さて、前編に続き後編はジェシ・ディビス、最後のアルバムとなった『Keep Me Comin’』
1973年の作品
Keep Me Comin/Jesse Ed Davis
¥2,733
Amazon.co.jp
ファースト・アルバム『Jesse Davis』はアーティストとしての自己をアピールしたソングライティングとボーカルに力を入れた作品。
セカンド・アルバム『Ululu 』はギタリストとしての自己に立ち戻り、ボーカルもラフ&ルーズなギタリスト的なスタイルをとった作品でした。
さて、このサード・アルバムはどんな作品かというと、全10曲中3曲がインストゥルメンタル、歌わずに語っている曲が1曲という、インストに力を入れたアルバムでした。
私はジェシのボーカルは悪くないと思うのですが、天才的ギタリストの彼のこと、ボーカリストとしても天才的でないと納得できなかったのかも知れませんね。
では、どんなインストゥルメンタル曲を演っているのか、早速、聴いてみましょう。
これはブルースのジャムセッション風のインスト・ナンバー
スワンプ・アルバムに収録されているインスト曲の典型ですね。
デラニー&ボニーが参加したクラプトンのファースト・アルバムの1曲目"Slunky"やジョージ・ハリソンの『All Things Must Pass』に収録されていた"Plug Me In"が思い起こされます。
もちろん、ボーカル曲もあります。こちらは珍しいジェシのカントリー・ワルツ
なかなか、カントリー調の曲にジェシのボーカルが合ってますね。もっとカントリー系の曲を演って欲しかったなあ。
アコースティックギター、フィドル、ウッドベースのカントリーな編成。ドブロらしき音も聴こえるが、ジェシによるものか?
次はキャッチーなフレーズの連発がフュージョンっぽいインスト・ナンバー
なんか、ゆる~いフュージョンという感じです。まあ、私はフュージョンのことは、よくは分かりませんが、ギターの間奏に入る瞬間がちょっとラリー・カールトンっぽい(?)
この曲を聴いても判るように、このアルバムの特徴のひとつが、これまで以上に大々的にホーンセクションを導入していることです。
もう1曲のインスト・ナンバー"6:00 Bugalu"でもホーンセクションが活躍していますが、こちらは何とファンクです。ジェシはファンクっぽいカッティングのギターも披露しています。器用ですね。
さて、アルバム最後の曲はタイトル・チューン"Keep Me Comin'"
そう思って聴くせいか、何となく終末感漂う楽曲です。動画に流れる映像も走馬灯のよう。
3作目ともなると、ジェシのボーカルもかなり、こなれてきたように感じます。最後のギターソロも味わい深い。
こうやって、ジェシ・ディビスのアルバムを全て紹介すると、どのアルバムが一番良いのかという話しになると思うのですが、私の結論は「3枚とも揃えることを、お勧めします」です(笑)
それぞれ特徴はありますが、3枚とも流れている空気感は同じなので、続けて通しで聴いても3枚組のひとつのアルバムとして聴ける感じです。
このアルバムを最後に二度とジェシのソロ・アルバムはレコーディングされることはなかったのですが、やはり、売れなかったのでしょうね。3枚ともいいアルバムなのですが…
その後、70年代は精力的にセッション・ワークを行ったジェシですが、80年代に入ると活動が目立たなくなります。確かに80年代の打ちこみ音にジェシのギターをのせても合わないですよね。
晩年には、スー族のインディアン詩人、ジョン・トゥルーデルの詩の朗読のバックで演奏をするという活動を行っていましたが、1988年、麻薬の大量摂取によるショック死で亡くなります。享年43歳
もう少し生きて、90年代に入れば活躍の場があったように思えるので惜しいですね…