今日は、人工呼吸器を装着しているAさんのお話です。


 朝の会での出来事です。真面目な性格のAさんは、朝の会の最中に席を立って走り回るBさんのことが気になって仕方がない様子でした。

 最初、Aさんは「席を立っちゃダメだよ」と注意をしていましたが、それでもBさんが席を立とうとすると、ついには力づくで体を押さえ込み、Bさんがビックリして泣いてしまいました。


 この出来事を考えてみたいと思います。


 Aさんのように人工呼吸器などのデバイスが装着されている医療的ケア児は、大人が近くにいなければいけないケースがほとんどです。

 大人が近くにいることで、お友達とのコミュニケーションが上達できないことがあります。


 お友達とのコミュニケーションが上達するためには、「心の理論」の発達が重要です。


 心の理論とは、相手の気持ちを察し、予測することです。また、正しかったり、間違っていたりする信念を理解する能力。つまり「誤信念」を理解することです。

 聞き慣れない言葉ですが、「他者と自分の見解の違いを想像すること」と考えて下さい。

 

 つまり、この場面では、「Bさんは自分とは違う見解を持っている。」とAさんがBさんとの心の違いに気づくことです。


 このように見解の違いに気づくには

①意図の検出 ②視線の検出 ③共同注意

などのプロセスが必要です。



 こうした心の理論を発達させていくためには、実際のお友達との関わりから学ぶしかないのでしょうか?

 そうであるなら、医療的デバイスを装着しているAさんは、自分ではどうしようもない理由で、心の理論の発達に遅れをとってしまいます。


 そこで、他の方法を調べてみました。ごっこ遊びと読み聞かせです。

 ごっこ遊びでは、象徴機能や言語の発達が促せますし、読み聞かせでは、フィクションに触れ、文脈を学習します。

 早速、Aさんには、ごっこ遊びや読み聞かせを多く取り入れてみたいと思います。


以上です。


参考文献

森岡周.「発達を学ぶ人間発達学レクチャー」.協同医書出版.2015.p108-115