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日経ビジネスオンライン

新型コロナ、若者が次々に重篤化 NY感染症医の無力感

池松 由香 ニューヨーク支局長
2020年4月2日

新型コロナウイルスが世界で猛威を振るう中、欧米で注目が集まるのは、高齢者だけでなく若年層の感染や死亡の報告が増えていることだ。

米ジョンズ・ホプキンス大学の統計によると、4月1日(米東部時間)午後10時現在、世界の新型コロナ感染者は93万人超、死者は4万7000人を超えている。

 

国別の感染者では米国の21万5417人が最多で、その4割をニューヨーク州が占めている。



斎藤孝医師
日本で総合商社に勤務後、米国駐在を経て米国の医科大学に進学。卒業後にニューヨーク市ブロンクス地区の病院で内科研修修了。ニューヨーク・プレスビテリアン・クイーンズ病院で感染症フェローとしてエイズや結核などの感染症患者の治療に従事後、20年からニュージャージー州の大学病院で感染症の指導医を務める。


現在は、ニューヨーク市から川を挟んで隣のニュージャージー州の大学病院で感染症指導医を務めています。

 

2カ月前までは、現在、新型コロナ感染症の患者さんが最も多く入院している病院の一つ、ニューヨーク・プレスビテリアン・クイーンズ病院に勤務していました。


 状況が変わったのは2~3週間くらい前でしょうか。先週は特にきつかったのですが、今週はもっときつくなると思います。何百人という数の患者さんが次々に入ってきている状態です。


 検査も追いついていません。時間を追うごとに数字がどんどん変わるので正確には言えませんが、現時点で200人くらいの患者さんが入院していて、そのうち重篤患者さんが40人くらいではないかと思います。ICU(集中治療室)のベッドがほぼ埋まっています。


 現在はICUをCOVID-19の患者さんだけにして、別の疾患の患者さんには、別の部屋に機材を入れて一時的に移ってもらっています。感染リスクがあるので同じ部屋に入ってもらえないからです。


 COVID-19は空気感染はしないものの空気中に3時間以上存在すると言われているので、空気感染の場合と同じように陰圧をかけた特別な部屋に入ってもらっています。

 

限られた病室でしか対応できないのはこのためです。手術も急を要さない限り、全てキャンセルしています。

ニューヨークの病院でCOVID-19の患者さんが多い所では、看護師も医師もウイルスにエクスポーズ(曝露)しているので人手が足りていません。


 当初は、エクスポーズしたら14日間は自宅待機という決まりになっていましたが、現在は熱や咳(せき)などの症状がなければ働いていいということになっています。

 

14日間待機の時は、人手があまりにも足らず、外科医が内科の患者さんに目配せするような末期的な状況だったと聞いています。

防護具も足りていません。ニューヨークもニュージャージーと同じだと思いますが、「N95」のマスクが全然足りない。

 

本来は患者1人に対して使い捨てをするのですが、私はかれこれ1週間は使っています。

 

表面をアルコール消毒したり、サージカルマスクという日本で皆さんが着けているようなマスクを上から装着して、それを使い捨てにしたりして対応しています。


 テレビの映像で見ると、欧州や中国の医師は体をすっぽり覆う大がかりな防護服を着ていますが、こちらでは初めからそんなものはありませんでした。皆、とても簡易な装備で仕事をしているのです。

看護師は、1日に10回くらいはICUの部屋に入って、1回当たり10分くらいは中にいますから、いつ感染してもおかしくない非常に危険な状況です。ER(緊急治療室)のドクターでも入院している人が何人もいます。かなり重篤化するケースも出ています。


-症状がなければ働く。しかも軽装備では医療従事者は不安ではないですか。


斎藤氏:はっきり言って、怖い。怖くなってきている。


 というのも、今は感染症にかかって入院してくる患者さんが20~40代ばかりだからです。

 

これまでは、65歳以上の高齢者や心臓や肺に疾患を持っている人が中心でしたが、今はそうではなくなっています。





なぜかは分かりません。

何も治療歴のない健康そのものの屈強な男たちがいきなり、

急性呼吸不全(ARDS)になって自発的な呼吸ができなくなり、

重篤化、死に至るというようなケースを毎日のように目の当たりにしています。


 ICUでは1日に何度も「ラピッド・レスポンス(Rapid Response)」と呼ばれるコールが鳴り響いています。

 

ラピッド・レスポンスというのは、患者が心肺停止など容体急変の時に用いられる「コードブルー」の前の段階で、血圧の急低下や意識の混濁など、心肺停止前の変化を看護師たちが察知して緊急信号を発します。そうなったら、担当の医師チームが集まって処置をします。


退院が近いと思われた患者もいきなり重篤化


斎藤氏:このラピッド・レスポンスは毎日ありますが、最近は回数が急増しています。

特に先週末はひどかった。大丈夫そうだな、

退院は近いかな、と思うような患者さんでも、

いきなり重篤化するのがCOVID-19の恐ろしいところだと感じています。

コロナウイルス自体は風邪の原因にもなっているものですが、

それに毒性の高いものが加わって、SARSや中東呼吸器症候群(MERS)、COVID-19の原因となっているのです。

 

ウイルスそのものが体に直接的にダメージを与えるのではなく、

ウイルスによって体の免疫システムがオーバーリアクト(過剰反応)

した状態になり、それで多臓器不全などに陥るのです。

今回のウイルスはまだ分かっていないことが多いのですが、

現場で感じるのは非常にたちが悪いということ。

感染力が高く、重症化すると助けることが難しい。
 

 大学病院が多く、研究データが豊富で感染症の専門家も多いニューヨークですら、こんな状況です。

東京でもし同じ状況になったら、到底、対応できないと考えられます。

日本の方々はこちらで起きていることを「遠い国の出来事」と思われているかもしれません。

でも、(人が密集して暮らしているという状況は)東京もニューヨークと変わりません。

 

日本では感染者数が少ないといっても、

それは検査数が圧倒的に少ないから。

 

症状はないけれども、

ウイルスは持っているという人がすでに数多くいる

と考えた方がいいでしょう。

日本ではクラスターの存在を早めに察知するという手法で封じ込めを狙っているようですが、大規模検査の実施なくしてクラスターの把握などあり得ません。

症状はないけれども感染はしている人たちが多くいる

可能性が高いのに、いまだに電車通勤をしているなんてあり得ないことです。

「自粛」と言う言葉を使うからいけないのかもしれません。

そんなことを言っている場合ではない。

とにかく同じ部屋に多くの人が集まるようなことは避けるべき

ですし、会社で会議をいまだに開いているなんて会社があればもってのほかだと思います。
 

 自分のことだけではなく、人に感染させるリスクも考えなければなりません。

その人に疾患があり、免疫力が下がっていれば、感染に対応するのは難しいでしょう。

他の人をそういった状況に陥れてしまう可能性があるということをもっと自覚して、行動してもらいたいと思います。
 

 

 

 

 

 

生物学者の池田清彦氏がツイートで
「感染者の多い都会に観光に行くのは大袈裟に言えば、自殺行為
感染者の少ない地方に観光に行くのは、間接的な殺人行為です」と危機感を示し、


「暇だからといっても、

観光旅行はコロナ禍が収まってから

にした方がいいよ。命あっての物種だよ」

と呼びかけた。