創薬メモ

創薬化学、有機化学、有機合成について書き進めていきます。


テーマ:

■ 一般名
パロキセチン塩酸塩水和物 / paroxetine hydrochloride hydrate

■ 先発品
パキシル, -CR


■ 構造式

 

 

■分子量
374.83

 

■分配係数 (計算値)
logP = 3.15 (MarvinSketch / Consensus)

 

■ CAS

110429-35-1

 

■ 効能・効果

うつ病・うつ状態、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害

 

■ 作用機序

選択的なセロトニン(5-HT)取り込み阻害作用を示す。

神経間隙内の5-HT濃度を上昇させ、反復経口投与によって、

 5-HT2C 受容体の down-regulation を誘発する。

その結果、抗うつ作用、及び、抗不安作用を示すと考えられている。

 

選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)の一つである。

 

■ PK

10 mg, 成人男性, 単回投与

 

Cmax: 1.93±1.38 ng/ml

Tmax: 4.61±1.04 h

AUC: 算出できず

T1/2: 算出できず

 

20 mg, 成人男性, 単回投与

 

Cmax: 6.48±4.10 ng/ml

Tmax: 5.05±1.22 h

AUC: 119.6±100.1 ng・h/ml

T1/2: 14.35±10.99 h

 

40 mg, 成人男性, 単回投与

 

Cmax: 26.89±11.00 ng/ml

Tmax: 4.58±0.96 h

AUC: 447.2±254.8 ng・h/ml

T1/2: 14.98±11.51 h

 

・血漿タンパク結合率

 

ヒト血漿にパロキセチンの100 ng /mLを添加した時の血漿タンパク結合率

95%

 

ヒト血漿にパロキセチンの400 ng /mLを添加した時の血漿タンパク結合率

93%

 

■ 製造販売

グラクソ・スミスクライン

 

■ 医療用医薬品添付文書情報 / iyakusearch

パキシル錠5mg, パキシル錠10mg, パキシル錠20mg

 

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■ 一般名
グリクラジド / gliclazide

■ 先発品
グリミクロン

■ 構造式

 

 

■分子量
303.77

 

■分配係数 (計算値)
logP = 1.73 (MarvinSketch / Consensus)

 

■ CAS

21187-98-4

 

■ 効能・効果

インスリン非依存型糖尿病(成人型糖尿病)

 

■ 作用機序

膵臓にあるランゲルハンス島のβ細胞を刺激する。

結果、インスリンの分泌を促進し、血糖降下作用を示す。 

 

ラット、モルモット、ウサギ、イヌを用いた経口投与実験で、

効力はトルブタミドの3〜30倍。

最大作用の発現時間は投与後約3時間。

6時間以降では作用はほぼ消失する。

 

■ PK

 

40 mg, 健康成人, 1回投与

 

Tmax: 4 h

Cmax: 2.6 μg/ml

T1/2: 8.6 h

 

40 mg, 糖尿病患者, 1回投与

 

Tmax: 2 h

Cmax: 2.2 ± 0.8 μg/ml

T1/2: 12.3 ± 3.1 h

 

血漿蛋白結合率: 93.7%

 

■ 製造販売

大日本住友製薬

 

■ 医療用医薬品添付文書情報 / iyakusearch

グリミクロンHA錠20mg, グリミクロン錠40mg

 

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立体配置異性体には、エナンチオマージアステレオマーの2つがある。

前者は、重ね合わせることができない鏡像関係にある2つの異性体を指す。

一方で後者は、鏡像関係にない2つの異性体と定義される。

 

エナンチオマーは、S体R体に区別される。

これは、不斉点における置換基の順位則により決定される。

 

⇒ Cahn-Ingold-Prelog priority rule

 

2つのエナンチオマーは、構造式上では非常によく似ている。

また、アキラルな環境においては、同様の物理化学的性質を示すことが多い。

顕著に異なるのは、旋光度だけである。

 

