龍翁余話(832)「日本の人口減少をどう止める?」

 

日本の総人口の減少に歯止めがかからない。戦後の日本は軍人たちの復員に伴い人口増加が続いたが2004年(平成16年)12月の1億2784万人が我が国総人口のピークで2005年

(平成17年)に戦後初めて前年を下回り(1億2776万人)、以降、毎年減少が続く。そして2009年(平成21年)に減少傾向が一段と顕著になり同年4月の時点で1億2751万人、前年(2008年の1億2769万人)より18万人減。このほど総務省が発表した「日本の総人口」は1億2409万人(2024年1月時点での概算値)。これは前年(2023年)の1億2434万人に比し約25万人減少、2009年からの15年間で何と342万人も減少したことになる。

 

総務省資料の年齢別人口動向を見ると15歳未満の人口は1424万人(前年比32万4,000人

減少)、15歳から(生産年齢層と言われる)64歳までの人口は7397万2000人で前年から

29万1000人減少、65歳以上74歳までの高齢者は3622万8000人で、わずかに2万3000

人の減少、一方、75歳以上の後期高齢者人口は(前年より73万7000人増えて)1997万人。

この数字を見ても“少子高齢化現象”の著しさが分かる。“少子高齢化の進行”に伴う社会・経済の持続可能性に対する懸念が高まる中、労働力不足の解消や高齢者支援の強化など具体的な対策・検討が急務となっている。

 

人口減少に歯止めがかからない日本、手をこまねいていては社会(国家)の維持が困難になる怖れがある。政府や企業は対策(アイデア)を総動員し、結婚・出産を望む「若者」や、子育てを担う「家庭」を社会全体で支える意識を高めなければならない。そんな状況下、読売新聞社は先頃「人口減を抑えるための5つの提言」を発表した。今号は翁の意見(カッコ内)も加えながら読売新聞社の「5つの提言」(要旨)を紹介することにする。

 

【若者の経済的負担を軽減】――国立社会保障人口問題研究所が2023年に行なった「出生動向基本調査」によると、18歳~34歳の未婚者のうち「いずれ結婚するつもり」と答えた男女は、ともに80%を超えていたが実際は(2023年は)48万9281組で、それまで年間50万組だった婚姻数を90年ぶりに下回った。若者が結婚を控える最大の理由は「経済問題」だ。そこで、新婚夫婦の家賃や引っ越し費用などを最大60万円補助する「結婚新生活支援事業」の補助要件を緩和、出産費用の無料化、保険適用なども考えたい。(確かに、家賃や引っ越し費用、出産費用は一時的な支援であるが、若者にとっては魅力的な施策であろう。)子育て世帯が第2子を産もうと思える環境づくりも大切だ。夫婦1組が産む子どもの平均数は(2021年の調査では)過去最低の1.9人。公益法人「ワンモアベイビー応援団」の2023年の調査では、“第2子主産をためらう壁”を感じる既婚者は、78.6%で、過去10年間で最高だったそうだ。鍵を握るのは“男性の育児休業取得率の向上”だ。“育休”の取得を促すだけでなく代替要員の確保や負担が増す同僚への手当支給を行なう企業に対して助成を手厚くするなどの環境整備が欠かせない。(そうは言っても翁の調べによると、業種にもよるが、男性の育休はなかなか取りにくい。少ないデータだが“育休有資格者”のうち10人中8人が「自分は“育休”を申請する勇気もないし職場環境も整っていない」と答えている。それが現実だろう。)

 

【所得増と長期安定・格差是正】――若い世代の経済的不安が結婚や出産(第2子も含め)壁になっている。そこで若者が希望の持てる所得増を図り招来不安を取り除き、非正規労働に従事する人を無くすことが不可欠だ。所得向上には企業の賃上げ気運を高める必要がある。連合によると2024年春の平均賃上げ率(4月16日時点)は5.20%と言う高水準だった。現状では人手不足や物価上昇への対応と言う側面が強く、長期に亘る安定した賃上げが望ましい。(確かにそれは望ましいが、現実問題として1部の優良企業を除き大多数の中小企業は“安定賃上げ”どころか“経営存続”の危機にさらされている。日本経済全体の景気回復の戦略・戦術を、もっと議論すべきだろう。また、都市と地方の賃金格差、男女の賃金格差、正規労働者と非正規労働者の賃金格差も問題だ。それらの“格差解消策”も検討されなければならない。)

 

【多様な働き方、長時間労働を前提とせず】――長時間労働が前提の社会では“男性の育児参加”は進まず、出産した女性の仕事の選択肢も限られる。労働時間を短縮し多様な働き方を選べるよう“働き方改革”を加速させる必要がある。(厚労省の資料による“過労死の現状”は、減少傾向にあるものの年に2000人以上の自殺者が出ている。その原因と推定される中で「仕事疲れ」が30%、「職場の人間関係」が20%強、「仕事の失敗」が20%弱、

「職場環境の変化」が10%となっている。したがって“働き方改革”は業務の効率化を損なわない範囲で進める工夫が必要だろう。)

 

【財源の合意形成と保険・税のベスト・ミックスを】――少子化対策や子育て支援に必要な政策を薦めるには安定した財源確保が不可欠だ。社会保険料の引き上げだけでなく、増税も含め社会全体で広く負担を共有する合意形成が欠かせない。(翁は、増税は反対だが、社会全体で負担し合う基本理念は賛成だ。しかし、それより先に“政府の金の使い方改革”

を実施して貰いたい。その“改革”に翁は強く吼えたい「国会議員数と歳費の削減」を。)

 

【恒久的な対策本部新設を】――昨年4月に発足した「こども家庭庁」の活動状況が見えにくい “少子化対策“は、次代の社会を担う子どもを安心して産み育てる環境を整備すると同時に、若者の所得向上や女性の就労促進など幅広い政策が求められる。(つまり社会・経済・教育・文化、その他、あらゆる分野の施策を進める対策本部の設置が必要であり、それには各界のリーダーや自治体が参加する国民会議の設置が必要だろう)。いずれにせよ読売新聞の「5つの提言」を検討する価値は高い・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。