25日は母の月命日です。

亡くなってから5年が過ぎても毎月、涙を流します。

母は、ある日、突然嘔吐して

かかりつけ医に診察してもらい主治医が直に大きな病院に紹介状を書いてくれて二人で言われた病院に行きました。

数日後、詳しく検査が始まりました。

胃カメラを担当された医師からは

「綺麗な胃ですよ」

と言われ安堵しました。

が、

大腸カメラを担当された医師は

顔色が変わり

「詳しくは外科の医師から説明があります」

と言うなり足早に、その場から去りました。

不安な気持ちが私の中に流れました。

予約した日に病院に行き

これから母を担当する医師から

「ステージ4の大腸癌です」

と母の大腸の画像を見ながら言われて初めて母の体内に癌が、ある事が判明しました。

母は全く動揺もせず、まるで他人事の様に静かに聞いていました。

それから数日後、手術になり

手術時間は3時間くらいと聞いていましたが5時間が過ぎた頃、

不安で、はち切れそうな気持ちで一人で待合室で待っていました。

手術開始5時間30分を過ぎてから母は無事に手術室から戻りました。

術後、抗がん剤治療が始まり

3週間に1度、2泊3日で入院して治療を受けました。

母は日頃から決して泣き言を言う人ではありませんでした。

自分が癌になっても、その母の姿勢は変わりませんでした。

病室でも明るく友達を作り励ます。そんな母に同じ癌患者さんの友達が沢山できました。　

誰が付けたか病院でのあだ名は

「親分」

です。

父はヤクザの親分で

母は癌患者さんの親分に

母を慕って癌に苦しむ患者さんが話に来ては母の前向きな考え方に勇気付けられたと良く私に話してくれました。

でも悲しい事に、一人、又、一人と亡くなっていきました。

面倒見の良い母は遠い遠軽町に住む同じ癌患者さんの元まで

お見舞いに行き励ます。

その方も亡くなりました。

治療が3年目に入ってすぐの頃朝、母は目覚めず24時間以上も眠りが続き救急車を呼び病院に運びました。

もう一度、同じ事が起きて同じく救急車で運ばれ、この時は2週間も眠ったままでした。

きっと母は口には出さなくても体が抗がん剤で悲鳴を上げていたのだと思います。

眠りから覚めて歩くリハビリを始め介護認定が下り私は迷わず自宅介護を選びました。

抗がん剤は点滴から飲み薬に変わりました。

抗がん剤治療で入院する事が無くなり毎日、母と過ごしました。

ある診察の日。

いつもより支度に、戸惑う母に私がイライラして更には寝間着に着ていたピンク色のTシャツを決して脱ごうとしません。

いつも人一倍お洒落な母だけに

何故？

何度Tシャツを脱ぐように言っても脱がない母に私のイライラは度を越してしまい私は少し声を荒らげてしまいました。

無言で私の車の後部座席に母を乗せ病院に着くと、いつもなら私が手を貸して歩く僅かな道も私は母に手を差し出さず。

母は私に申し訳無い顔をしながら一人で歩きました。

病院の玄関に置いてある車椅子に母を乗せて診察室に向かいました。

いつもなら、お互いに笑いながら向かう診察室でしたが、この日は無言でした。

私は慣れない自宅介護に多分、疲れやストレスが知らぬ間に溜まっていたのだと思います。

診察室に入ると医師からは普段通りの会話でした。

母の癌は既に肺と肝臓に転移していました。

私は母を診察室から先に出して医師にお願いしました。

「数日間で良いから入院させて頂けませんか？」

と。

医師は快く引受てくれました。

再び母を診察室に入れて医師から

「〇〇さん少し入院して様子を見ましょう」

と話してくれました。

母は医師の言う事は絶対だと信じていましたから理由も聞かず

「わかりました」

と答えて病棟看護師さんの迎えを待ち、そのまま入院しました。

それから何日かして私は外来に呼ばれ医師から、お母さんは

今年のお正月を迎えられないと告げられました。

母が入院中は毎日、病院に通い面会時間最後まで母の側にいました。

二人で一階にあるコンビニの珈琲をロビーの窓際で飲みながらお喋りして時を過ごしました。

これが親子の日課になりました。

しかし、医師の話した通り

母はお正月を迎える事が出来ませんでした。

母は苦しむ事さえ私に見せず

最後の顔は笑顔でした。

あの時、最後の入院の時

いつもの様に手を出して母の手を引いて上げたら

私が笑顔で母に接していたら

もう少し私が頑張って

我が家で自宅介護をしていたら

あの時

あの時

と、今、書きながらも母の申し訳無さそうに私を見る顔が浮かび

泣きながらブログを書いています。

一人っ子は親からの愛情を全て一人だけに注がれます。

しかし、

最後は責任の全てを一人で背負わなければなりません。

一人っ子の宿命なのでしょう

母が何故あのピンク色のTシャツを頑なに脱がなかったのか？

答えは見つかりません。

毎月25日になると

あの時を思い出し、

お母さん、ごめんなさいと

悔やんで涙を流す私です。

−話は続きます−

ヤクザの娘に産まれて−今日は母の月命日そして後悔する日−