初等的な有機化学の知識のみに基けば、

2つのエナンチオマーは「とにかく、よく似ているもの」である。

しかし、この「似ている」という判断は、

それを評価する基準、違いを判別するセンサーによって異なる。

 

少なくとも、メディシナルケミストリーの立場に立つと、

エナンチオマーに対する認識は大きく様変わりする。

 

メディシナルケミストがいつも注目しているのは、

化合物の示す「薬理活性」や「阻害率」などのパラメータである。

これを "類似性評価のための基準" に加えると、二つのエナンチオマーは、

「全く別の化合物ではないのか?」という印象すら受けるようになる。

 

医薬品分子は、生体内分子を特異的に阻害する。

タンパク質などのターゲットにおける結合サイトは、

固有の三次元的な構造特性を備えていることが多い。

 

特異的な三次元空間に対して、特異的に結合するわけだから、

薬理活性が「立体的な要因」に影響を受けるのは当然だと言える。

 

本エントリーでは、2つのエナンチオマーの間で、

顕著な差が確認されている薬物分子の例について述べる。

 

① エナンチオマー間で全く異なる薬理活性を示す例

 

1. サリドマイド

 

医薬品開発における安全基準や社会制度の変革というのは、

皮肉なことに、大規模な薬害事件の体験を経て、達成されることが多い。

 

そもそも、医薬品分子において、エナンチオマーが注目を浴びたのは、

サイドマイドの薬害事件に由来する社会的な影響が大きい。

この薬害事件によって、立体異性体と生物活性の関連が、

医薬品において重要であることが、明確に認識されることになった。

 

サイドマイドは、非バルビツール酸系の薬物分子である。

当初、睡眠薬や胃腸薬として "ラセミ体の状態" で発売されていた。

その後、催奇形性があることが判明し、世界規模の薬害事件に発展するに至った。

 

サリドマイド事件について (参考)

 

サリドマイドは、不斉炭素が一つある。

したがって、以下の2つのエナンチオマーが考えられる。

R体は催眠作用を示す。一方で、S体は催奇形性という重篤な毒性を示す。

 

 

こういった話を聞くと、誰もが、次のように考えるだろう。

 

「R体を不斉合成していれば、薬害事件は防げたんじゃないの?」

 

残念ながら、これは誤りである。

なぜなら、R体を投与しても、体内で急速にラセミ化が進行するからである。

酸や塩基による「ケトーエノール平衡」が、原因とされるメカニズムである。

 

つまりこの薬害は、単一のエナンチオマーを提供しても、防げなかったと結論づけられる。

 

 

こういった例を一つでも知ると、少なくとも薬物分子においては、

「2つのエナンチオマーは、全くの別化合物である」と理解できると思う。

 

サイドマイドの薬害事件は、エナンチオマーの薬理学的な意味を明確化しただけでなく、

「生体内におけるキラルコンバージョン」というリスクの存在を明らかにした。

 

(参考)

 

サリドマイドの不斉合成

Enantiomer 2001, 6, 275.

 

サイドマイドのラセミ化について

J. Chromatography A 1994666, 235.

Chemical and Pharmaceutical Bulletin 1994, 42, 1157.

 

サリドマイドにおける催寄性のメカニズム

Science 2010, 327, 1345.

サリドマイド催奇性の原因因子の発見から創薬への展開 (2014)

 

2. バルビツール酸誘導体

 

以下は、バルビツール酸誘導体の例である。

これも、エナンチオマー間で異なる薬理活性を示す実例である。

R体は麻酔作用を示す。一方で、S体は痙攣作用を示す。

 

 

3. エストロン

 

(+)-エストロンは女性ホルモンとして働く。

一方、(-)-エストロンはホルモン活性を示さない。

 

 

 

4. Bay K 8644

 

Bay K 8644 は、カルシウムチャネルに作用する薬物分子である。

ツール化合物としてもよく使われている。

 

 

興味深いことに Bay K 8644 は、

S体はアゴニストとして作用し、R体はアンタゴニストとして作用する。

 

