語の常識、敬語のマナーなどは習得しておいたほうがいいでしょうね」とのこと。そう、基本を習得してこそ、臨機応変な使い方もできるのである。
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