
最近「ソウルフード」という言葉をよく見聞きするようになった。
「ソウル」といっても、韓国の首都でもなければ、
大人可愛い服や雑貨などナチュラル&リラックス系の
ソウルベリー(soulberry)でもないし、
リズム・アンド・ブルース(R&B)系の
ソウル・ミュージック(soul music)でもない。
「ソウルフード」とは、
「その地域特有の料理や、地域で親しまれている郷土料理、特産品」
のことをいうらしい。
となると、沖縄って、料理や食材、調味料など沖縄特有のがけっこう多い。
なので、「沖縄のソウルフード」を新たなテーマに追加した。
沖縄というと、代表的な食べ物といえば「沖縄そば」。
南風原在住時に、沖縄そばの県内トップシェアの食品メーカー、
「サン食品」の土肥健一社長に何度かお会いしたことがあり、
「沖縄そば」については土肥社長からお聞きした歴史の話とか、
また後日書くことにする。
沖縄そば店に行くと、テーブルにはショウガ、七味唐辛子、
店によってはフーチバー(沖縄よもぎ=ニシヨモギ)が置かれているけど、
どこでも例外なく置かれているのが「コーレーグース」、
これはウチナーンチュの必須アイテム。
東南アジアや中南米といった熱帯の国では、
唐辛子やスパイスを多用した料理が多く食べられている。
香辛料の香りや辛みには、食欲増進や消化促進といった効果があるし、
また、辛い料理には発汗作用があり、
辛いものを食べることで一時的に暑くなり、
汗を多く出すことで、汗が体温を奪いつつ蒸発、
結果涼しくなる、という理屈らしい。
沖縄では苦い料理、例えばンジャナ(ニガナ、苦菜)をゴマや島豆腐と和えるとか、
今や本土でも通じるゴーヤチャンプルーとかはあるのに、
不思議と辛い料理は思いつかない。
だけど「コーレーグース」という泡盛漬け島唐辛子の辛い調味料が沖縄にはある。
島唐辛子のことを「コーレーグース」ともいうらしい。
高麗草、もしくは高麗胡椒がなまって「コーレーグース」と呼ばれるようになった、
ともいわれている。
島唐辛子は、キダチトウガラシという唐辛子の品種で、
鷹の爪の約2倍といわれる激辛。
韓国では多くの唐辛子があるけど、沖縄の島唐辛子には辛さではかなわないらしい。
「からだは小さくても、気性や才能が鋭くすぐれていて、侮れない」
ことの例えとして、
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」
ということわざがあるけど、
島唐辛子は、約3cmの小粒唐辛子なのに、とにかく辛い。
トウガラシの原産地は、ブラジルのアマゾン河流域といわれ、
現在では熱帯から温帯地域にかけて広く栽培されている。
日当たりが良ければ、栽培は簡単。病害虫もつかない。
JAの購買やメイクマン(沖縄のホームセンター)などでは
島唐辛子の苗が45円くらいで買える。
大航海時代に、コロンブスがアメリカ大陸を発見したとき
(「発見してない」とかの異論には私は興味がない)
コロンブスは新大陸から、サツマイモ、タバコ、カカオ、ゴムノキ、
ジャガイモとトウモロコシの他にトウガラシも持ち帰っている。
そういった植物が、私たちの生活を、豊かで潤いのあるものに激変させたといえる。
日本の国内統一を終えた豊臣秀吉は、海外の国をも支配下に置こうと考え、
1592年、朝鮮に出兵(文禄の役)した。
トウガラシは、ポルトガルからインド、中国を経由して、当時は朝鮮まで届いていて、
この文禄の役の時に、日本軍が種子を持ち帰っている。
そのため、唐辛子の名前の由来は、
「唐」は「外国」を意味し、辛は単純に「味が辛い」ことを意味し、
「子」は「果実や種子」を意味している。
また、唐辛子は「蕃椒(ばんしょう)」、「高麗胡椒(こうらいこしょう)」、
「南蛮胡椒(なんばんこしょう)」ともいうが、
どれも「海外から渡来した」という意味を持っている。
トウガラシは、辛味型や甘味型および、中間型などの多くの品種がある。
栽培品種の辛味型には、鷹の爪(タカノツメ)、八つ房(ヤツブサ)、
虎の尾(トラノオ)、伏見(ふしみ)、ナガミトウガラシ、
沖縄の島唐辛子(キダチトウガラシ)もここの仲間に入り、