普通、アゴニストとアンタゴニストは、構造が大きく異なることが多い。

上記のように、エナンチオマーを作り分けるだけで、

作動薬と拮抗薬が切り替わる例は、けっこう珍しいのではないかと思う。

 

② エナンチオマー間で薬理活性の強度が異なる例

 

1. ベラパミル

 

ベラパミルは、L-型カルシウムチャネルへの阻害作用を持つ抗不整脈薬である。

ラセミ体として発売されているが、主作用を示すのはR体である。

 

 

2. インダクリノン

 

インダクリノンは、一過性の尿酸排泄活性を示す。

R体は利尿作用が強いのに対して、S体は利尿作用が弱い。

 

 

3. オフロキサシン

 

オフロキサシンは、第2世代ニューキノロン系の抗菌薬である。

この医薬品は、ラセミ体として発売されている。

 

 

エナンチオマー同士の活性を比較すると、

S体の活性は、R体の10倍~20倍程度であることが分かる。

またエナンチオマーは、ラセミ体に比べて水溶性が高いことも明らかになった。

単一のエナンチオマーにすることに、多くのメリットが存在することから、

活性本体であるS体は新たに、レボフロキサシンとして発売されている。

 

 

メチル基の向きが上下にちょっと変わっただけで、

劇的な生物活性の変化が生じていることが分かる。

小さな構造的変化が、大きな物性変化につながることもある。

こういうところが、構造活性相関の面白いところである。

 

4. オメプラゾール

 

オフロキサシンと似たような話は、オメプラゾールにも言える。

 

オメプラゾールは、プロトンポンプ阻害薬に属する胃酸抑制薬である。

これも当初、ラセミ体として発売されていた。

その後、体内動態の違いから、S体が人で強い活性を示すことが明らかになった。

結果、新たにS体のエナンチオマーが、エソメプラゾールとして発売されている。

 

 

ラセミ体の医薬品に比べて、

純粋なエナンチオマーに大きな利点が認められた場合、

新たに新薬として再承認される場合がある。

このような開発手法は、ラセミックスイッチと呼ばれる。

 

ラセミ体に比べて、単一エナンチオマーに大きな利点があれば、

特許における「進歩性」の主張にも、説得力が付与されるというわけである。

 

5. Eudismic ratio

 

2つのエナンチオマーに活性差がある場合、

より強い活性を示す方のエナンチオマーをユートマー (Eutomer) 、

弱い活性を示す方のエナンチオマーをディストマー (Distomer) と呼ぶ。

また、両者の活性比をユーディスミックレシオ (Eudismic ratio) と呼ぶ。

 

以下は、Eudismic ratio の例である。

 

 

 

 

 

 

薬物分子によっては、エナンチオマー間で100倍以上の活性差を示す例もある。

もちろん、大して差がない場合も多い。この辺は、アッセイしてみないと分からない。

 

自身の化合物の中に不斉点がある場合は、

エナンチオマーを作り分けて個別に検証する必要がある。

ラセミ体に比べて、大幅な活性向上が望める可能性もあるわけである。

 

③ エナンチオマー間で代謝物が異なる場合

 

代謝酵素が分子内の不斉点を認識し、異なる代謝物を与える場合もある。

 

以下は、ワルファリンの例である。

 

 

R体では、側鎖のカルボニル基が不斉還元される。

一方 S体では、7位のアリール上にヒドロキシ基が導入される。

 

分子内の不斉を認識して、位置選択的な官能基修飾を達成する。

これは、有機合成の観点で見ても、面白いコンセプトだと言える。

少なくとも自然界には、上記のコンセプトに基づく触媒反応がすでに存在している。

 

自然界にあって、人類が実用化していない反応コンセプトとは何か。

メカニズムにおける中心的なアイデアは何なのか。

こういった問いは時に、多くの示唆を与える。

 

