ハイサイ、RIN(凛)ですニコニコ

 コーヒーの可憐な白い花の花言葉は「一緒に休みましょう」

 

私は沖縄に移住した翌年からコーヒー栽培を始めているので、
もう足掛け18年にはなると思う。

 

今から思うと、驚くほど単純な動機で始めたコーヒー栽培。
当時、沖縄でコーヒーを栽培していた人がすでにいて(恩納村の山城武徳先生など)、
それを何度も見学して、栽培の仕方を聞き、
タネや苗木を買って、ワクワクしながら栽培を始めた。
当初は予備知識もなく、簡単に考えていた。

 

実際に始めてみると、なかなかうまくいかない。
何度も山城先生宅を訪ねたり、いろいろな文献を調べまくった。
しかもコーヒーは台風や寒さには弱い。

 

無知の無鉄砲で始めたことだから、もう失敗の連続。
エジソンは、電球を発明するまで一万回失敗したという。
「一万回も失敗したそうですが、苦労しましたね」
と記者から質問されると、エジソンは、
「失敗ではない。うまくいかない方法を一万通り発見しただけだ」
と言ったといわれている。

 

私の失敗はエジソンの域には程遠いけど、正直かなり多い。
沖縄でのコーヒー栽培での失敗事例数は、他の栽培者とは桁が違うという自信がある。
なので、
「こうやったら、こうなるよ」
というのは、「なぜか」という説明を補足して即座に話せるほどだ。

 

実は、現在に至るまで、私は何度もコーヒーを開花させている。
開花させることがゴールだとすれば、もう15年も前に達成している。

開花1か月後(6月10日)結実は約2㎜、これから緑豆に成長する


コーヒーの花は、約3日で花が落下後結実、約半年後に完熟して
赤、あるいは黄色の実をつけるのだけど、
実の中にあるタネが良いかどうか、というのが最大の問題。

 

私は海外のコーヒー農園には行ったことがないから比較できないけど、
沖縄のコーヒーの収穫直前の実は、実の中が良いタネでも悪いタネだとしても
実の外見ではまったく判らない。

 

実自体の外見は、どれもふっくらして上等にしか見えないのに、
実を潰して加工し始めて、その出来の悪さに愕然としてしまう。

 

タネを水に漬けると約半分は浮いてしまい(浮き豆は廃棄)、
ひどいものはふやけた大豆のように柔らかい。

そういったことを何度も経験してきた。

 

「ちびまる子ちゃん」で顔に斜線が入るような
「今までの苦労って何だったの?」
みたいな心境に陥ったことが何度もあった。

苗木定植4年目でこんなに大きく成長した!


苗木の定植時期が悪かった?
支柱をしなかったせい?
育て方が悪かった?
品種が合わない?
土壌が合わない?
自然農法や有機農法ではダメ?
台風で揺さぶられた影響?
遮光したせい(日照不足)?
混植する樹木などのフィトンチッドの影響?
そもそもタネが悪かった?

小さな問題が解決したと思ったら、また次々に難問が現れる。
解決に数年かかることもザラ。
やればやるほど奥が深まる。

 

それでも、同じ作るなら良いものを作りたい。
当たり前だよね。
その理念だけは絶対に譲れない。

 

1945年8月15日、昭和天皇が国民にラジオで語りかけた(収録したレコードだけど)
玉音放送の中に、
「耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び、以て万世のために太平を開かんと欲す」
というのがあるけど、
この10年の私は、まさにそんな感じ。

 

過疎地で仙人みたいな生活をしているのは
多くのことを犠牲にして今に至っていることが多い。

 

沖縄のコーヒー栽培は、
・ニューワールド1号(ムンド・ノーボ)
・ニューワールド2号(ブルボンアマレロ)
というブラジルの品種が主流で、他にハワイ種などもある。

 

沖縄は明治期以降、ハワイや中南米などに出稼ぎのために
多くの人たちが島を出て行った。


そのほとんどが現地に定住して現在は3世、4世の子孫が後継していて、
中にはコーヒー農園をしている沖縄系移民もいることで、
コーヒーなど熱帯植物のタネなどは沖縄は割合入手しやすい環境にあり、
それでブラジルやハワイの栽培品種が沖縄に定着している。

大量に開花したのは5月16日フルオレンジムーンの満月の日


私もずっとそのブラジル2品種で栽培していたのだけど、
「ブラジル品種は沖縄の気候や土壌環境に合わないんじゃないかな?」
と思うようになり、他の品種を探し求めては栽培テストを繰り返し、
先月5月16日の満月の日に開花した品種は中米品種。

 

今まで私が栽培した品種の中では、沖縄の適性が高く、生育も早い。
何より花が大きくて元気。

 

今までのコーヒーの花の直径は約3㎝なのに対し、中米品種は約4㎝もある。
今までで最高に良いタネが出来そうな予感がして感慨深い。
半年後がとても楽しみ。

これだけ元気一杯のコーヒーの花は初めて見た


沖縄のローカル紙、琉球新報や沖縄タイムスなどに
「コーヒーが開花した」
と自薦すれば
北部担当記者の取材を受けて掲載されるだろうけど、パスした。
新聞やテレビで取り上げられると、見学依頼が必ず来るから。

 

