ウッドストックの音楽家たち(3) | Apple Music音楽生活

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レンタルCDとiPodを中心とした音楽生活を綴ってきたブログですが、Apple MusicとiPhoneの音楽生活に変わったのを機に、「レンタルCD音楽生活」からブログタイトルも変更しました。

まだ、続きます。

これが最終話になります。

 

前回はグリニッジビレッジのフォーク・サーキットやボストン〜ケンブリッジのジャグバンド・シーンからウッドストックに移ってきたミュージシャンたちについて書きました。

彼らが愛してやまないカントリーやブルースの本場、南部に移り住むことはありませんでしたが、南部からは何人かのミュージシャンがやって来て、ウッドストックに本物の南部音楽というものを伝えてくれました。

 

ウッドストックの南部出身ミュージシャンの代表格と言えばこの人、ボビー・チャールズでしょうか。

ボビー・チャールズはルイジアナ州アブヴィルでケイジャンの家系に生まれたと言いますから正に南部生まれで南部の文化で育った人ですね。

 

 

  Bobby Charles  1938-2010

 

チャールズは地元のローカルバンドに参加の後にチェス・レコードから1955年に歌手デビュー、作曲家としてもビル・ヘイリー&コメッツに"See you Later, Alligator"というヒット曲を提供していますから、ウッドストックにやって来た時にはすでにプロとして15年ほどのキャリアを持つミュージシャンでした。

彼がこの地に居着くことになったのは、とある事件に巻き込まれて逃亡したチャールズが辿り着いた田舎町がウッドストックだったという、まったくの偶然でした。

ウッドストックのコミュニティでアルバート・グロスマンに紹介されたチャールズは音楽的に南部志向のあるザ・バンドのメンバーらとの結びつきを強めます。

 

1972年、チャールズは初のフル・アルバムとなる『Bobby Charles』をベアズヴィル・レコードよりリリース。

このアルバムの中から、まるでザ・バンドに4人目のリード・ヴォーカリストが加入して歌っているかのような"Long Face"をどうぞ

このオリジナルのアナログ・レコードのジャケット・デザインもグッドです。

 

 

ジョン・サイモンとリック・ダンコがプロデュースしてロビー・ロバートソン以外のザ・バンドのメンバーが参加。

ロビーの代わりにギターで参加したのはウッドストックを代表するギタリスト、エイモス・ギャレット、キーボードでドクター・ジョン、サックスに後期ポール・バターフィールド・ブルース・バンドに在籍していたデヴィッド・サンボーンも参加。何とニール・ヤングを支えたベン・キースのペダル・スティールも聴くことができます。

ザ・バンドやニール・ヤングが好きな方にはオススメのアルバムですね。

こちらのApple Music 上にある音源はオリジナル盤の10曲以外に27曲の別バージョンやアウト・テイク、デモ・テイクが収録されています。

 

Bobby Charles Bobby Charles
 
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この人も南部から流れてきたミュージシャンの一人。

ルイジアナ州生まれのメンフィス育ちのジェシ・ウィンチェスター

彼も1972年にベアズヴィル・レコードからアルバム『Jesse Winchester』を出します。

サウンドはこの時代を反映して全般的にスワンプ・ロック色の強い曲が多いですが、彼のような優しい声の持ち主にはこういう穏やかなカントリー・ワルツの方が似合うと思いますね。

この"The Brand New Tennessee Waltz"はジェシ・ウィンチェスターのオリジナルですが、まるで古くから歌い継がれてきた歌のように聴こえます。

こちらは1990年にテレビ出演した時の映像。

この曲は歌い続けていたんですね。

  

 

ジェシ・ウィンチェスターは南部のR&Bシーンで活動後、カナダで知り合ったロビー・ロバートソンのプロデュースでこのアルバムをベアズヴィル・スタジオで録音します。

ザ・バンドからはギターのロビーの他にもドラムス、マンドリンでレヴォン・ヘルムが参加してますね。

 

 

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この顔はニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジやボストン〜ケンブリッジの学生街からやって来た連中とは違う南部男の面構え。

ザ・バンドの中では唯一の南部出身者、レヴォンと同じ雰囲気を感じさせます。

 

 さて、この後にザ・バンドと並んでウッドストックのバンドとしては知名度の高いオーリアンズについても少し書いていたのですが、これだけで「ウッドストックの音楽家(4)」としても中途半端になるので、加筆して独立した記事を書くことにしました。

この記事はこれで一応の終了とします。

一口にウッドストックの音楽と言っても、様々な背景を持つ人たちによって育まれてきたわけで、地理的にもウッドストックはニューヨーク・シティからクルマで2時間の場所。実に様々な音楽が流れ込んできていたようですね。

この地がそんな多様な背景を持つアメリカン・ルーツ・ミュージックの拠点の一つであることに間違いはないです。

まだまだ探せば、宝物のような音楽と出会えそうに思います。

 

今回の記事を書くにあたってウッドストックの情報を集めた中では、片山明さんというコピーライターの方が、約3年間ウッドストックで生活した体験を書かれた『小さな町のライブハウスから』という著書出版時(2006年)の著者インタビューが非常に面白かったです。

この本自体はまだ入手していませんが、ハッピー&アーティ・トラウム、ジョン・ヘラルドらの貴重なインタビューも収録されており、是非読んでみたい本ですね。