エナンチオマーは、構造式的にも、物理化学的にもよく似ているが、

薬理活性の観点では、全くの別化合物である。

薬理活性の強弱が変化するだけでなく、全く異なる薬効を示すこともある。

 

自然界は構造有機化学における「三次元立体構造」を重要視しており、

その構造的差異を様々なシグナル要因、識別の判断として用いている。

 

「化合物の立体構造とその自在制御」

 

言葉で言えば簡単だが、mRNA から タンパク質への翻訳の過程一つとっても、

立体構造や分子間力の持つ奥深さ、内容の豊富さは、計り知れないほどである。

少なくとも生物は、この二つを巧みに用いている。

その精巧さと合理性の水準については、生物学を学べば学ぶほど驚かされる。

 

大村智氏は「自然が答えを持っている」と強調した。

これは誇張でも比喩でもない。

事実であり、真実であるように思われる。

 

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基礎的な官能基変換反応 < カルボキシ基 ⇒ アミド基 > 

 

本エントリーでは、カルボキシ基をアミド基に変換する「縮合剤」について述べる。

 

■ ウロニウム系

 

HATU

 

ウロニウム系の脱水縮合剤は、反応性が高く、かつ、ラセミ化抑制能に優れている。

多くの種類があるが、HATU はその中でも、特に信頼性の高い縮合剤の一つである。

アカデミックや企業の研究現場で、日常的に用いられている試薬だと言える。

 

典型的な反応例は、以下の通りである。

 

 

WO 2011088192 A1

 

反応機構は、以下の通りである。

 

 

HBTU は HATU と同系列の反応剤である。

こちらは、HATU に比べて安価である。

HBTU も HATU 同様、実用性に優れた試薬だと言える。

 

しかしながら、HATU だと綺麗に反応が進行する一方で、

HBTU だと中程度の収率に留まるケースに、個人的にはけっこう遭遇する。

 

ラボレベルにおける「小スケールの実験」では、

試薬コストよりも、実験者のタイムコストの方を重視すべきだと思う。

 

HATU を中心に反応を検討していき、スケールアップの必要性が生じたら、

改めて HBTU の反応性を検証し、コストダウンを志向するのが良いのではないか思う。

 

また近年、新しいウロニウム系脱水縮合剤として、COMU も広く使われるようになった。

 

COMU

 

COMU は HATU と同等以上の反応性を有しており、

基質によっては、色の変化で反応経過を追跡できる。

 

また、以下に示すように、HATU や HBTU においては、

ウロニウム塩とグアニジウム塩の間で平衡状態が存在する。

平衡は、反応性の低いグアニジウム塩の方に偏っている。

 

 

縮合反応において、この平衡が悪影響を及ぼすことは、あんまりないと思われるが、

事実としての「平衡状態の存在」は知っておくべきである。

 

一方で、COMU にはこのような平衡は存在しない。

反応性の高いウロニウム塩としてのみ存在する点に特徴がある。

したがって、HATU などに比べて、反応機構がよりシンプルになる。

これも、一つのメリットであると思う。

 

HATU と同様、COMU も信頼性の高い試薬である。積極的に活用していくべきだと思う。

 

以下は、COMU の反応機構である。

 

 

 

■ カルボジイミド系

 

EDC (WSC)

 

カルボジイミド系縮合剤も、エステル化やアミド化で、汎用的に用いられている。

 

反応基質によっては、ウロニウム系では不良だが、

カルボジイミド系だと綺麗に進行するという場合もある。

HATU などでうまくいかない時は、検討する価値がある縮合剤である。

 

カルボジイミド系縮合剤も多くの種類があるが、最も有名なのは DCC である。

しかし、この試薬が暴露すると、咳やかぶれなどのアレルギー症状が出ることがある。

また、副生成物であるジシクロヘキシル尿素が、精製段階において問題を生じやすい。

 

カルボジイミド系縮合剤の中では、EDC (WSC) が特に有用であると思う。

この縮合剤は、副生成物が水溶性であるため、精製が容易である。

 

以下は、典型的な反応例である。

 

