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漫画家の永井豪さんによる、自らの創作の裏話を描いた自伝的漫画作品『激マン!』。

今年に入りコンビニ版コミックが毎月発売されるようになり、1~3巻は『デビルマン』の創作秘話をあつかっているため、迷わず買いました。

 

テレビアニメ版『デビルマン』は単純明快なヒーローアニメですが、原作漫画のクライマックスはトラウマ必至の衝撃的な展開。

私が初めて読んだのは小学生の頃でしたが、あまりの恐ろしさに永井豪さんへの憎しみをいだいたほど。

が、刺激的なストーリーなだけに頭から離れず、数年後にデラックス版のあとがきで永井豪さんが作品に込めたテーマが何であるかを知り、トラウマ必至の衝撃的なクライマックスに必然性があったと納得できました。

 

デラックス版が手元にないため、記憶を頼りに書きますと……

 

・主人公の不動明は日本国を象徴しており、明が理性を失うことでデーモン族である“アモン”と合体し強力な悪魔の力を手に入れるのは、日本国が徴兵制度を復活させることを象徴している。

・不動明に「人類は悪魔であるデーモン族の侵略を受ける。それを防ぐには理性を失い悪魔と合体し、強力な力を手に入れて悪魔と戦うしかない」と説得した飛鳥了という登場人物は、青い目とブロンドヘアであることからも分かるとおり、日本を戦争への道へといざなおうとする超大国のひとつを象徴している。

・デーモン族は氷に閉じ込められていたという設定からも分かるとおり、飛鳥了によって象徴される超大国と対立する、寒い地域にあるもうひとつの超大国を象徴している。

・不動明の恋人である牧村美樹は平和を象徴しており、彼女がクライマックスで迎える運命は人類の平和の帰結を象徴している。

 

というもの。

 

『激マン!』では永井豪さんが『デビルマン』を執筆していた当時、「日本が再び戦争への道を歩む危険性があることを、どうやって読者に伝えるべきか」と苦闘する様子がしっかり描かれてます。

 

・ 国家が利用しやすい最強の兵士は、純真な若者である。

     「若くなければ徴兵されずに済む、戦争に関わらずに済む」ということはない。いったん戦争が始まれば、徴兵された兵士にかぎらず誰もが巻き込まれる。美樹をはじめとした牧村家の人たちは、戦争に巻き込まれる一般市民を象徴している。

     執筆当時の70年代はまだ、生々しい戦争の記憶を維持した人が多いが、40年後、50年後、タカ派の国会議員が登場することで戦争への道を再び歩むかもしれない。

 

不動明と、彼の変身した姿であるデビルマンらは、「日本における徴兵制度の復活」をシンボライズしたキャラクターであり、そうすることで戦争の残酷さ、人間の愚かさ、戦争の勝利の虚しさまでをも描ききるための手段であると、『激マン!』では明らかにされてます。

 

そういったテーマをこめて最終回まで描ききりたいという意思に反し、予定より早く打ち切ると掲載誌編集長から宣告され、永井豪さんが悪戦苦闘するくだりはかなりの読み応え。

 

ヒーローアクション作品としての完成度よりも、「日本が再び戦争当事国になることへの警鐘」というテーマを優先させ、

主人公がデビルマンに変身し活躍するアクションシーンを割愛し、

代わりに

人類同士が相互不信に陥り、弱者をターゲットにした愚かな殺戮行為へと邁進することで恐怖から逃れようとする戦慄のクライマックス、

そして戦争によりあらゆる生命体が地球上から消え去る“無”のラストシーンまで、

永井豪さんが漫画を描くことへの愛情をもって、寿命を縮めるかのようなエネルギーを注力する姿を読むことができ、大満足でした。

 

なお、原作『デビルマン』ではクライマックスの舞台となる牧村家の所在地が明らかになっていないと思われるのに対し、

今年1月からNETFLIXで配信スタートされたアニメ『DEVILMAN crybaby』では、牧村家は川崎にあるという設定とのこと。

これはかなり意味深な設定のような気がしてならず、時間を作れたらぜひ観たいと思ってます。

 

川崎つながりの蛇足ですが、東山紀之さんの自伝本『カワサキ・キッド』の文庫版のあとがきでは、「人間は、差別をしているときの顔が一番醜い」と書かれており、まさに『デビルマン』のクライマックスに通じるような気がしてなりません。