第9403回「日本文学100年の名作 その8、1921年 象やの粂さん、長谷川如是閑 ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第9403回「日本文学100年の名作 その8、1921年 象やの粂さん、長谷川如是閑 ネタバレ」





 第9403回は、「日本文学100年の名作 その8、1921年 象やの粂さん、長谷川如是閑著 ストーリー、ネタバレ」です。


 『 (長谷川如是閑は、)日本のジャーナリスト、文明批評家、評論家、作家。明治・大正・昭和と三代にわたり、新聞記事・評論・エッセイ・戯曲・小説・紀行と約3000本もの作品を著した。大山郁夫らとともに雑誌『我等』(後に『批判』)を創刊し、大正デモクラシー期の代表的論客の一人。・・・・


 東京下町の江戸っ子らしく、ドイツ流の観念論を「借り物思想」として排し、個々人の「生活事実」を思考の立脚点とした。本来は庶民の生活維持のために作り出された国家の諸制度が、歴史の過程で自己目的化するさまを鋭く批判した。


 英国流のリベラルで国民主義的な言論活動を繰り広げ、職人および職人の世界を深く愛し、「日本および日本人」(日本の文化的伝統と国民性)の探究をライフワークとした。 』(写真と共にウィペディアから引用)


「その8、1921年 象やの粂さん」長谷川如是閑著

 50ページ(60枚)ほどの短編です。


 かつてサーカスで善八(善公)という象を調教し、舞台に上がっていた花形の粂さんも、今では、大道で象の人形を売ってシノギをするという、しがない商売をやっています。その値が貧乏人の子せがれの手の届くものじゃありませんので、在庫ばかりが増えていくという始末です。


 象の善公が死んだのには訳がありました、移動中に谷から転落したのです。粂さんは一命を取り留めたものの、善公は死んでしまいました。それからは、酒浸りの日々でした。売れない象売りの粂さんに代わって、家計を支えいたのが、娘のきいちゃんでした。昼間は工場で働き、夜は手内職です・・・・。


 そんなある日のこと、植木屋の新さんがいい話を持ってきました。田丸伯爵家で象を買ったから、番人を探していると・・・・、粂さんなら適任です。とんとん拍子で話はまとまります。月俸は破格の百円、屋敷内の長屋を提供されます。


 仕事はやり慣れた象の調教ですから、これまで象の扱いに難儀していた人々の前でプロらしい職人技を見せます・・・・。象はゴルコンダと名付けられました。


 ところで、娘のきいちゃんも伯爵家で働くことになりました。ある夜、きいちゃんは粂さんに「貞守公」の元で奉公すると言い出します。聞けば聞くほど実際的に妾奉公だと粂さんには分かりました。酒が入れば入るほどに悪酔いし声がでかくなります。そこにやってきたのが植木屋の新さんでした。


 「けえれ、けえれ」の一点張りで新さんを上げようとしはませんでした。翌朝、新さんはあらためて粂さんの家に挨拶に来ました。「粂さん、酔ってたね。隣の馬丁まで筒抜けだったよ、若様の悪口をあんな大声で言っちゃクビだぜ」、新さんの狙いはあくまで、きいちゃんを貞守公に奉公させることでした。粂さんを懇々と説得します。


 「粂さん、これほど言っても分かんないかい、もう二人はできてるんだよ」、新さんの言葉に粂さんは目を白黒せます・・・・。


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