 

WO 2009121872 A2

 

 

 

WO 2004065374 A1

 

カルボジイミド系縮合剤の反応では、

縮合補助剤として DMAP や HOBt を添加する場合が多い。

 

DMAP の添加は、アシルピリジニウム中間体を経由させることで、

脱水縮合の反応を加速させることが主な目的である。

 

一方、HOBt や HOAt は、ラセミ化が懸念される時に、縮合補助剤として添加する。

(自分は経験がないが、Oxyma なんかも、同様に利用可能なのかも)

 

以下は、縮合補助剤として、DMAP を添加した場合の反応機構である。

 

 

EDC の他には、DIC などを使うケースもある。

こちらは、副生成物がジクロロメタンに溶けてくれる縮合剤である。

生成物の溶解性によっては、ジクロロメタンの洗浄による精製が可能である。

基質との相性によって、最適な縮合剤を選択する必要がある。

 

■ イミダゾール系

 

CDI

 

イミダゾール系縮合剤としては、CDI などが有名である。

エステル化、アミド化、ペプチド、チオエステルなどの合成に汎用されている。

 

CDI は、ウロニウム系縮合剤などに比べて安価である。

キロスケールのペプチド合成の実績もあり、

コストが制約条件となる大スケールの合成実験に向いている。

 

もちろん、反応基質によって、優れた相性を発揮することもある。

選択肢の一つとして、知っておくべき縮合剤である。

 

以下は、典型的な反応例である。

 

 

WO 2007127765 A1

 

反応機構は、以下の通りである。

 

 

反応機構を見ても分かる通り、CO2 ガスが出るので、密閉条件にしないようにする。

 

■ ホスホニウム系

 

PyBOP

 

ホスホニウム系縮合剤も、非常によく使われる反応剤である。

HOBt や HOAt を含む PyBOPPyAOP は、ラセミ化抑制能が高い。

反応速度も速いという印象を持っている。

 

個人的には、ウロニウム系縮合剤を中心に合成を進めていて、

何か問題が起きた時に、ホスホニウム系縮合剤を選択肢に入れることが多い。

 

ホスホニウム系の中で、最初に開発された試薬は BOP である。

この試薬は「副生成物である HMPA の毒性が高い」という問題がある。

毒性を低減する目的で開発されたのが、PyBOP や PyAOP である。

 

以下は、典型的な反応例である。

 

 

WO 2009143404 A1

 

反応機構は、以下の通りである。

 

 

■ その他の縮合剤

 

・T3P

 

T3P

 

T3P は、非常に優れた縮合剤である。

反応速度も非常に速く、愛用している研究者も多いのではないかと思う。

 

基本的な縮合剤を試して、結果が不満足だった場合、そのまま T3P を検討する場合が多い。

酢酸エチル溶液、DMF 溶液などの状態で市販されている。

 

典型的な反応例は、以下の通りである。

 

 

US 20150218102 A1

 

反応機構は、以下の通りである。

 

 

・DMT-MM

 

DMT-MM

 

DMT-MM は比較的新しい縮合剤の一つで、トリアジン系に分類される。

この試薬の強みは、溶媒に「低分子アルコール」や「水」を用いることが可能な点である。

アルコール溶媒や水にしか溶けない基質の場合、重宝する縮合剤であると言える。

副生成物は水溶性であるため、洗浄により容易に除去できる。

 

典型的な反応例は、下記の通りである。

 

 

WO 2014086805 A1

 

反応機構は、以下の通りである。

 

 

・向山試薬

 

向山試薬

 

向山試薬は安価であり、基質一般性も高く、精製も容易である。

嵩高いアミンや電子求引基の入ったアニリン等では失敗するケースが多いが、

実用性と低コストを兼ね揃えた試薬であり、大スケール合成などで重宝する。

 

以下は、典型的な反応例である。

 

 

US 20040209857 A1

 

反応機構は、以下の通りである。

 

 

■ 実用的な反応とは

 

