服を知る 1:コレクションとファッションショー(余談) | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
https://arlnata.com/index.html


 昨日にSTYLE.COMというコレクション写真を網羅しているサイトで今現在はプチコレクション、厳密には2015 RESORTコレクションを掲載していると書きました。昨日の説明ではコレクションというのは春夏秋冬の二回と言ったのですが、最近では多くのブランドがプレコレクション(PRE COLLECTION)を発表するようになって来たのです。プレとは「前の」という意味で、要は春夏・秋冬のメインコレクションの前に出すつなぎの役割をするコレクションなのです。春夏の前のをリゾートコレクションとかクルーズライン(つまり今発表されているものは2015年春夏コレクションのプレにあたり、お店には11月から1月にかけて出る)、秋冬の前をプレフォールと言ったりします。


なぜ11月~1月に店頭に並ぶ商品がリゾートなのかというと、以前は欧州のお金持ちが寒くなってきたこの時期に南国等に出かけてリゾートを楽しむという意味があったそうですが、一般の人間にはあまり関係のない事ですね。まあこういった理由は建前だと思います。一般的に秋冬の新作が7月くらいから店頭に並び次の春夏の新作は1月くらいから並びます。この新作登場の前にあるイベント、そう、“セール”で皆さんが盛り上がる直前というのは誰もお店でお買い物はしませんよね?セールに並ぶのを待ってセールで安く買おう、そう思って年末もしくは、ちょうど今頃の夏前は買い控えをする時期でもありますし、もう半年間も同じテーマのコレクションを見て来たし、ちょうど飽きが来てる時期でもあります。そこで、消費者の物欲、新しいものへの好奇心を刺激する理由で、メインのコレクションよりも着やすい、より現実的な服をデザインし始めたのが本音の様です。


 こういう動きは昔はありませんでした。ただし、新作を発表した後も、売り場の売れ行きに応じて多少のデザイン変更、記事変更をして追加生産するということはどこの会社でもやっていたと思いますが、今のように“リゾートコレクション”、“プレフォールコレクション”と題打って発表するようになったのは、インターネットの普及とも関係があるらしいのです。つまり、情報が瞬時に誰にでも手に入れる事の出来るようになった今、人が一つのブランドに対しての忠誠心(贔屓ヒイキの心)が薄れてきた事による客の争奪戦という側面もあるでしょう。インターネットが普及していなかった時は、ブランドの情報と言えば雑誌と口コミ、そして自分の足で獲得するしかなかったので、お気に入りのブランドが見つかると他に浮気する機会が今程なかったわけです。が、今では情報があふれ返っている状態で、お気に入りのブランドで一通り買い物したら、また新しい好きなブランドを見つけてそこでお金を落とすということも出来るようになりました。これはブランド側からすると非常にまずい訳で、特にファストファッションが毎日のように商品を追加する様な時代ですから、自分たちの客を出来るだけ取り囲む必要がある、そんな理由でこのプレコレクションが公に姿を表したのだと考えられます。


 ただ、ということは創る側はメインとプレを含めて年計4回のコレクションを考えねばならず、はっきりいって休む暇がないくらい大変なんです。しかもこれに新しい創造性を求めるなんて、正直不可能と言えるでしょう。かの重鎮デザイナー、アズディンアライア(AZZEDINE ALAÏA)、そしてクリエイティブという意味では群を抜くデザイナーキャロルクリスチャンポエル(CAROL CHRISTIAN POELL)も自分の満足いく作品ができたら発表するという独特な、しかし至極真っ当な姿勢を貫いていますが、そのアライアも、問題発言が理由でクリスチャンディオール(CHRISTIAN DIOR)を解雇されたジョンガリアーノ(JOHN GALLIANO)に対して次のように述べています。

「私はファッションの世界、そしてそのシステムが問題であると何度も言っています。このシステムのために彼は年に4回のコレクションをディオールのために作り、4回のメンズコレクションと4回のレディスコレクションを彼自身のブランドのために用意しなければならない。年に一度でも素晴らしいアイデアが思い浮かべばそれは奇跡だというのに!こんな環境の下でどうやってクリエイティブになれるというのでしょう?若いデザイナーにとってこれはとても過酷で、だからこそ酒に頼ったり薬に頼ったりする人も出てくるのです。私はこのようなファッションシステムは間違いだと言っています。このシステムでは過多なコレクション、過剰なプレッシャーのために非常に大きなストレスを抱えてしまう。素晴らしいクリエイティブな仕事をするためには時間がかかるものなのです。」

 僕も一人のデザイナーがクリエイションに集中したとしても3ヶ月に一度の頻度で、納得できるコレクションを作り続けるのは非常にストレスのたまる事だし、こういう形はいつまでも続かなのではないかとも思っています。時代とともに世の中が変化して行くことは世の常ですが、ファッションにとってインターネットの出現は非常に大きな意味を持ち、出現以前と以後では同じ形態を保ってはいられなくなりました。今はその過渡期であり、これからどういった変化が訪れるのか、実は僕は楽しみにしている部分もあります。



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