前回に引き続き、成長思考について考察します。

今日のレッスンは13時で終了。そして直後に元生徒のAさんがテニスクラブを訪ねてくれました。中学卒業時にスクールを離れて、今は希望の高校でテニス部員として活動しています。

「コーチ、先日の新人戦でやっと県の本戦に上がることができました。ありがとうございました」

「おめでとう。一つ一つ積み重ねたことが成果につながりましたね」
その結果を共に喜び合いました。とても嬉しい再会でした。

そしてそんな彼女が中学1年の時に、初めてスクールの体験に来た頃のことを思い出しました。練習が終わって話しをすると、一番の課題はサービスで、何度トライしてもグリップが上手くいかないことを打ち明けてくれました。確かに今のままでは鋭い回転のかかったサービスは打てない。いずれグリップ(サービスの時の握り方)を変えなければならないのであれば、スクールの門を叩いた今日から変えよう、と互いに決意しました。レッスンは終了していましたが、決意した日に打ち始めないと、ともう一度ナイター照明を点けました。

しかし何年もかけて築いてきた握りを変えることはとても困難で、試合の度に「今日も元の握りに戻してしまいました」と残念な報告がありました。やはり目の前の試合で結果を出すことを最優先に考えれば、今までのグリップに戻ってしまいます。しかしその先に、鋭い回転のかかったセカンドサーブをものにする目標が明確にあれば、後戻りせずにチャレンジできるはず。こんな会話を何度繰り返したでしょうか。

握り方を変えて約3カ月が経過した頃、「今日は最後まで新しい握りで打ち続けることができました」試合には負けましたが、「なんだか自信のようなものがわいてきました」とも伝えてくれました。この一言は僕達にも自信を与えてくれます。それ以来彼女がサービスの握り方で悩むことは無くなりました。

このAさんのエピソードから、今一度固定思考と成長思考について考えてみると、「ほんとうの目標・真の目指すところ」が大切なのだと分かります。また、人は「目の前の結果・近くにある目標」に目を奪われることがあることにも共感します。試合に出場したのであれば、全力で勝利を目指すものです。

このような目標の遠近、大小の間を揺れ動き、試行錯誤を繰り返すことで、「真の目指すところ」がしっかりと立ち現われてくるのでしょう。この様子を支えているのが成長思考という考え方で、諦めずに試行錯誤し続ける土台なのでしょう。

そして成長思考の立場から固定思考を眺めることができれば、その試行錯誤(例えば固定思考にはまってしまう局面など)も大切な過程ととらえていけます。そんな在り方に立てれば、何が固定思考で何が成長思考かという区分けも、流動的で互いを包含している関係と理解できるかもしれませんね。