牛丼のチェーン店である吉野家には、以下のような理念がある。

 

「うまい、やすい、はやい」

 

実用的な有機反応という概念も、この理念に近いものがある。

 

・実用的な有機反応

 

うまい

 

・高収率

・高選択的(位置選択性&立体選択性)

・優れた原子効率

・優れた基質一般性

・優れた再現性

 

やすい

 

・試薬コストが安価

・反応コストが安価(室温&空気中でOKなど)

・精製コストが安価

 

はやい

 

・反応速度が速い

・反応の準備が容易

・実験操作が容易 (熟練を必要としない)

 

脱水縮合剤の開発は、有機反応における「実用性追究の歴史」だと言える。

 

脱水縮合の原理は、どれもほとんど同じである。

カルボキシ基を活性エステルに変換して活性化し、

アミンによる求核置換反応を経て、アミド結合を形成するというものである。

 

縮合剤における付加価値は、斬新な活性エステルのデザインだけでなく、

実用性追究によって生じた貢献に大きく依存していると思う。

 

現在、利用できる縮合剤の多くは、副生成物は水溶性で除去が容易である。

混ぜればすぐに反応が完結する。おかしな副反応も起こりにくい。

便利な時代になったということである。

 

現代の脱水縮合剤は「実用的な有機反応」を考える上での良い手本である。

有機合成化学者が用いる「信頼できる道具」としての価値を十分に有している。

 

■ 総説

 

Amide bond formation: beyond the myth of coupling reagents

Chem. Soc. Rev. 2009, 38, 606.

 

Peptide Coupling Reagents, More than a Letter Soup

Chem. Rev. 2011, 111, 6557.

 

Nonclassical Routes for Amide Bond Formation

Chem. Rev. 2016, 116, 12029.

 

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First-in-class を基準とし、上市時期を考慮に加えた医薬品の分類がある。

これは、Booth と Zemmel によって提唱された分類方法である。

 

Nature Reviews Drug Discovery 2003, 2, 838.

 

この分類法に基づくと、医薬品は以下の4つのカテゴリーに分類される。

 

1) Novel ≒ First-in-class

 

第1号製品の上市から2年以内に発売された、

同様の作用機序・薬理ターゲットを有する医薬品のこと。

 

2) Fast Followers

 

First-in-class と同様の作用機序が臨床で確認され、

かつ、First-in-class の上市から2~5年以内に上市された医薬品のこと。

 

3) Differentiator

 

先行品により作用機序の知見がすでに確立されており、

かつ、First-in-class の上市から5~15年以内に上市された医薬品のこと。

 

4) Latecomers

 

先行品により作用機序の知見がすでに確立されており、

かつ、First-in-class の上市から15年以上後に上市された医薬品のこと。

 

これらの用語は、新規に上市される医薬品が先行品に対して、

明確な差別化ポイントをすでに有していることが前提である。

発売時期の違いのみに着眼した言葉ではない。

これは、特許の観点からも自明であると言える。

 

特許出願の条件としては、以下のものが考えられる。

 

・発明であること

・産業上利用性

・新規性

・進歩性

・公序良俗を害するおそれがないこと

出願の単一性

 

医薬品の価値を決定づける上で、「新規性」と「進歩性」は、特に重要な要素である。

要するに、新規性や進歩性が合理的に主張できなければ、

そもそも特許が取得できないわけで、上市するのも不可能なわけである。

 

新規性や進歩性の考え方、認定手順については、特許法により定められている。

 

※参考 第 2 章 新規性・進歩性 (特許庁)

 

以下は、一部の抜粋である。

 

 ※新規性

 

 第二十九条 第1項

 

 産業上利用することができる発明をした者は、

 次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。


 一  特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
 二  特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
 三  特許出願前に日本国内又は外国において、

    頒布された刊行物に記載された発明又は

    電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」

 

