それは変わった鳥だった。
遠目にも何かおかしいかな?と思い、できるだけ間近まで行き双眼鏡をのぞいたら
ああ、なるほど。一本足だったのだ。
何らかの事故などで片方の足を失った鳥を見たことはあったけど
この鳥は、最初からこの姿で生まれたらしい。
一本ながら発達した長く太い足で飛び跳ねながら移動している。
単独で行動する種類のようだ。まわりに同類はいない。非常にかわった羽の色だ。
光線によって常に見え方が違うらしい。あの構造で飛べるのかどうかさえ疑わしいほどアンバランスなプロポーションで、後でぜひとも図鑑で調べてみなければと思った。
こんな日に限って、カメラを忘れてきたことに舌打ちしながらせめてもと 自前の網膜にその姿を焼き付け、なんの足しにもならないようなへたくそながらのスケッチなどをしてみたり。
昼近くになったので、ぼくは草むらに身を隠したまま持参のポットからコーヒーをそそぎ、ビスケットと共にいただいた。
鳥は、ごっついくちばしでさっきからずっと川の水を飲み続けている。
飲み続けて・・・って、ついぼうっとその様子をながめていたが、それだっておかしなことじゃないか?
鳥はおもむろに空をあおいだ。
ぼくは双眼鏡を構え見据える。
次の瞬間、くちばしから空高くへ鉄砲水を吐いた(!!)
とたんに いきなりスコールばりの雨が降ってきたっ・・・!
1分くらいで雨は止み、まるで何事も無かったかのように。
鳥はまた、ぐんぐん水を飲んでいる。
いやはや。・・・アンビリーバボゥ~ッ・・・!理解不能だ。
再びグラスを構えてレンズをのぞいたら、なにか川面を黒っぽい人影らしきものが走った気がした。
影は大きなとりかごに、その野鳥をつかまえて、あっというまに宙に消えた。
ぼくは濡れ鼠のまま、ひとり川畔に取り残された。
誰に話したって信じてもらえるはずも無い。
カメラさえ持っていれば ムービーだって撮れただろうになんてことだ
本当のことだと証明するには力不足もはなはだしいスケッチが一枚あるだけなんて。
一応、世界の野鳥図鑑で調べてみたのだが
あの一本足の鳥は やはり載っていなかった。
By.Purple