辛味成分はカプサイシンを多く含有している。
甘味型は、ピーマン系の品種で、このピーマンも大果種と中果種があり、
辛味が少なく、少し甘味がある品種はシシトウガラシになる。
ピーマンやシシトウは、たしかに唐辛子と形が似ている。
だけど、唐辛子はナス科植物。
ナスもツルンとして唐辛子っぽいといえば、見かたによってはそう言えるかもね。
沖縄での島唐辛子の栽培は、実から小さなタネを取り、発芽させるのは面倒なので、
JAの購買やメイクマン(沖縄のホームセンター)などで苗を買った方が楽。
本土では唐辛子は一年草だけど、沖縄では多年草で、木のようになる。
苗は春から梅雨前くらいに、日当たりの良い場所に定植、
夏に地面に湿気が残る程度に水やりをすれば、秋には収穫が可能。
白い小さな花が咲き、花が落ちて結実、青~オレンジ~赤色になり、
開花から約60日で収穫期を迎える。
栽培は放任で簡単だから、島唐辛子を使う家庭なら植えるべき。
島唐辛子のことを「コーレーグース」というのに、
島唐辛子を泡盛漬けした調味料も「コーレーグース」というのでややこしい。
調味料の「コーレーグース」は、泡盛と島唐辛子だけで簡単に作れるので、
わざわざスーパーとかで既製品を買う必要はない。
アルコール度数30度の泡盛の3合瓶(540cc)を買い、
その中に、2日ほど天日干しした泡盛を入れるだけ。
ひと月くらい経過すると、島唐辛子の成分が溶け出して、
うっすら赤というのか黄色というのか変色してくる。
時間の経過とともに色が濃くなり辛くなっていく。
量が減れば泡盛をつぎ足し、島唐辛子が白っぽくなれば、
島唐辛子を交換すれば長く使える。
自家製コーレーグースがあれば、鍋物やカレー、チャンプルー、パスタなど
何にでも、いつでも利用できて便利。
調味料としての「コーレーグース」の歴史は比較的新しい。
「海外移民の父」として知られる金武町出身の當山久三(とうやまきゅうぞう)が、
沖縄初の海外移民をハワイに送り出したのが1899年(明治32年)、
これ以降、第2次大戦前の1938(昭和13年)までに、
ハワイだけで約2万人が移住している。
ハワイに移住したウチナーンチュたちが、
ハワイのチリペッパーウォーターを参考に作ったのが起源らしい。
それがその後、沖縄に伝えられ定着した、といわれている。
有機栽培の農業では、除草剤や農薬を使わない。
一般的には安心できる農法といえるけど、
畜産堆肥を入れ過ぎると、硝酸性窒素が多くなり、安心とはいえない。
その話は長くなるので、また別のテーマの時に書くとして、
有機農法だと害虫がわいて、
それを「どう忌避させるか」というのが課題になる。
私が中学生の頃までは、キャベツ栽培では青虫がついて、
モンシロチョウが畑に飛び交うのがごく普通の光景だったけど、
最近は農薬を使う農法が99%以上を占めているので、
そうした光景はほとんど見なくなった。
植物でも人間でも基本的に、健康だと病気にならず、
過保護だったり、ひ弱だったりすると、たちまち病害虫に侵されてしまう。
自家製「コーレーグース」の、もっと濃いバーションを作り、
希釈して農産物や果樹、苗などに噴霧して、
害虫を寄せ付けない忌避剤としての使い方が、
沖縄の有機農法の農家では流行している。
もちろん私も試したことがあり、一時は大量に作ったことがある。
特に、バナナ栽培での憎き害虫・バナナツヤオサゾウムシを排除するために、
使っていた。
けど、効果はほとんど無かったので、その後トーンダウンして
自家製「コーレーグース」は使わなくなった。
これって、痴漢とかストーカー忌避剤として
シュッとスプレーするのは効果的だと思うよ。
私の島唐辛子の使い方は、
①醤油さしに入れる
島唐辛子の実を5,6個入れる。
辛味は感じないし、むしろコクが出て、高級醤油のような感じになる。
②オリーブオイルの瓶に入れる
「コーレーグース」と同様に、パスタやサラダなどに使えて美味しい。
③カレー鍋に入れる
ただし実は1個だけ。
これで十分にまろやかな辛口になる。
時々誤って島唐辛子を食べてしまう時があり、
そういう時は、自分の愚かさに激しく後悔することになる。