 1.4 新規性の判断の基本的な考え方

 新規性の有無は、請求項に係る発明が

 第29条第 1 項各号に掲げる発明であるかどうかによって判断する。

 特許請求の範囲に二以上の請求項がある場合は、請求項ごとに判断する。

 

 ※進歩性

 

 第二十九条 第2項

 

 特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が
 前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、
 その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない

 

 2.1 第 29 条第 2 項の規定の趣旨


 第 29 条第 2 項の規定の趣旨は、

 通常の技術者が容易に発明をすることができたものについて特許権を付与することは、

 技術進歩に役立たないばかりでなく、かえってその妨げになるので、

 そのような発明を特許付与の対象から排除しようというものである。

 

 2.4 進歩性判断の基本的な考え方

 

 (1) 進歩性の判断は、本願発明の属する技術分野における出願時の技術水準を

   的確に把握した上で、当業者であればどのようにするかを常に考慮して、

   引用発明に基づいて当業者が請求項に係る発明に

   容易に想到できたことの論理づけができるか否かにより行う。 

 

 (2) 具体的には、請求項に係る発明及び引用発明(一又は複数)を認定した後、

   論理づけに最も適した一の引用発明を選び、請求項に係る発明と引用発明を対比して、

   請求項に係る発明の発明特定事項と引用発明を

   特定するための事項との一致点・相違点を明らかにした上で、

   この引用発明や他の引用発明 (周知・慣用技術も含む)の内容及び技術常識から、

   請求項に係る発明に対して進歩性の存在を否定し得る論理の構築を試みる。

 

   論理づけは、種々の観点、広範な観点から行うことが可能である。

   例えば、請求項に係る発明が、引用発明からの最適材料の選択あるいは

   設計変更や単なる寄せ集めに該当するか どうか検討したり、あるいは、

   引用発明の内容に動機づけとなり得るものがあるかどうかを検討する。

   また、 引用発明と比較した有利な効果が

   明細書等の記載から明確に把握される場合には、

   進歩性の存在を肯 定的に推認するのに役立つ事実として、これを参酌する。 

   その結果、論理づけができた場合は請求項に係る発明の進歩性は否定され、

   論理づけができない場合は進歩性は否定されない。 

 

 (3) なお、請求項に係る発明及び引用発明の認定、

   並びに請求項に係る発明と引用発明との対比の手法は

   「新規性の判断の手法」と共通である(1.5.1~1.5.4 参照)。

 

 (補足) 画期的な新薬について

 

 卓越した新規性や進歩性を有する「画期的な新薬」においては、

 薬価評価の面でも大きな付加価値を生じる。

 これは薬価の計算において、画期性加算が設けられているためである。

 

 画期性加算は、以下のように定義づけられている。

 

 1) 臨床上有用な新規の作用機序を有すること

 

 2) 類似薬に比べて、高い有効性、または、高い安全性を有することが、

   客観的に示されていること

 

 3) 当該新規収載品より、当該新規収載品の対象となる疾病、

   または、負傷の治療方法の改善が客観的に示されていること

 

 上記の3要件をすべて満たす医薬品に対しては、

 類似薬比較方式で算定された価格の最大 70%~120% の範囲で加算が行われる。

 

探索研究や臨床開発は、極めて困難な仕事である。

一方で、医薬品が「定義可能な特定の化学構造」を持つ以上、マネするのは容易である。

医薬品が正当な経済的価値を生み出すには、特許による防壁が不可欠である。

 

こういった事情は、難解な数学的問題が解決されるプロセスと似ていると思う。

難問は最初に誰かが解くまで、基本的には誰にも解けない。素人などには手も足も出ない。

しかし、一人の天才によって、その解法が提示されると、

不特定多数の人が勉強して "理解できる" くらいの「認識対象」となってしまう。

考えてみるとこれは、驚異的な「パラダイム・チェンジの体験」である。

 

似たような事情は、医薬品の研究開発においても、多かれ少なかれ存在している。

医薬品分子の構造が確定される前と後で、社会全体のパラダイムは大きく変化する。

 

