絡み合ったまま根元を切られ、放置されるがままに枯れていった。
それでもその蔓植物は、命尽きてなお一層の強情で、そのフェンスから剥がれ落ちることはなかった。
わたしは恐ろしさをおぼえたものだ。
死んでいるのに離れない、強烈な硬直に。
あのドレス・・・。
私が失ったあの黒いドレスはどこへいったのか。
秋晴れの青い空の下では不似合いなイメージが、わたしの頭の中を占めていた。
いつ、どのように無くしたのか。あれを着ていたのは誰だったか。
この執着が何なのか・・・。透き通る涼風が、そんな思考をさらっていった。
わたしは蔓の除去に集中した。
どれだけ時間が経ったのか、忘れてしまうくらい。
もう先ほどまでの青空は陰りはじめ、
西の空がゆっくりと薔薇色を帯びる。
心地よかったはずの涼風は指先を凍えさせ、
それは少しずつ少しずつ全身へと広がりはじめる。
もうそろそろ夜が落ちてくる。
それはあっけないほど突然で、
明るい光は引き止める暇もないほど唐突に去る。
ああ、夜が来た。
そう思った瞬間ずっと繰り返し繰り返し辿り続けた疑問の答えに行き当たった。
あれはワタシだ。
でもあの瞬間まで、ドレスは純白だった。
誰もが祝福の言葉と笑顔で迎えてくれるはずのワタシの白いドレス。
けれどその朝、何もかもがワタシの腕から奪い取られ
ドレスはゆっくりと灰色に変わっていく。
この頑強な執着はワタシそのもの。
取り戻せるはずもないのに諦められなくて、
しがみついて、ドレスを黒く黒く染めてゆく。
夜の闇のように深い色に。
執着はこうしてまだ死に絶えない。
忘れてなどいない。
―――けれど
もう頃合だ。
どれだけ屍骸のまま絡みつき、
しがみついていたとしても取り戻せるものはなく、
再生もないということにようやく気づけたのだから。
夜の柔らかい闇がじわじわとしみこむ。
この闇色のドレスを纏い、
私は今度こそやさしい死の腕に抱かれることができるだろう。
とんでもなく長いこと待たせ続けてしまったけれど、
けして裏切ることのない唯一無二の存在の元へと。