涼しい風を感じたい
夏はいつの間にか終わっていて、秋の静けさを身で感じたい気分になってきました。
そう言ってあてもなく外に出てみた。
うん、確かに今の僕にはこう言う空気が必要でした。
目の前の事しか頭になくて、些細な風景や幸せに気付かずただ通り過ぎていた。
犬の散歩をしている人、鳴く小鳥、揺れる住宅街の木々。いつもの見慣れた景色なはずだが、こうして見ると良いものだ。
「とりあえず外に出よう。」と思って外に出たので、今の自分の服装が変な事に気付く。上は冬に着るコート的なものなのに対し、下は半ズボンにサンダルだ。ファッションセンスなんて微塵もない僕でもこの格好は変だと思う。人目が少し気になるが、まあ、いいか。
街道にきた。辺りは朝のシャッターを開ける音や、出勤中の人々の自転車を漕ぐ音など、一日の始まりの音で溢れている。側から見たら、自分の様な高校生が朝から一人で変な学校で歩いているのだから、「何してんだこいつ」と言う感覚なんだろう。
ああ、やはり綺麗だ。うっすらと自分の影を見る。
田圃の傍の水路。
坂を下って、いつもの何気ない風景に目をやる。そんな、僕の一日が始まる。始まるのか。そうか。始まってしまうんだな。
止まれの標識。
「人生なんて辛い事の連続だけどさ、偶には止まってみて。目の前じゃなくて、横の景色を見てごらん。」そう言っている様に見えた。