「先行的な医薬品の研究開発」は、著しく困難な仕事である。

しかし、化合物の構造というものが存在する以上、

ある種の「解答」「指針」「出発点」が容易に定義できてしまう。

したがって、後から参入して、マネするのは簡単なわけである。

先人による臨床試験により、薬効や毒性のプロファイルはすでに明らかになっている。

後期参入者のリスクやコストは、先行者のそれよりも遥かに低くなるのである。

 

もし、特許制度がなくなれば、後だしジャンケンが横行することになるだろう。

先発品の研究開発に従事した企業は、投資資金の回収すら難しくなる。

新薬の開発という行為自体、経済的な理由で不可能になると思われる。

これは何より、新薬創製に携わる研究者、知識労働者たちに対する冒涜である。

 

社会に実質的なイノベーションをもたらすのは、現場の卓越した知識労働者である。

彼らの経済的リターンを確保する上で、特許制度は必要不可欠なものである。

 

もっとも、医薬品という知的財産が特許によって防衛されている以上、

医薬品開発・医薬品ビジネスは、特許制度に由来する「制約条件」に縛られることになる。

まず、特許を成立させるには、要求されるだけの必要条件を満たす必要がある。

そして、特許期間は有限である。(特許の存続期間は20年)

医薬品の経済的価値は、社会制度や時間による制約を大きく受けることになる。

 

Booth の分類における「時間の概念」は、

着想する機会の多寡、初期情報の有利さ、研究開発期間の長さ、という問題だけではなく、

先行品の持つ経済的価値の変化を考える上でも、重要な要素だと考えられる。

 

■ First-in-class と Best-in-class

 

First-in-class という言葉は、Booth の定義する Novel と、ほとんど同じ意味だと思われる。

 

一方、Best-in-class は、Fast Followers と Differentiator の両方に帰属できる。

First Followers と Differentiator に属する医薬品のうち、

その時々における最良の薬のことを Best-in-class と呼べば良いと思う。

 

医薬品開発は、自然科学的な側面だけでなく、ビジネスの側面も併せ持つ。

後者の要素により、医薬品開発はより複雑化し、高い戦略性が要求されるようになる。

 

現実というのは実に不条理であり、画期性の高い Novel が、

常に経済的な成功を収めるわけではないのである。

2000年の世界売上を見てみると、Novel に対して、

Fast Followers が約2倍、Differentiator は1.5倍の売上になっている。

ブロックバスターの多くが Fast Followers や Differentiator から出ている。

 

医薬品開発は「ビジネスの側面も大きい」というだけの話である。

顧客である患者は「新規よりも最良の薬」を求める傾向にあると言える。

 

経済的な成功に至るまでには、医薬品の持つ独自性だけではなく、

企業によるマーケティング、処方における医師や薬剤師の判断、

患者自身の持つパラダイムや思い込みなど、

実に様々な要因が絡んでくると思われる。

 

重要なのは、顧客である患者と向き合う努力である。

これは、現場の研究者であっても同じことであろう。

 

『マーケティングを最も短い言葉で定義すると、

 「ニーズに応えて利益をあげること」となる。』

 

『マーケティングとは経営そのもので、

 消費者に自社を愛してもらうことが最終的なゴールだ。』

 

『市場のある部分に対して、自社製品が最善の選択肢であると示すことが出来れば、

 そのセグメントでリーダーになれる。』

 

『私は、ブランドとはマーケティングの部分集合だと位置付けています。

 マーケティングは市場、すなわち顧客と向き合うことそのものです。

 ブランドはそのための道具なのです。

 マーケティング活動のあらゆる要素を結び付ける接着剤といえば、

 イメージが湧いてくるでしょうか。』

 

『なぜその人はあなたの企業やその商品を選んだのか、

 その本当の理由を理解するためには、直接会話することが重要です。』

 

『顧客を理解すること。

 そして顧客ごとの異なるニーズを見抜くことが重要だ。』

 

(フィリップ・コトラー)

 

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