両親が離婚してから

私は父に呼ばれると、その場所に行く。

着るものは制服と決まっていました。

−母校のホームページから−

厳しい校則には外出時は必ず制服着用と書いてありました。

更に驚く校則は父親以外の異性と出歩いてはいけません。

と言う文言です。

私が入学した女子校には年より少し、嫌、かなりマセて見える同級生が何人かいました。

背丈も高く胸も出ていました。

小学校を卒業したばかりの私には大人の女性に見間違える程のおマセな同級生でした。

しかし、当時は北海道一、厳しい校則の学校ですから何でも無い事でも職員室に呼ばれて先生から指導を受けます。

それは髪の毛の事だったり制服の丈だったり。

指導される位、悪い事をしなくても、他の生徒より少しでも目立つと職員室に呼ばれます。

同級生に、とても可愛くて素敵な子がいました。

もう一人は頭が良くて、この子も私から見ると凄く素敵な子でした。

世間からカラスの学校と言われていた母校の中でも中学生の二人はダントツに垢抜けていました。

中学2年の夏休みが終わり新学期が始まると、その二人の姿は学校から消えていました。

二人以外にも数名の姿が見えなくて私は仲の良いMに聞きました。

「〇〇と〇〇は、どうしたの？」

Mは姉が同じ学校に通っていたので事情通でした。

「強制退学で転校させられたのよ。〇〇は青森の中学に、〇〇は地元の中学に」

と。

ただ他の生徒より華やかで垢抜けて見えるだけが原因とは思いませんが、先ずは中学で振るいにかけられるのです。

そして強制と言う名の付く退学処分を受けます。

素敵で明るくて綺麗だった二人の退学は悲しい出来事でした。

私は生まれ付き髪が赤く、それは父に似たからです。

黒に近い紺色のセーラー服を着ると髪の赤さが更に強調されて見えました。

私は産まれてから、ずっと慣れ親しんだ赤い髪でしたが、校則の厳しい学校では染めているとしか思われず母は何度も学校に呼ばれて

「〇〇さんの髪は染めているのですか？」

の問いに

「生まれ付きの地色です」

と答える母。

呼ばれる度に三越で買った虎屋の羊羹を風呂敷に包み学校に説明をしに来ていた母。

何回も呼ばれ同じ質問をされ、何回も同じ返答をする母。

当時は、オキシフル（消毒液）を綿花に浸し髪をなぞると、その部分が脱色され少しだけ赤くなり、おマセな同級生の間で流行っていました。

コーラで髪を洗うと赤くなると。

それを信じてコーラで髪を洗う同級生もいました。

私は生まれ付きですから、何もしなくても赤くて逆に黒髪の同級生からは羨ましがられました。

学校に呼ばれた事は父には決して話さなかった母。

万が一、父の耳に入ったら大変な事になるのは母が一番良く知っています。

母の胸だけにしまって当事者の私にでさえ学校を卒業するまで、そんな事があったとは聞かせませんでした。

−旧エイトビル−ネット参照

私が初めてブラジャーを買ったのは、おマセな同級生Mが誘ってくれて札幌の中心にあった「エイト」と言う商業施設の下着売り場でした。

制服姿の同級生10名くらいで下着売り場で初めてブラジャーを真剣に見ました。

Mは、とうにブラジャーを付けていましたから知識は豊富です。

花柄やレースの付いた様々なブラジャーの陳列を見て皆で

「可愛いわ」

「素敵だわ」

と年頃の娘達はキラキラした目と少し恥じらいの気持ちが入り混じりながらブラジャーを試着しました。

私が初めて買ったブラジャーは淡いピンク色で小花の刺繍がしてありました。

決して派手では無く他の同級生が選んだブラジャーの中では地味だったと思います。

初めてブラジャーを買った私は嬉しくて大人の女性になった気分になりました。

次に父と会う食事会の時はブラジャーを付けて行こうと何故か、そんな事を考えていました。

−ネット参照−

（お金を入れて好きな曲を選びボタンを押すとそのレコードが奥から現れて曲を聴ける）

エイトには一箇所だけジュークボックスが置かれていて、そこで皆で洋楽を聴いた覚えがあります。

今の様にスマホで曲をダウンロードする便利な時代では無くレコードが主流の時代。

仲良しのMからは他にも沢山の大人の入り口を教えてもらいました。

−当時のススキノ−ネット参照

その一つは

「踊り場」

当時は、そう呼んでいたディスコと呼ばれる以前の踊る場所です。

初めてMに連れられて行ったのは

「マックス」と言う名の踊り場でした。

入り口を入ると、ミラーボールが輝きホールの真ん中に生バンドのステージがあって、その円形のステージは回るのです。

私には眩しく輝く初めて見る世界。

流行りの洋楽を生バンドが演奏して、曲を聞きながら思い思いに踊る。

「マックス」は午後3時が開店でした。夕方の5時に一度、閉店します。その2時間の間の客の殆が中学生でした。

私が驚いたのはMより、もっと大人に見える中学生がいた事でした。

公立中学に通う女の子達は、当時流行りのロングのタイトスカートに髪はパーマでオールバック。口元には赤い口紅。

生バンドで踊る姿に圧倒されました。

私は髪は三つ編み。ギンガムチェックで後ろにリボンが付いたワンピース。

その場にいる誰よりも子供に見る私でした。

口紅を付けた少女達は、ぱっと見は少し怖そうに見えても話すと、やはり中学生です。

笑うと幼さを隠せない愛らしさが出る中学校の少女達。

当時の札幌には中学校同士の喧嘩が日常的にあり特に不良と大人達から言われた多くが通っていたH中学と敵対するS中学は有名でした。

中学生の男子達の喧嘩には警察も動員される事もあり新聞のニ記事に取り上げられる事もありました。

だから私でも学校名は知っていました。

踊り場「マックス」で知り合った女子達は大半がその中学校の生徒でした。

しかし誰しも飲んでいたのはアルコールでは無くコーラでした。

夕方5時になると一斉に店から出て行きます。

見た目はとは違い決まりを守る中学生達でした。

音楽に合わせて踊る楽しさを教えてくれたM。

ボーイフレンドを紹介してくれたM。

初めてブラジャーを勧めてくれたM。

Mの母は教員で父は大型特殊自動車の運転手さんでした。

Mの家には良く泊まりにも行きました。

私はMの家族に可愛がられて良くしてもらいました。

母が妾と言われた時に一番、私をかばってくれ噂を言った相手に謝罪させたM。

中学1年で出会い仲良くなり、私はMと一緒にいると

私の父がヤクザだとか両親が離婚したとか、その現実を忘れられる程、楽しい時間を過ごせました。

でもMとの別れは、すぐに訪れました。

−話は続きます−

ヤクザの娘に産まれて−父にはナイショで少しずつ大人に−