東京ファッションウィークにおけるスケジュールの問題点:後編 | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
https://arlnata.com/index.html


 前回まで2回にわたって東京コレクションのスケジュールの問題点について書いて来ました。いわゆるコレクションウィークと言われている約一週間の期間中に展示会(受注会)を同時に進行すれば、買い付けに来た人達は開催されるファッションショーなどのイベントを確認しながらオーダーも出来る一番理想の状況だと思うのですが、実際はファッションウィークと大きくずらして展示会(受注会)をするブランドが多く、地方や海外から買い付けにくる人は全てのブランドを網羅する事が難しく、ということは新しいブランドが発掘される可能性も低くなっているのではないかと懸念される問題です。


参照1:東京ファッションウィークにおけるスケジュールの問題点:前編
http://ameblo.jp/s-teranishi/entry-11948487247.html

参照2:東京ファッションウィークにおけるスケジュールの問題点:中編
http://ameblo.jp/s-teranishi/entry-11949270647.html


 前編で記事を紹介させていただいた蘆田裕史さんが書かれていた様に、こういった問題は東京(首都圏)に住んでいる人達にとっては何の問題でもありません。何かイベントがあればそこまで少し足を伸ばせばいいわけです。となると東京コレクション自体が首都圏の人を主たる対象にしていると言われても仕方が無い状況にあるのではないでしょうか。地方や海外のバイヤーからすればコレクションウィークと展示会(受注会)の期間があまりにもずれていると展示会を優先せざるをえませんし(ショーを見に来ているのではなく、買い付けに来ているので)、せっかく時間とお金をかけて行うファッションショーをブランド側も100%活かしているとは言いがたいでしょう。しかもファッションショーの熱気さめやらぬ状態で展示会に向かって注文をするのと、しばらく時間が経って冷静になった所で注文するのとではオーダーにも多少なりとも影響はあるに違いありません。ファッションショーは宣伝広告の意味が非常に強いと思いますが、そうであるならば展示会はファッションショーの次の日から行うのが一番効果的と思いますし、もっと言えばファッションショー(など)の直後(もしくは同時に)にすぐ作品に直接触れる事が理想でしょう。それは深夜の通信販売番組などの手法を見ても明らかだと思います。


 しかも、現状の様に多くのブランドの展示会が東京コレクションウィークからずれて開催されると、バイヤーにとってもブランドにとっても新しいビジネスパートナーが見つかる可能性(新しい商談が成立する可能性)を下げているということにも留意しなければなりません。世の中はインターネットなどのお陰でグローバルになったとか色々言われている割には、グローバルな視点に立てていない、いやむしろ日本国内の大部分の人が生活をしている首都圏以外の地方の立場さえ考慮に入ってないこのスケジュールの現状があったりして、東京のファッションウィークの在り方も改善する余地が大いにあるのではないかと思います。


 ネットでも同じ様なスケジュール感についての問題点があるような気がします。例えば 僕がお世話になっているFashionsnap.comにしても先月の東京コレクションの開催前や開催中にはそれを盛り上げようとしている様なページ構成でしたが、11月に入ってもまだ様々なブランドの新作写真を掲載しています。 ファッション業界で働いていて上記の様な裏事情を知っている人でも東京コレクションのまとまりの無さを感じざるを得ないのに、そんなことなど知りもしない一般の人達からすれば、こうも延々と新作の発表があれば、東京コレクションって結局何?という気持ちにならざるをえないのではないでしょうか。東京コレクションウィークの参加者や主催者側からすればみんなで集中して盛り上がった中で終焉迎えるべきこの時期に、だらだらとした空気が一般の人々に対しても盛り上がろうと思う気すら失せさせてしまい、結果として東京コレクションウィークの存在意義やその価値を下げている事にはなっていないかと思わざるを得ません。 外から見ていても海外のメインコレクションと言われている様な都市のファッションウィークに比べて、東京は何か一体感が小さい気がします。まとまることで生じるプラスの要因はたくさんあるのは間違いないのですから、そういった連帯感がますます求められているのではと感じます。


ここで東京コレクションの知名度の低さについてまたまたfashionsnap.comからいつも取り上げさせていただいている南充浩さんの記事を少し前のものですが紹介させていただきます。

一般消費者に認知されない東京コレクション
http://www.fashionsnap.com/the-posts/2014-10-22/tokyo-collection/


 こういった東京コレクションウィークの現状をどう思っているのか、実際に自分自身で洋服を作って販売しているデザイナーの友人に聞いてみたのですが、なぜこんなにファッションショーをメインとしたファッションウィーク(2014年は10月13日~18日)から他の展示会がこんなにも別にずれているのかはっきりとはまだよくわからないとのこと。おそらくファッションウィーク中はみんなファッションショーを見に行くから展示会に来てもらいにくいためわざと外している会社が多いとの事でした。実際彼は営業を代行してくれる会社主催の展示会に10月の28~30日に参加したため、地方からも含め日本のバイヤーさんにはたくさん見てもらったそうですが、海外からの客はほとんど無かったそうです。ただ、この地方のバイヤーさんはおそらくコレクションウィーク中には東京には来てなかったのではないでしょうか。そうなると 、日本のほとんどのブランドはまだまだ海外から訪れる人々をあまり意識していないという事も言えるかもしれません。あと、今までの記述の中では簡単のため敢えて“ファッションショー”“展示会”という分け方をしましたが、これからはファッションショーそのものが形を変えて行く様な風潮が出初めています。つまり今までやってきたようなランウェイショーだけでなくより表現方法が多彩になってゆくでしょう。ファッションショーは結局お店の発注(一般消費者に大しては購入)へと誘導するための宣伝方法の一つであって、必ずしもショーでなければならない理由はありません。そうなれば宣伝と受注会が一緒になるような仕掛けも当然考えられる訳で、そういった多彩な表現手段を誘発させるためにもファッションウィークはコンパクトにまとまるべきだと思います。


 当面としては国内の地方の人にすらやや不便なこのスケジュールを改善するだけで地方からの人の流れが増えると思いますし、大勢の人が一度に集中する事で非日常性が生じ、周りの人の注目を浴びてそこに参加しようと思う機運も高まるでしょう。多くのブランドが一堂に会し、多くの人の目に同時にさらされることで競争意識も高まり、自然と切磋琢磨しあって行くのではないでしょうか。それはバイヤーでも同じ事です。多くの選択肢があることで新しい情報をより早く正確に集める能力やブランドのクオリティを見抜く目も養われるに違いありません。とかく海外の情報ばかりを意識しがちな日本のファッションですが、まずは国内の状況を考慮した上で国内の人と技でもって成長して行く事を考えなければならないし今の時代国内で盛り上がっているイベントには自ずと海外からも次第に客が訪れる様になります。ファッションだろうが何だろうがお客がいて初めて商売が成立します。特定の顧客だけで商売をするのなら別でしょうが、マスを相手に商売をするのであればお客の立場になって考えることは絶対に必要です。ファッションブランドというのは今までその様な多くのお客の声などを軽視して来た風潮は無かったか?東京にいるということだけで無意味な排他的姿勢になっていなかったか?本当の意味で日本のファッションを盛り上げるためには今一度冷静に見つめ直す点はたくさんあると思うのです。




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