龍翁余話(783)「家庭ゴミの分別」

 

5月30日から6月5日までは「ゴミ減量・リサイクル推進週間」だとか。そんな週間があったとは知らなかったが、調べてみたら30年前(1993年)に制定されたそうだ。その趣旨は「ゴミを減らそう、可能な限りゴミを再生しよう」と言うことらしい。そうは言っても“再生可能なゴミ”(役に立たせることが出来るゴミ)もあれば、“全く何の役にも立たないゴミ(クズ)”もある。揶揄用語(または侮蔑用語)の中に「バカとハサミは使いよう」(使い方次第では役に立つ、を意味する言葉)や「煮ても焼いても食えねえゴミ(クズ)野郎」(全くの役立たず、を意味する言葉)がある。人間が人間を評価する場合、評する側の人間性・教養性が問われる場合もあるが、“物”の評価は科学的根拠で決まるので“要・不要”の区分けは(ほぼ)正確だ。

 

もう一度“ゴミの概念”を考えてみよう。“ゴミ”は、「一般的には生活に伴って発生する不要な物」「ものの役に立たず、無いほうがよい物」「利用価値のない汚い物」(ちり・あくた・ほこり・濁水など)。そして具体的に“ゴミの種類”を分類すれば「漂流・漂着ゴミ」――文字通り海洋を漂流しているゴミや海岸に漂着したゴミのこと。「食品廃材」――食品加工の過程で発生する不可食部のこと。たとえば畜産・水産業における皮革・内臓・骨格などの動物性廃材、穀物を脱穀した際に残る籾殻・稲の藁(わら)・トウモロコシの芯などの植物性廃材、「生活ゴミ」――日常生活の中で排出する台所ゴミ(生ゴミ)や紙屑、布屑など、「マイクロプラスチックゴミ」(プラゴミ)――レジ袋・コンビニの弁当箱・ペットボトルの蓋など。これらの製品は一度使われると捨てられる“使い捨て製品”が多く、代表的なものはレジ袋。現在、日本国内では年間平均300億枚のレジ袋が消費されているそうだ。ほかにプラスチック製品として(前述のように)ペットボトル・食品パッケージ・コンビニ弁当箱などがあり、これらを合計すると日本では1世帯1日当たり数百グラムのプラスチックゴミが発生しているとか。なお(前記)「使い捨て製品の代表はレジ袋」と書いたが、翁の場合は、コンビニやスーパーなどで買ったレジ袋は(大・中・小それぞれ)可燃ゴミ・不燃ごみ・リサイクルゴミなどに分別したゴミを入れる袋として利用している(この項、後で再度、取り上げる)。そのほか「スペースデブリ」(宇宙ゴミ)と言うのがあるそうだが、門外漢の翁、宇宙ゴミの話は遠すぎて語れない。

 

「廃棄物」の定義を日本の法律では「ゴミ・粗大ゴミ・燃え殻・汚泥・糞尿・廃油・廃アルカリ・廃酸・動物の死体、その他の汚物または不要物であって、固形状または液状の物」とされている。更に、廃棄物の処理・清掃に関する法律(廃棄物処理法)によると、廃棄物は「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に大別されている。「一般廃棄物」とは、家庭から排出する廃棄物(「家庭系一般廃棄物」)と、事業者が排出する(産業廃棄物以外の)廃棄物(「事業系一般廃棄物」)を言う。そして「産業廃棄物」とは、事業活動に伴って生じた廃棄物や輸入時の廃棄物(船舶及び航空機の航行時に生じる廃棄物)などあるが、これらは難しい法律的な解釈を必要とするのでここでは記述を省略し、もっと身近な(生活環境をよくするために)我々が出来るテーマ「家庭系一般廃棄物」の処理、つまり『家庭ゴミの分別』について考えてみようと思う。

 

実は翁、昨年暮れから正月、そして4月の2度の帰省で(東京23区とは異なる)『家庭ゴミの分別』の仕方に戸惑った。調べてみたら『家庭ゴミの分別』の方法は地方(自治体)によって異なり統一のルールはないそうだ。理由は「人口」「焼却設備の有無」「リサイクル設備の有無」などが関係するとのこと。正直、翁、今でも「可燃物」「不燃物」「再生可能物」「再生不可物」の分別は面倒くさいのだが(今の時代)生活者の義務だと思って努めている。しかし翁のゴミ分別はあくまでも自分流。たとえば、台所ゴミ(生ゴミ)・紙屑・木屑・皮類・布類などは「可燃物」、ゴム製品・瀬戸物・ガラス・プラスチック類・金屑・電池類などは「不燃物」、ガラス瓶・スチール缶・アルミ缶・プラスチック製容器の包装・ペットボトルなどは「再生可能物」(なおペットボトルなどはキャップを外し、ラベルを剥ぐ)。その他、「再生可能か不可か分からない物」は、それとして分けておく。他に「新聞・雑誌類」も別に仕分けする。このように(翁は)5分類して『家庭ゴミの分別』を行なっているが、それらの“物を入れる袋”は(前述のように)スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどで買い物をした時に3円~5円で買うレジ袋である。ところが、地方によっては「自治体指定のゴミ袋」でないとゴミを持って行ってくれない市町村があることを知って驚いた。しかもその「自治体指定のゴミ袋」の値段は(1枚単価:大きい袋=以下同様)37円前後、東京23区以外の市町村では(もっと高く)60円~80円、千葉県では7円、8円の市もあるが、13円~24円台が多く、中には100円以上の市もあるとか。東京23区や横浜市のレジ袋代1枚3円、5円に比べ高過ぎると思う。しかし、このことは(前述の)「人口」「焼却施設の有無」「リサイクル施設の有無」「ゴミ処理方法」「自治体の経済問題」などいろいろな事情があってのことだろう。ともあれ、喜ばしいことに実は近年“清潔な日本”が蘇ろうとしている。廃棄物に関する諸法律の順守と国民の意識の高揚のお陰で、資源生産性は約6割向上、最終処分量は約7割も削減しているとのこと(環境省発表)。

 

日本人は昔から“もったいない”を重んじる民族であった。古くなったり、壊れたりした物でも何回も直して使うリサイクル社会であった。ところが1955年(昭和30年)代に入って日本が“神武景気”と呼ばれた高度経済成長期以降、世の中は急速に物が溢れ、裕福になった人々は耐久消費財の頻繁な買い替え、商品の過剰包装、豊富で安価な生活雑貨の入手で挙句には“消費は美徳なり”と言うつまらない流行語まで生まれ、日本人の多くはいつの間にか“物を大切にしないで使い捨て”が習慣化して来た。そこで出て来たのが、“ゴミ問題”、そして制定されたのが「ゴミ減量・リサイクル推進週間」――この機会に、今一度(身近な)『家庭ゴミの分別』を考え直したい・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。