沖縄ではコーヒーの栽培方法が確立していないのに、
3年前に生産者組合が、今年の4月にはコーヒー協会が設立されている。

 

もともとは一緒に行動していた方々が、
仲たがいで別々の団体になったようだけど、
この2つの団体から私には一切連絡はない。

 

コーヒーの栽培生産者の会については、
私自身が試行錯誤でやっているくらいだから「早急すぎる」と思っているので
誘われたとしても私は入会する気はまったくない。

 

今から11年前の2006年に
「フジサンケイ女性起業家支援プロジェクト2006」
があり、私は沖縄地域賞を受賞し、当時琉球新報に掲載されたことで、
当時の私の約300坪のコーヒー農園の見学者が多く、その対応が大変だった。

 

タネや苗木を譲渡してほしいとか、
栽培方法や防風対策などについての具体的な説明が求められたり、
「(手弁当で)自分の農園に来て、指導してほしい」
というのも多かった。

 

要するに、沖縄でのコーヒー栽培はまだまだ一般的ではなくて、
変り者、変人が独自に見よう見まねでやってるってことなんだけど、
「楽して、早く換金作物にしたい」
というのは、
沖縄のコーヒー栽培においては通用しないと思う。

 

失敗しても失敗してもあきらめずに挑戦する
「Never Give Up」
のしつこさが欠如するなら、
難しいコーヒー栽培なんかしない方がいい。

 

今まで小さなハードルが超えられずに撤退していった人は
私が知っているだけでも二ケタは有に超える。

 

失敗者の共通点は、
・ブラジルの広大なコーヒー農園のイメージが強すぎる
・失敗しても「なぜ」を検証せず、すぐに撤退を決断する
・失敗することを想定していない甘すぎる計画
というところかな。

 

ともかく、コーヒーの開花をマスコミで公表すると
見学希望を受け入れることと、ある意味イコールになるので、
マスコミでの紹介をあえて避けた。
同時に当面「見学不可」に決めた。

5月16日の満月大潮の日前後は、コーヒーの花見が満喫できた


沖縄でのコーヒー栽培は、各地の変人が独自の方法で行っている。
台風対策で、ハウスや防風ネットを使う栽培者もいる。
それぞれこだわりがあるのは良いことだと思う。

 

私は自然農法を理想としているのだけど、
沖縄本島北部の国頭(くにがみ)マージは地力が低く栄養分が少ない。

 

国頭マージはパイナップル、かんきつ類、茶の生産には適しているけど、
コーヒー栽培で必要なMg(マグネシウム)やP(リン)、
K(カリウム)などが不足しているので
それを補う意味で畜産堆肥(完熟豚糞)を若干使わざるを得ない。
なので、現状の私は有機栽培になる。

 

また、恩納村の故・山城先生の最高の明言は
「自然には自然で立ち向かう」
というのがあり、私はこれを強く意識しているので、
私は人工的な防風ネットやハウスは使わない主義を貫いている。

 

13世紀ごろ、アラビアの森でコーヒーが見つかった時のイメージ、
というか、
「森林の中でのコーヒーがどう生えているのか」
という私なりのイメージを最優先し、
それに台風対策の防風林を組み合わせて、
結果としてアグロフォレストリー(森林栽培)に到達した。

 

なので、私のコーヒー農園内は、ティーダカンカン(かんかん照り)でも
うっそうとした森のような感じになっている。
コーヒーは木漏れ日が当たる程度に遮光されている。
これには賛否があると思うけど、私はこれで良いと思っている。

 

コーヒーの品種によっては、日照が絶対的に必要な品種と
木漏れ日でも十分生育出来る品種とに分かれ、
そういう比較テストも行った結果、アグロフォレストリーでは
今のところ中米品種が最も合うことが確認できた。

 

ちなみに、私は鶏糞堆肥は絶対に使わない。
養鶏では、病気対策で多くのワクチンを使うけど、
鶏は食べた飼料の6割は生糞で出してしまう。

 

ということは、鶏糞にはワクチンなどが多量に含まれていて
それを地面に撒いて、コーヒーの毛根が地中で栄養分を吸うとなると、
「毛根が毒を吸い込んでいる」
ような感じがするから使いたくない。

 

もちろん、養豚や畜牛でも、その飼料には
ワクチンや余計なものが入っているはずだけど、
養鶏の比ではないので、我慢して使っている。

 

理想はヤギ糞とアヒル糞。
ヤギは草を食べるので、ワクチンを入れる必要性はない。
雑草刈りにヤギを使えれば一石二鳥だよね。
だけど、ヤギは逃亡が多く、農園に逃げ込んだらコーヒーも食べられてしまう。

 

廃材で鶏小屋を作り、アヒル(沖縄の観音アヒル)を飼いたい。
新鮮な卵も食べられるし、糞も使える。
だけど、野獣のRIN(凛)君や野犬など外敵が多いのが問題。

 

でも、いつかヤギやアヒルを飼い、その安全な糞を堆肥にして使ってみたい。
私は「安心」ではなくて「安全」なものを作りたい。
しかも品質の良いものを。

 

今まで長いトンネルから抜け出せなかったけど、
何となく出口が薄ぼんやりと見えてきたようで、
少し安堵している。

野獣RIN(凛)君は日々元気一杯!2歳5ヵ月になりました!