　渡航準備でバタバタとしており、初回から随分と時間が空いてしまいましたが、現在自主隔離3日目で暇を持て余しているので投稿したいと思います。

本投稿は下記の構成となります。

留学先の修士プログラムについて
何を学びたいか

留学先の修士プログラムについて

　The London School of Economics and Political Science (通称LSE) のMaster of Science in Accounting, Organisations and Institutionsというプログラムに取り組みます。所管しているのは28個あるdepartments/institutesのうちのひとつ、Department of Accountingです。

　2021年現在、このDepartmentではAccounting分野のTaught Master Programmeを2つ提供しています。ひとつはAccounting and Finance、そしてもうひとつがAccounting, Organisations and Institutionsです。前者はトラディショナルな会計・ファイナンスの修士プログラムであり、定員は約150人ほどです。後者はAccounting and Lawという修士プログラムが見直され、11年前に設立されました。会計やファイナンスのテクニックよりも、社会科学的なアプローチを用いて会計や関連する制度、組織論について学ぶことに重点を置いており、定員は40〜50人と少ないです。いずれも1年の期間にLectureとClassからなるコースを合計4.0単位分取得し、Long Essay (≒Dissertation) を提出して修了となります。

何を学びたいか

　先述の通り、このプログラムではAccountingやFinanceのテクニックを学ぶことが主眼ではありません。私は大学で会計を専攻していましたしUSCPAも取得しているので、日本のCPAの方々ほどではありませんが一定程度の会計知識は持ち合わせているつもりです。もし会計やファイナンスのテクニックに磨きをかけたいのであれば、実務経験を積みながら日本のCPAやCFAなどの資格試験の勉強をするのが最適な行動でしょう。

　私が関心を持っているのは、ざっくり言うと組織と社会やステークホルダーの関わりです。"Accounting"というと、一般的に簿記のような活動を想像することが多いですが、その語源であるAccountに「説明する」という意味があるように、会計の本来の役割は記録を残すことだけではなく、その情報を適切に外部に伝達・説明することにあると考えています。

　大航海時代の株式会社の発明にまで遡ると、会計の役目は「貿易から得た収益 - 航海にかかった費用 - 獲得した利益」を把握し適切に出資者に分配することだったはずです。これに加えて徴税を目的とした財務情報の把握も行われていたでしょう。しかし株式を世間に公開する会社が出てきたこと、資本市場が発達した結果、企業活動の及ぼす影響が拡大してきたことにより、もはや株主をはじめとするステークホルダーの関心は、収益性・成長性・安全性などの財務情報にとどまりません。エンロン事件により内部統制報告制度が各国で導入されたように、人類は資本市場の歴史の中で経験した失敗から学び、新たな制度を考案してきました。そして昨今では、組織の活動が環境にどのような影響を及ぼすか、社会にどのようなインパクトをもたらすかという点までも問われるようになっています。

　ESGやサステナビリティが謳われるようになって久しいですが、この分野の議論をリードしてきたのは常に英米欧州といった西側諸国です。日本を含むその他の国々は議論や制度を輸入し、可能な場合は自国流にチューニングしているというのが現状と認識しています。単純に日本国内の議論のレベルが劣後しているという話ではなく、資本が国境を超えて移動する以上、資本市場のインフラとなる諸制度が一定程度収斂していくことは避けられず、デファクトスタンダードを受け入れざるを得ない事情があるのだと推察します。

　私は、資本市場の歴史において先導者的な役割を担ってきたイギリス・ロンドンにおける教育研究機関で、現代社会が抱える課題の克服に資する"Accountability (説明責任) "の在り方について模索したいと考えています。ESGに関する報告については、実情が伴わないWashingといった課題があり、英国FRBや米国SECが検討を深めている最中です。また、主にハーバード大学でインパクト加重会計という新たな価値の物差しの開発も進んでいます。このような分野の将来と課題を理解し、自分なりの考察を深めることで、社会や企業の発展に貢献できればと考えています。

まだ始まってすらいない大学院生活ですが、存分に楽しみたいと思います。

ではまた。

P.S. 添付の写真は自室から見える景色です。

(2)ロンドンライフ開始 〜留学の目的について〜

(1)ブログ開設にあたり

(2)ロンドンライフ開始　〜留学の目的について〜